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わ~…可愛くて、耳あたりのいい声…

今年も、残り少なくなってきました。

年内に、後何回投稿できるんだろう…


そんなことを、考えてしまいます。

副業も、投稿も、しっかりと頑張っていきたいです。

「さあ、せっかくここまで来たんだ。二人とも、好きなもの頼んでいいんだぞ」


横長の長方形のテーブルを囲むように五人が座ったところ。

兄妹の父である翔羽が、最愛の子供達に優しい笑顔で注文を促す。


翔羽は、涼羽の右隣に座っており、羽月は涼羽の左隣に座っている。

そして、父と妹に挟まれる形で、涼羽が真ん中に座っている。


ちなみに、この親子三人に便乗するように食堂に来た受付嬢の二人は…

それぞれが翔羽と涼羽の正面を陣取るように、向かいに二人並んで座る形となっている。


「ん~と…どれにしようかな…」


会社の食堂であるにも関わらず、食券制でなく…

それでいてカウンターからオーダーを頼む形でもなく…

普通の飲食店のように、ホール担当がお客のいるところまで、オーダーを受けにくる形となっている。


ゆえに、テーブルの方にメニューが置いてあり…

その中から頼みたいものを選んで、ホール担当の従業員に声をかける…

という、まさに普通の飲食店のような形式となっている。


ちなみに、ホール担当の従業員は全員で四人ほどとなっており…

その全員が二十台前半~半ばほどの、若い女性達となっている。


少し幼い感じの美少女タイプから、大人びたお姉さん系の美人タイプまで揃っており…

何気に社内ではそれぞれにファンがついていて、ひそかに人気投票まで行なわれている状態だ。


だが、そんな彼女達の視線、興味は…

この社内で最も能力が高く、さらには整った若々しい容姿で…

しかも、将来性抜群の高宮 翔羽にいってしまってはいるのだが。


この日は本来、社内カレンダーでは休日となっているため…

ここを利用する社員の絶対数が平日と比べると激減してしまうので…

普段なら四人いる厨房担当のシェフも一人…

さらには、ホール担当のウエイトレスも一人、となっている。


実際、もう昼休憩の時間帯に入ってはいるのだが…

今の時点で食堂にいるのは、翔羽、涼羽、羽月の高宮親子の三人と…

それに便乗してきた、一階総合受付の受付嬢の二人だけの状態となっている。


メニューとにらめっこしながら、何を頼もうかを思案中の涼羽の表情…

普段、外食をすることがないだけに、その新鮮な感覚に顔を綻ばせており…

そんな表情も、また可愛らしさに満ち溢れていて…

それを横で見ている父、翔羽に妹、羽月…

さらには、向かいから見ている受付嬢の二人も…

非常にご満悦な様子で、涼羽のことを見つめている。


「…じゃあ、これにしようかな」


そんな風に周囲から見つめられていることにまるで気づく様子もなく…

オーダーが決まったのか、静かに声をあげて、決定の意を表す。


「お?決まったのか?」

「うん、俺はね。…羽月は、決まった?」


オーダーの決まった意を見せる涼羽を見て、声をかけてくる父、翔羽。

その父の声に肯定の意を表しつつ、自分の左隣に座っている妹、羽月に声をかける涼羽。


ただ、羽月はメニューとにらめっこしていた兄の表情に視線が釘付けとなっていたため…


「ん~ん…まだ」


それまで、まるで目も向けていなかったメニューの方に、ようやく目を向け始める。


もともと、羽月は兄である涼羽の作るご飯が一番美味しいと思っているため…

めったにない外食の機会にも、さほど興味が沸いてこないようだ。


「そう…じゃあ、もうちょっと待ってるね?」


それまで、ずっと妹の視線が自分の方に向いていたことなど、知る由もなく…

まさにずっとメニュー見ながら悩んでた、と言わんばかりにメニューに視線を向けている羽月に…

それこそ、いつも通りの優しい母親のような接し方で、羽月のオーダー決定を待つことにする涼羽。


たまの外食の機会なのだから、そんな風に何を頼もうか悩むのも、楽しいんだろう。


そう思い、そんな感じの妹を見て、優しい笑顔が浮かんでくる涼羽。

やはり、妹がこんな風に何かを楽しんでくれるのが、嬉しいようだ。


「さて、俺には、これがあるから…ちょっとあっためてくるとするか」


そんな息子と娘を見て、本当に心を和まされるのを感じながら…

息子、涼羽が作って持ってきてくれた弁当の包みを開き…

中に入っていた弁当箱を手にすると、その足で食堂内に添えつけのレンジに向かって歩いていく。


「お父さんは、何か頼まないの?」


そんな父に、何か頼まないのか、と問いかけてくる涼羽。


「ん?なんでだ?」

「だって、お父さんだけお弁当なのに、俺達がここで何か頼んじゃうなんて…」

「…お前は本当に優しいな~」


父である自分のことを気にかけて、そんな風に声をかけてくれる最愛の息子に、またしてもその端正な顔が緩んできてしまう。


「お父さんは、お前達にこうしてたまの贅沢させてやれることが嬉しいんだからな」

「で、でも…」

「それに、お父さんは、お前がいつも作ってくれる料理が一番の好物なんだから…」

「!お父さん…」

「いつも俺や羽月のために美味しい料理作ってくれてるんだから、たまには涼羽も外で美味しいものを食べてくれたら、それでいいんだよ」

「…ふふ…ありがとう、お父さん」


優しく、可愛らしさ満点の息子の頭を優しく撫でながら…

普段から父である自分と、妹である羽月に、いつも美味しい料理を作ってくれているから、そのお礼だと、優しい笑顔と口調で涼羽に感謝の言葉を向ける翔羽。


そんな父の言葉が嬉しくて、その童顔な美少女顔を綻ばせて…

控えめながら、本当に幸せそうな表情で、父にお礼を言う涼羽。


「…もお~、なんなのこのほのぼの感と、あの子の可愛らしさ…」

「…ほんとに、見てるだけで癒されてくるわ~」


そんな心温まる親子のやりとりを、真正面から見ていた受付嬢の二人は…

まるで自分達がそのやりとりをしていたかのような、言いようのない幸福感に包まれてくるのを感じてしまう。


「じゃあ、お父さんはこの弁当をあっためてくるから、お前達は好きなものを注文してなさい」

「うん、分かった」


最愛の息子に一言だけ添えて、そそくさと息子の作ってくれた弁当を持って、電子レンジの方へと向かう父、翔羽。


その父ににっこりと笑顔を向けながら、了承の意を表す涼羽。


「お兄ちゃん!わたしも決まった!」


そのタイミングで、羽月もオーダーが決まったことを元気一杯にアピールしてくる。

そんな妹に、母性と慈愛に満ち溢れた優しい笑顔を向ける涼羽。


「ふふ…決まった?」

「うん!」

「じゃあ、注文しよっか」

「うん!」


自分に対して、そんな風に優しい笑顔と声を向けてくれる兄、涼羽のことが本当に大好きで大好きでたまらなくて…

もう、これでもかというくらいに幸せそうな笑顔が浮かんでいる羽月。


そして、もう抑えられなかったのか…

これまで、散々そうしてきたにもかかわらず…

隣に座っている兄にべったりと抱きついて、うんと甘えてくる。


「もう…羽月は本当に甘えん坊さんなんだから…」


少し咎めるような言葉尻ではあるものの…

口調そのものは本当に優しく、どこか嬉しそうで…


やはり、可愛い妹がこんな風に甘えてくれることに、いいようのない喜びと幸せを感じてしまう涼羽なのであった。


「…そうだ…」

「?」


そこで、何かを思い出したかのように声をあげる涼羽。

そんな兄に、表情に疑問符が浮かんでくる羽月。


「お姉さん達は、もう注文は決まりました?」


そして、自分の向かいに座っている受付嬢二人に、花が咲き綻ぶかのような笑顔を向けて…

オーダーが決まったのかを確認してくる涼羽。


「!?え?えっと…」


いきなりの問いかけに、思わず面食らったかのような反応を返してしまう受付嬢の一人。

特に、どう見ても男子には見えない涼羽の笑顔に、思わず心奪われてしまったのが大きかったようだ。


「あ、あ~~~!も、もう決まるから!」

「そ、そうそう!だから、もうちょっと待ってもらっていいかしら?」


相方があわてて、返答を返すことに成功し…

それに便乗する形で、涼羽の問いかけに声を返すことができた受付嬢達。


「分かりました。もう少しお待ちしてますね」


そんなぎこちない反応に特に意を介すこともなく、その笑顔を崩さずに優しい口調で返事を返す涼羽。


優しく、可愛らしいその笑顔に、彼女達はまたしても心奪われる感じになってしまう。


「(ああ~~~もお!あんな可愛い子に、『お姉さん』なんて呼ばれちゃった!)」

「(あんな可愛い声で、『お姉さん』なんて!ほんとに可愛い!可愛すぎるわ!)」


正直、抱きしめたくてたまらなくなってきているのを必死にこらえながら…

どうにか、オーダーを決めることができた二人。


「ごめんね、待たせちゃって」

「私達も、もう決まったからね」


内心、心かき乱されて非常に落ち着かない状態ではあるものの…

それを見せることなく、落ち着いた様子でオーダー決定の意を涼羽に告げる二人。


「分かりました、じゃあ、ウエイトレスさんをお呼びしますね」


これで、ここで注文する人間が全員、オーダーが決まったことになり…

それを確認できたことで、一人で空いているテーブルの拭き掃除やら、調味料の補充やらに励んでいるウエイトレスに声をかけることにする。


「すみませ~~ん」


よく通る、耳あたりのいいソプラノな声が、食堂内に響き渡る。


「は~~~~い」


その声に応えるように、ハイトーンなアニメ声といえる…

可愛らしさに満ち溢れた声が、返ってくる。


「少々お待ちくださいね~」


今まさに取り掛かっていた、拭き掃除と調味料の補充に区切りをつけると…

そそくさと、涼羽達のいるテーブルの方へと足を進めていく。


来たのは、活発な印象を受ける、明るい感じの茶色のショートヘアの女性。


ただ、着ている制服が、オフィス内にはミスマッチな感のある…

給仕用デザインの純白なブラウスに、ふんわりとした明るい赤基調のフレアスカート…

さらには、胸から覆うタイプのフリル付のエプロンに、クリーム色のニーソックスという…

どこか、コスプレ的な印象を受ける、可愛らしさに重点を置いているものである。


加えて、そのウエイトレスも造詣そのものは整っているが…

『綺麗』よりは『可愛い』に偏っている造りとなっており…

そのハイトーンなアニメ声に非常にマッチした容姿となっている。


少し垂れ目気味なのが、ふんわりとした印象をかもし出しており…

女性の象徴とも言える胸は、大きくもなく小さくもない、無難なサイズだが…

それでいて、ほっそりとしたスレンダーなボディラインのおかげで割りと自己主張しているように見えている。


何よりも、絶妙なバランスの肉付きをしている、非常に綺麗なラインの脚。

それが、彼女のチャームポイントの一つであると、断言できるであろう。


高校生くらいの女子のほぼ平均身長である涼羽よりも若干身長が低く…

それがまた、可愛らしい感じを強くしている。


年齢は、その容姿にアンマッチな二十歳。

それでも、年齢よりは若く見られる方だと言える。


そんな彼女は、大原 菫(おおはら すみれ)。

現在駆け出しの声優で、副業としてここのウエイトレスに励んでいる…

夢に向かってまっしぐらな、猪突猛進な女性である。


「は~い、ご注文の方、お伺いさせていただきますね~」


その容姿ゆえに、現役の女子高生がアルバイトしているような…

そんなきゃぴきゃぴとした感じの菫の接客。


ちなみに、ここのウエイトレスでは、彼女が僅差ながら一番人気であり…

ひそかに、ファンクラブのようなものが社内で非公式ながら結成されている。


ただ、本人にその意識はないのだが…

どこか、異性に媚びた感じがあり、そのため、同性からはいまいち印象が悪い。


「(まったく…男って、なんでこんなのがいいのかしら?)」

「(こんなこびっこびのきゃぴきゃぴした感じ…何がいいのよ、ほんとに)」


現に、受付嬢の二人も顔には出さないものの…

この菫のことはよく思ってはおらず…

どちらかといえば、対照的なタイプの美人であることもあり…

余計に、嫌悪感の方が先に出てしまうようである。


「(可愛い…それに、スリムで無駄がない感じ…わたしも、あんな感じになりたいなあ…)」


羽月の方は、その可愛らしさと、スレンダーなスタイルがよく見えているようで…

自分も、あんな感じになりたいと、ひそかに思ってしまっている。


「じゃあ…お姉さん達から、どうぞ」


そんな中、涼羽だけが何事もないかのように、自然と声を発する。

その耳あたりのいい、優しい声に…


「え?あ、ありがとう」

「じゃあ、お言葉に甘えて、先に注文するわね」


それまでささくれだっていた心が、一瞬で和まされ…

作り物ではない、心からの笑顔が、二人の整った美人顔に浮かんできている。


「(わ~……この娘の声、すっごく耳あたりがよくて、綺麗…それに、可愛い…)」


そんな涼羽の声を何気なく聞いていた菫は…

その声の可愛らしさ、耳あたりのよさに、内心非常に興味を持っていた。


自身が駆け出しの声優である、ということもあり…

どこかこびこびとした感のある自分の声と違って…

非常に自然体で、それでいて可愛らしく、耳あたりがいい涼羽の声は…

まさに、今の自分が目指している理想の声となってしまっている。


「じゃあ、私は――――」

「え~と、私はね――――」


受付嬢の二人が、オーダーを言葉にし始め…

それを聞いて、オーダー発注用の専用端末に入力をしていく菫。


「はい、かしこまりました」


すぐ目の前にいる、理想の声の持ち主に非常に興味をひかれながらも二人分のオーダーをしっかりと受け、残りの二人である涼羽と羽月の方に、視線を向ける。


「ほら…羽月から注文していいよ」

「うん!分かった!」


そして、視線を向けた先に座っている二人…

そのうちの一人である、中学生くらいの非常に可愛らしい女の子の声…

それを聞いて、またしても菫の興味がより強くなっていく。


「(やっぱり、本当にいい声…あたしも、こんな声が出せたらなあ…)」


そのアニメ声は、声優として強力な武器ではあるものの…

最近では、それが足枷となってしまっており…

どうしても、演じるキャラクターのイメージが固定化してしまっている感があるのだ。


本当は、もっと女の子らしい、大和撫子と言えるような…

清楚で大人しい感じの役をやってみたいのだが…

この声に加え、演技の幅も狭いこともあり…

どうしても、今やらせてもらえてる以外のイメージの役を、やらせてもらえないという実情なのだ。


ゆえに、まさに自分のやりたい役のイメージにぴったりと言える涼羽の声は…

彼女にとっては、理想の声そのものとなってしまうのだ。


「(よ~し!せっかくこんな理想の声の持ち主に出会えたんだから…この娘にいろいろと聞いてみよう!)」


この機会を逃す手はない。

まさに、そんな決意表明を自分の中で行なう菫。


そっくりな顔立ちの姉妹が仲良く話している脇で…

その姉と思われる美少女の方をロックオンし…

一体どうしたら、そんな声が出せるのかを、絶対に聞き出してみよう…


そう思いながら、菫は、残り二人のオーダーを待ち構えるのだった。

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