超魔法
「……ん」
あれ?ここは…
あれからどれくらい経ったのだろうか。いや、それ以前にここは何処だろうか?刹那は何故か何もない、果てしなく真っ白な世界にいた。
「何で俺こんなとこで寝てるんだ?」
立ち上がると何だか足場は粘土のようにぶよぶよとしている。よく見回すと、どうやら自分は真っ白な箱状の物の中にいるようだった。隔離とでも言っておこうか。そして誘うかのように前方には謎の扉があったりする。
「あれは…出ていいんだよな?」
刹那は不快な感触の上を進み扉の前に立つと、ノブを右に回す。ガチャンと扉の開くとともに光が迸り、眩しさに刹那は眼を細める。
「なっ!」
光を押し退け扉を通った先は学園の門の前だった。今日登校したときもここを通ったし、名前も《虹魔導師学園》と記されてあるのだ。見間違えようがない。
「なんで…」
俺が数歩進むと、扉は瞬く間に溶け込むかのごとく消えてしまった。俺は戻る手段を失い立ち往生する。やはりあの扉は開けてはならなかったのではないか?第一、この日の傾きからしてさっきの時刻と全く違うではないか。真昼のようにとても明るい。
「いてっ!」
刹那が門を通ろうとすると、見えない壁に阻まれた。知るよしもない刹那は正面からぶつかり鼻の頭をさする。
「誰だよこんなところに無駄に強力な防御呪文張ってるヤツはっ!」
見えない障壁を足蹴にすると、ここで棒立ちになっても仕方がないのでとりあえず朝来た道を戻ってみる事にした。と言っても朝のように塀を歩くような事はしない。あの時は時間が惜しくて仕方なくやっただけだ。まぁ、そのお陰もあり無事予定の二時限目までに着く事ができたわけなのだが。刹那はそこで交差点に差し掛かり、それを左に曲がる。塀を越えないとなると、ここは表通りの街中を通る必要がある。
「嫌なんだよなぁ、あのむさ苦しい感じ」
刹那は溜め息をつきながらも右へ左へと街中を目指していく。
「……あれ?」
刹那は街中の商店街に着いたところで硬直した。今日は珍しく雲もなく日差しが心地よい昼間の商店街。幾人もの人が行き交い熱気で溢れ返っている筈なのだが。その場には一人として誰もいなかった。刹那は何故か不安が込み上げてくる。
「そ、そうだっ!今日の日付けは…」
ふと思い誰もいない商店街で日付けが分かりそうなものを隅々まで探す。なかなか広いこの商店街は人が絶えないだけの事はあり、向かいの店との幅が二十メートルはあるかもしれない。俺はそれを時間をかけて走り回る。
魚屋;新鮮な魚を常時表通りに並べ、いかにも先程までは商いをしていた形跡がある。ただ一つ言うなれば、怒りやすい性格のせいで人が寄り付かない。殺切は臆する事なくお構いなしに買っていくらしいのだが。時計すら無いのでここは日付けなる物とは無縁。
肉屋;ここは探る以前に御休みのようだ。
シャッターが閉じている。
張り紙に【二月十二日~十五日】と書いてある。ということは、今日が十二日~十五日の日付けである事が分かる。
八百屋;ここは俺もよく知っている。滅多に家を出ない俺もよく来る場所。ここのオバチャンの野菜は全てが自家栽培。無農薬で作られたオバチャンの野菜は、農薬付と比べたら味も食感も全く違う。俺は、それで草食系に目覚め、事ある毎にここへ買いに来ている。それにオバチャンは歳のわりには若く見える。野菜とは若さの秘訣なのだろうか?ここには時計はあるが、日付けなる物はない。次に行こう。
雑貨屋;ここは初めてだ。サボりがちな自分は筆記用具の必要性が分からない。毎度廊下行きの俺にとってはとるに足らない代物だ。ただ、俺が釘付けになったのは魔法道具だ。半透明の刀身が緩やかに湾曲している様はどこぞの秘宝を思わせる。
「いっ!?」
値段を見ると【三万二千円】
これはとてもではないが買えそうにない。
魔具【魔法道具】は魔法使いなら誰でも憧れるものだ。憧れる物なのだが、既に自分にはそれがある。魔方陣の描かれた《漆黒の手袋》…
なんでも、俺の家に伝わる宝具らしい。
今はどうでもいいが。
各店を調べ終わって残す所あと一つとなった。この商店街で唯一のショッピングセンターだ。
刹那がスライドドアを通って中に入ると、やはりそこにも人の気配はない。照明もついていないし、ここには商品すら何も置かれていない。棚は山ほどあるのにだ。
レジを通り過ぎて奥の惣菜売り場に行くがそこにも何もない。
肉売り場も冷凍食品売り場も同様。
「手掛かりなしか」
刹那が身を翻し店を出ようと来た道を戻ってレジを通り過ぎようとすると、後方で物の落ちる音がした。
「誰だ!?」
刹那がそう叫ぶが反応を示す者はどこにも居ない。店内にはまた奇怪な静けさがたちこめる。刹那は店を出るのを止め音のした辺りに行くと、一つの箱が落ちていた。
「これって…」
それはピンク色のリボンであしらった正方形の箱だった。薄々気付いてはいるが、包装紙を剥がして箱を開ける。
「だよな…」
刹那は分かっていながらもついつい口に出してしまう。予想通り中身は殺切がくれたチョコそのものだった。その歪な形はいつ見ても迫力がある。だが、この正体はチョコによってコーティングされた生肉だ。殺切から食べるよう言われているが、生肉とチョコのコラボなグロテスクさと劇薬的調味料に少しと言わず結構ビビっている。
正直…食べたくない。
「……はぁ」
刹那は溜め息をつく。しかし、なんだかんだ言って実は嬉しかったりする。あの殺切が不器用なりに自分のため作ってくれたのだ。嬉しくない筈がない。
「…少しだけ」
躊躇いながらも息で溶けた生々しい肉の部分にかじりつく。
「っ…!」
口の中で広がる筈の濃厚なチョコの味が殺切の加えた聞いたことのない調味料のせいでドロっとした黒糖のような味になってしまっている。生肉は……まぁ生肉だな。
「これはなかなか…」
俺って意外とあまとう??などと今更ながら疑問を抱く。
「…ん?」
何か口に違和感をおぼえる。
「何だこれ?」
それは紙切れだった。
それには細かく漢字で《天使》と書かれている。
「…はい?」
何が言いたいんだ?と首を傾げていると、頭にふと今日の出来事が浮かぶ。
-チョコ…?-
「…ん?まてよ?」
刹那はふと思い箱を膝元に置くと、制服の下に来ている服を確かめる。もし自分の服が布地で粉の汚れがあるのなら……
「やっぱりか…」
下着は布地のシャツで胸元に所々粉のようなものが付着している。これは殺切にバレンタインデーでこの…チョコ?を貰う少し前に汚したものだ。それはつまり、今着ている時点で日付けが二月の十四日だという事を表している。そして日の傾きからして時刻はおそらく俺がチョコを受け取った後。
「一体どうなってる…」
今が十四日の夕方ならば分からないでもない。もしくは十五日の昼。しかし、これではまるで俺が過去に戻ったかのようだ。
いや、間違いなく戻ってしまっている。
本当なら今頃自分は中庭で周りから隠れて昼食をとっている筈なのだ。まぁ、それは今に始まった事ではないが。
キィンッ
「っ…!?」
刹那は反射的に近くにあった食品棚に身を隠す。今確かに何か金属の打ち合う音のようなものが聞こえた気がしたのだ。それに触れ合う音が次第に近くなってくる。
「ヤべっ!」
俺は奥にある惣菜売り場に走る。
ガシャンッ
「うぐっ」
弾かれた片方が店のガラスを突き破って転がり込んできた。
再度隠れた棚から覗いてみれば、そいつは想像よりも遥かにきしゃな体つきをしていた。
「ここまで渡り合うたぁなかなかやるな女…どうだ?俺達《魔族》の傘下に入る気はないか?殺すには惜しい」
もう一人ジャリ、とガラスを踏み鳴らして入ってくる。
一言で表すなら《闇》だ。
性別は男だろう。
そいつは向かい合って数メートル手前で立ち止まると、手を差し伸べる。
「黙れ、ロリコン」
もう一人の方は一瞬にしてその誘いを切り捨てると、数歩下がって何やらばかでかい刃物を構築する。
「あれっ?どっかで…」
さっきの言動といい、あのばかでかい刃物は殺切の斷頭刃によく似ている。いや、むしろ似ているというより…
「殺切っ…!?」
刹那は息をのんだ。
確か殺切は俺にチョコを手渡した後、任務に行くとか言ってなかったか?
いつも殺切が何気なく言うその台詞に俺はいつの間にか不安を抱かなくなっていた。
まさかこんな…
「そうか…。残念だよっ!」
馬鹿にされ怒り狂った男は、殺切に向かって無数の黒礫のようなものを形成し飛ばしてきた。それは空中で形状を変え、長針となって襲い掛かってくる。
「くっ」
殺切は多少体に受けるが、斷頭刃を交差して最小限に抑える。
それは棚や床に突き刺さり、黒い灰となって消滅する。
「おいおい、マジか…っ!」
殺切はお返しとばかりに斷頭刃を下段に構えると、前方の男に向かって切り上げる。
「斬空破っ」
地面をえぐり巨大な風の刃が男に目掛けて直撃する。それは止まることを知らず、そのまま店の壁ごと真っ二つに切り裂く。
「すげぇ…」
俺は殺切の実力が並外れている事に改めて気付かされる。これじゃあ教官等が恐れるのも分かる。
幼馴染みでよかった。
刹那が考えにふけっていると殺切は片膝をついて息を切らしている。攻防戦の後あれだけの鎌鼬をつくったのだ。無理もないだろう。
それに全身の切り傷と打撲痕。
あの時の傷だらけの姿はこの戦いが原因だったのだ。殺切は息を整え立ち上がると、男の状態を見に埋もれている瓦礫に近付く。瓦礫に付着するおびただしい血が男の末路を物語っていた。
「何だよこの現状は…」
俺は頭を掻く。
男は自分を《魔族》などとぬかしていた。
町に魔族?
何処から湧いて出たのだ?
異世界か?
自分には考えてもよく分からない。
「あぁっ」
「殺切っ!?」
俺が咄嗟に顔をあげると殺切が男に首を絞められていた。男はあれだけの攻撃を受けながらもかろうじて生きていたのだ。男は埋もれた瓦礫の中から這い出ると、そのまま殺切を持ち上げる
「クソッ!いてーじゃねーか!」
切り裂かれて無くなった左手を見て殺切を睨み付ける。殺切はもがいて斷頭刃を男の脇腹に切りつけるが、足場が無くなったせいで思うように振るえない。
「ぐ…うぅっ!」
「おーっと無駄だぜ?俺は並大抵の傷じゃ再生しちまうからなぁ」
男がそう言うと、切り落とされた筈の左腕がみるみるうちに再生していく。殺切が切りつけている脇腹など、その場から傷が癒え始めている。
「そんなっ……かはっ!」
殺切は堪らず斷頭刃を落としてしまい、光分子化して消えてしまう。
「殺切っ!」
俺は夢中で走り寄ると、殺切を助けようと男を蹴りつける。
スカッ
「っ!?」
当たらない…。
男にぶつかる寸前で自分の足が透明になり攻撃を妨げる。それにどうやら自分は周りからは見えない存在のようで、男はこちらを見向きすらしない。
「クソっ!離せってんだよテメェ!」
幾らがむしゃらに攻撃しても一度も当たらない。
殺切の体から力が抜けていくのが見て分かる。このままじゃ取り返しのつかないことになる。
ふざけるな!
刹那は悪態をつく。
「そうだっ!」
刹那は瓦礫が掴めることを確認すると、男に効きそうな大きさを抱える。
殺切達にも見える物なら当たる筈だっ!
そう考えて刹那は振りかぶる。
しかし、ここで一つ疑問が浮かぶ。今自分が今いるのは過去なのだ。もしここで危害を加えれば未来が変わってしまうのではないか?
それに、殺切は夕方学園に戻って来た。
それはこの危機的状況を回避したというなによりの証拠だ。
それってつまり…
「さて、頂きますか」
男はぐったりとした殺切を頭上に放り投げる。次の瞬間、男の顔が膨れ上がり大きな口が舌をのぞかせる。気を失っている殺切は重力抵抗により男の口の中へと落ちていく。
「クソッ!」
迷っている暇はない!
刹那は我慢できず瓦礫を振りかぶった。
「その必要はないよ」
真横を突き抜ける甘い香り…
「えっ?」
耳元で誰かが囁いた瞬間、男は何者かに弾かれ盛大な音をたて向かいの壁に激突。
殺切は空中で抱き抱えなれ無事着地する。
「このクソ女!どっから湧いて出たっ」
男が瓦礫を蹴散らし吠えると、その者は殺切を抱えたまま瓦礫の上から降りてくる。小柄で白銀の流れるような長髪に切れ長の燃えるような紅い瞳。おまけに何処かの民族衣装のような格好だ。
大丈夫かこの人は。
殺切を傍らに寝かせると、男の前に立つと、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに口を開く。
「僕はこの国唯一の魔法学園である《虹魔導師学園》の歴代最年少にして学園長を務めるラハール・サー・ランスロットさ。よろしく頼むよ」
「学園長!?」
俺は心底驚いた。何故こんなところに!?いやいや、それ以前に学園長って自分達とあまり変わりないではないか。
「よろしく…じゃねぇ!舐めてんのか!」
「あー…ごめんね。気を悪くしたかい?」
男は両手を前にかざすと、話も聞かず幾つもの魔弾を放つ。それらは一直線にラハールの元へと飛び交い降り注がれる。
「あー…はいはい」
ラハールはそう言うと、自分の目の前に何やら棒状の物で魔法陣を描く仕草をする。俺はわけが分からず、影響を受けないにも関わらず反射的に着弾に備える。
次の瞬間凄まじい音をたて次々と大爆発を起こす。
「マジかよっ」
予想以上の爆音に俺は堪らず店の奥に逃げ込む。
魔族というのは皆ああなのか?
冗談じゃない!
まるで生きた心地がしないではないか。それにあの男は《魔族の》と言っていた。まさか他にもあんな奴等が町を行き交いしているのか?
顔を伏せ、身を潜めているうちにやっと爆発が収まったようだ。
俺は顔を上げる。
壁が爆風で吹き飛ばされている。
スーパーというより、もはや廃墟だ。
刹那は急いで立ち、土埃をかき分け殺切達のいた場所へ駆け寄った。
しかしそこには誰もいなかった。
刹那は両膝をつく。
「そんなっ…殺切っ!ラハール学園長!」
「なんだい?」
「うわっ」
刹那が目の前の絶望に打ちひしがれて叫ぶと、土埃の中からぬっとラハールが顔を出す。
「あ、あれ?生きてる…?」
「人の事を勝手に殺さないでくれるかい」
ラハールはピンピンしていた。
あの猛攻の後だというのに澄まし顔で服に付着した埃を払い落としている。俺が男の詳細を求めると、前方を指差す。
男は黒い液体を残し、跡形もなくなっていた。
「なんで……そ、そうだ殺切はっ!?」
「ちゃんといるよ?ほらここ」
ラハールが脇に避けると、気を失ったままの殺切が仰向けに寝かされていた。これが俺の知っている現実と合致なら、この後殺切は学園で自分を助けるのだ。そう思うと、痛々しくて見ていられない。
「こんな小細工しなくても後々教えるつもりだったのに…。金輪の阿呆が」
ラハールは殺切の隣に座り込むと、俺にも隣に座るよう手招く。
「あの、教えるって何を?」
刹那は隣に座ると、ラハールの言った事が何だか気になり、単刀直入に聞いてみる。すると、ラハールは決まってるじゃないかと苦笑する。
「この現状についてだよ。殺切ちゃんを巻き込んでいる以上、君に教えないわけにはいかないからね、刹那くん」
ラハールは笑うと足をパタパタとさせる。
聞く話では、魔族を見かけるようになったのはおよそ二年前から。最初はラハール学園長自らが赴き事にあたっていたが、一年程前から数が急増して手に終えなくなり、有能な魔導師を探していたらしいのだ。
「それで殺切が?」
「そういう事。討伐に加わったのは二ヶ月程前からだけどね。それまでは特務管理室などで基礎術的なものを学んでもらっていたんだよ」
ラハールは嬉しそうにそんなことを言う。
引きこもり気味な俺の場合は、きまった時にしか外に出ることはない。そのせいで世の中の現状を見逃してしまっていたようだ。しかし、自分に限らず周りがその事態を把握していないのは、きっと殺切とラハール学園長が防衛していたからだろう。
「僕は日頃生徒とは会う機会がなくてね。殺切ちゃんのことを知ったのも噂でなんだよ、《切り姫》ってね」
あー…左様で。
《切り姫》は殺切の異名で両手に大剣ぶら下げ学園内をうろつく姿が噂で広まり、ついた名がそれというわけだ。
ラハールはパタパタを止め立ち上がると、入口の方に向かい空を見上げる。
「刹那くんがここにいるのは金輪の力でのようだね。戻ったら金輪に言っておいてよ。《変態》って」
ラハールはそう言うと地面に棒で円を描く。すると、底が抜けて真っ暗な闇ゲートが出現した。
「ライさんが?てかこ、これって…」
金輪の事など一瞬で吹き抜け刹那は反射的に立ち上がった。
聞いたことがある。
誰も手が出せない頂にある超魔法
その中に世界と異界を結ぶ境界線の魔法があるというのを。今目の前にあるのは間違いなくその超魔法《異空間魔法》だ。
「まさかエンシェントマジックが使えるなんて…」
これなら何故ラハールが無傷なのかも示しがつく。男が放った魔弾は瞬時にラハールが記した異空間に飲み込まれたのだ。世界と異界を結ぶ境界線はその名の通り。異界へと吸い込まれた魔弾はその中を伝い世界へと放たれる。男の死因は頭上にでも開かれたゲートから魔弾の雨が降り注いだといった具合だろう。
「流石ですね」
「ん?何がだい?」
ラハールは刹那の隣に立ちながらとぼけたように首を傾げる。
それなりの力を有する者とは皆このくらい己の凄さに疎いのだろうか?
「なんでもありません…」
刹那は溜め息をつき、のそのそとゲートに脚を入れる。何だか冷やかな感じで、脚だけを切り離されたかのように感覚がない。
一体この魔法はどういう原理で出来ているのだろうか。
「それは内緒♪」
「アンタもエスパーかっ!」
どうもこの学園は教官から学園長に至るまでワンダフルな人で溢れているようだ。
いや、この人はまた特別か。
「あ、それとこの事は殺切ちゃんにはまだ内緒だよ?くれぐれも気を付けてね」
「えっ?何で…」
俺は付け加えられたその言葉の意味が理解不明でラハールを振り返ると、突然体を押されて背中からゲートに飛び込んだ。
「これ以上は殺切ちゃんが起きる頃だから後程、だよ?」
なんですとー!?
それを最後にみるみるうちに全感覚を支配され、刹那はゲートに呑み込まれていった……