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change-the-world  作者: 這いよる混沌さん
13/23

トラウマと帰還

パンパンッ


鎌火は血の付着した手を振るって叩くと、鎖のところまで歩いていき、斧を引っこ抜く。ズズゥンッと地鳴りをたてて赤黒い斧は落ちると、光分子化する。


カツン、カツン


自分の崩した定まりのない地面を歩きながら、空を見る。


「ジャグッ!」


『アイよー姉さんっ!』


ふわふわと、くりぬかれた天井の上から砂の塊が降ってくる。それは女の子を砂で取り巻きながら、鎌火の隣で豹の形になる。


『砂使いが荒いッスよ~』


「ガタガタぬかすな、水ぶっかけるぞ?」


『それは…勘弁してくださいッス!』


鎌火はジャグに瓦礫の撤去作業と死体の清掃を頼むと、殺切の元に急ぐ。俺っちこう見えても《神獣》なのに、とジャグはしょぼくれながら、女の子を背中に乗せてふわふわと作業に移る。


「殺切、意識はあるかっ?」


頬を軽く叩くと、殺切は目を開く。視点が定まらないようで、またすぐに目を閉じる。


血が足りないか!


鎌火の場合は屈指の猛攻タイプなので、治癒魔法はおろか応急措置もまともに出来ない。


「サーちゃんっ!」


「はいはーい!」


声のした方に目を向けると、何もないところからラハールが飛び出してくる。姿を隠す際に多少被害を受けたらしく、キグルミの所々が破け、左肩の肌が見えている。


「サーちゃん肩!見えてるっ」


「へっ?」


ラハールは左肩を見ると、へへーと苦笑を浮かべる。替えはないから仕方がないと言うことなのだろう。壁際に居たラハールは瓦礫をぴょんぴょんと跳び跳ねて来ると、殺切の容態を診る。


「肋骨が肺に刺さってる可能性があるね、直ぐに帰還して金輪に診て貰わないと…」


ラハールは壁際でイビキをかいている孝巳を呼ぶ。


「へいへい」


孝巳は大きく欠伸をすると、起き上がってのそのそとこちらに歩いてくる。鎌火はあまりにも遅いので、立ち上がって孝巳に近付くと一度叩いて引きずってくる。


「いってぇ!何なんだよ!ったく」


「こちとら急いでんだ!寝てんじゃねーよクズやろー!」


「えっ、何?この言われよう…」


鎌火はそんな孝巳を引きずってくると、ポイッと放す。孝巳は空中一回転して転がって着地すると、殺切の有り様を見て、なんだよ!?重傷じゃねーか!と、今更度肝を抜かれている。


「ラハール学園長っ!殺切は!?」


今度は部屋の中央部にあった大きな瓦礫が突如ブレてなくなると、刹那へと姿を変えてこちらに走ってくる。


「殺切っ!」


刹那は殺切の血の気の無い顔を見て絶句して顔を背ける。左肩には風穴が開き、肋骨は折れているのだ、こんな痛々しい殺切なんて見ていられない。


「《炎狼》…いや孝巳、頼む!この通りだ!少しでいい、傷を癒してやってくれねーか!?」


鎌火は地面に両膝をつくと、孝巳に頭を下げる。幾ら犬猿の仲とはいえ、状況が状況なのだ。そんなことは言ってられないのだろう。故に母親として娘を助けたいと言う気持ちは誰よりも強いに違いないのだから。


しかし孝巳は顔を歪めると、背ける。


「すまねぇ、俺もここに来るまでに魔力を消耗し過ぎちまった、さっきの《幻覚魔法》でもう空っきしなんだ…。」


「そんな…」


鎌火の顔が苦痛に歪められる。


鎌火さん…


刹那は何も出来ない自分が腹立たしくて拳を握りしめる。たかか拳程度の大きさの瓦礫にこずかれただけで気を失うなど、馬鹿ではないだろうか?自分には到底使いこなせないのに《手袋》を勝手に装着して異世界に飛ばされ、挙げ句の果てに殺切を無惨な目にあわせてしまった。


自分とは何なのだろうか?


「刹那」


いっそのこと俺が…


「刹那ぁぁ!!」


はっと我に返り、刹那はいつの間にか下がっていた顔を上げる。すると、鎌火が引くほどにラハールは声を荒げていた。


「自分を責めるのも大概にしろ!いずれはこうなる運命なんだ、それを悔やんでも仕方がないじゃないか!それに…」


ラハールは荒い呼吸を整えるように深呼吸をすると、刹那を軽くこずく。


「君が死ぬ事だって誰も望んでいないんだよ?」


ラハールはそう言うと、ニッコリと笑ってみせる。


ラハール学園長…


刹那は涙がにじみ出てくるのが分かる。刹那はそれを拭うと、力強く頷いた。確かに、ここでめげていても仕方がない。ならばどうするべきか?


守れるだけの力を身に付ければいい


身体に宿る呪縛を解き放ち、殺切や周りの人々を守れるだけの力をつければいい。自分には前世の記憶も知識もある。今はつかえなれども、父からの《漆黒の手袋》を受け継ぐのだ。


「それに、殺切ちゃんを助ける方法はまだあるんだよ?」


「!?」


ラハールがそう言うと、鎌火はさっと顔を向けてくる。


「この世界は、一度来た事があるんだよ。ゲートを調律すれば多分帰れる。ただ…」


ラハールはそこまで言って俯く。言いたい事は多分ここにいる全員が分かっているだろう。


魔力が足りないのだ


朝、二日も食していないとラハール学園長は言っていた。察するに魔族との連戦だろうと刹那は考える。ぶっ続けで魔力量も激減し、弱りきったところでゲートを開いて家のお風呂に和みに来たのだろう。


「魔力の補給方法ならあるだろ?俺はまだたんまり残ってる!幾らでも、その…《吸って》いいから!だから…」


「……本当にいいんだね?」


吸う…?吸うって何だ?


刹那が不意に孝巳を見ると、何故か顔がひきつっている。


え?何!?どういう事?


フッ


「!?」


刹那がラハール学園長に抱きつき、顔を赤らめる鎌火に視線を向けた途端、姿が消失した。またまた刹那が孝巳を見ると、ギョッとした後、いきなり立ち上がってその場から駆け出す。


え?だから何?この状況!?


ガブッ


「ガブ…?」


チューーー


「あうっあ、あぁぁぁ~…うみゅっ!」


「鎌火さん?どうしたの!?」


声はするが姿が見えない。先程姿を消した位置で手を振り回したり、掻き回したりするが、誰もいない。


何処から?


ドサッ


後方で音がして振り向くと、地面にへろへろで俯せに倒れる鎌火と、口元を拭う全体的にテッカテカになったラハールが姿を現す。


「サーちゃん、相変わらず容赦ねー…な」


「ごめんよ?しかし、鎌ちゃんのはやっぱり最高だよぉ!」


ラハールは鎌火にありがとう!、と言うと、早速ゲートの調律を始める。


刹那は急ぎ足で鎌火に歩み寄ると、ひっくり返して上半身だけを起こしてあげる。すると鎌火は震える手で刹那の肩を掴む。


「刹那、俺はここまでのようだ…。殺切を頼むぜ…?」


そう言うと、鎌火の手から力が抜けて肩から滑り落ちる。目は閉じられ、首からも力が抜けたようにガクンと折れる。


え…?嘘…だろ?


「鎌火さんっ!」


「うるせーな、何喚いてんだよ。気を失っただけだっての」


「あ!逃げの孝巳っ!」


「誰がじゃ!」



ったく!と孝巳は愚痴る。よく見ると、いつの間にか置き去りにしてしまっていた殺切を抱き抱えて、連れてきてくれていた。


「あ、孝巳さん、殺切を運んでくれたんですか?」


「ん?あぁ………まあな」


あれ?何だ今の間は…?


刹那は怪訝に思いながらもとりあえず、ありがとうございました、と御礼を言っておく。でも何故だろう。どうしてかは知らないが、孝巳からは金輪教官と同じ臭いがする。


「じゃあ、僕が抱き抱えますから」


「断る」


「……」


「……」


「……」


「渡せぇぇぇ!」


「いやだぁぁ!」


やっぱり!と刹那は確信する。孝巳は心配で殺切を抱えて来たのではない。ただ単に殺切を抱き抱えたかったのだ。


「この中年エロオヤジめ!殺切を返せっ」


「バカッ怪我人だぞ!暴れるなっ」


「うるさいっ!じゃあ渡せよ!」


大人の男にろくな奴はいない。何だか孝巳の殺切を触る手がいやらしく見えてきて仕方がない。


このやろう…!


刹那は唇を噛む。のろそうにしている割にはステップといい、避け方といい全くの無駄がない。鎌火さんもやっぱり凄いのだろうか?と思ったりする。こちらの手が掠りさえしない。


「終わりか?」


孝巳はトン、トン、とステップを踏みながら、こちらの様子をうかがっている。刹那はハァーッと深い溜め息をつくと、できれば言わないであげたかったんだけど、と刹那は一言だけ口にする。


「殺切は、鎌火さんの娘ですよ?」


「……」


「……」


「お渡しします!」


「え?あ、はい…どうも」


孝巳はあっさりと申し出に応じた。刹那もまさかこうも簡単に返してくれるとは思っていなかったわけで、少々返答がぎこちなくなる。昔何か恐ろしい目にでもあったのだろうか?


まぁ、鎌火さんですから…


なきにしもあらず、と言うやつだろうか。孝巳は殺切を刹那に渡すと、頭をこずく。


「そういう大切な事は先に言えよな?知ってたらこんな思いしなくて済んだのに…」


思いって何だよ…


「独身なんですね」


「うるせっ」


またこずかれた


どうやら図星のようだ。そうしているうちに何やら前方からふわふわと砂と女の子が飛んでくる。それは孝巳の周りを一、二回転すると豹の形に変わり、右側に降り立った。


『あれっ?鎌火の姉さん何処っスか?頼まれてた作業が終わったのに…』


「は?頼まれた?…ジャグ、お前は俺の《守護獣》だろうが…」


『だって獅牙っち、鎌火の姉さん怖いんスよ!』


へ?砂がしゃべってる?


刹那は目をこするが、それは目の前で佇み、孝巳と話している。体格は最低でも三メートルはくだらないだろう。手足には金箔のレギンスなるものを身に付けている。


「あの、それは…?」


刹那はジャグを指差して孝巳に問い掛ける。こいつか?と孝巳はペシペシとジャグを叩きながら言うと、えっとねー、と考え始める。


使い魔…?


刹那がジャグを見ると、こちらを鋭い目で睨んでくる。


『おい、てめぇ!ガン飛ばしてんじゃねーぞ?舐めてっと俺のナックルパンチが火をふくぜ!?』


「吹かんでいい、吹かんでいい」


孝巳は刹那に突っ掛かるジャグを両手で押しやると、ハハハッと笑って誤魔化す。ジャグにいたっては何だか面白くなさそうだ。と言うか、ナックルパンチとはどの手が出すのだろうか?


少し…気になるかも


刹那は一度殺切を下に寝かせると、容態を確認する。呼吸は少し荒いが、血は止まっているようだ。額に浮き出た汗を袖で拭ってやると、あぐらをかいた膝に頭を乗せてやる。


「しかし、ジャグが見えるのか?並大抵の奴には見えないんだけどなぁ…」


孝巳が言うには、ジャグは《守護獣》又は《神獣》と言って使い魔とはまた異なり、一応は神の一種らしい。昔、学園長室の一室にある本棚から召喚術に関する本を持ち出した事が始まりだと言う。自室に隠り、一人で勝手に研究したところ、召喚出来たのがジャグだという。


「授かったとかじゃなく、自分で?」


「あぁ、そうだ」


刹那は目を丸くする。流石はラハール学園長の教え子といったところか。普通、服従させるのを望んでの召喚術は複数人でやるものだと聞いたことがある。従えるにはそれなりの力の上下関係を見せつける必要があるからだ。


しかし…


孝巳の場合、一人で召喚に挑むとは正気の沙汰ではない。たとえ召喚に成功したとしても、召喚した…それも《守護獣》をも上回る力を見せつけなければならなかった筈なのだ。失敗すれば、その場で惨殺。たとえ生き残れたとしても、間違いなく死刑だ。従えさせることができず、世に野放しにした狂乱者として。つまり、孝巳は一人で《守護獣》を超える力を見せつけた事になる。


「それにしても、一人で《神獣》従えさせることが出来るなんて凄いですね?」


「え?まさか!無理に決まってんだろ!俺は一度は死んだ身なんだぜ?」


……え?


「失敗だよ、まだガキだった頃の俺の浅知恵でどうにかなる相手じゃねーって」


孝巳は無理無理、と手振り首振りで表現する。言うには、自分が部屋を破壊されて、重傷を負いつつ逃げ回っていると聞きつけた鎌火さんとラハール学園長が助けに来てくれたらしい。


「ただ…」


その時の鎌火さんの姿がいまだに忘れられないらしい。ラハール学園長が召喚術式を再発動する間、足止めとしてジャグの相手をしていて鎌火さんは一度ジャグに弾き飛ばされたらしいのだ。


『鎌火怖い鎌火怖い鎌火怖いブツブツブツ…』

その時の記憶がよみがえったのか、ジャグは後方で震えている。


「あれは俺もトラウマだな…」


弾き飛ばした鎌火を追撃する事なくラハール学園長を標的にしたジャグの行動がしゃくに触ったらしい。ジャグに向かって水をぶっかけると、尻尾を引っ掴んでそのまま地面に叩きつけたのだという。喉元を押さえつける鎌火にジャグが抵抗して身体に爪を突き立てるにも関わらず、ラハール学園長が止めに入るまで容赦なく殴り続けたらしい。


「あの時程鎌火を怖いと思ったことはないな。正直、殺しちまうんじゃないかってヒヤヒヤさせなれたぜ」


孝巳はハハハッと笑うが、ジャグはガタガタと震えたままだ。


え?鎌火さんの…拳で?


「そ、それ洒落にならないですよ!」


「あぁ、まったくだ」


既に意識がないのも関係なく、血溜まりの中で殴り付ける姿は地獄絵図以外の何ものでもなかったらしい。


同情するよ、ジャグ…


刹那は地鳴りを響かせながら殴っている鎌火を想像して背中に冷や汗をかく。


「だからこその注意だっ!絶対にキレさせるんじゃねーぞ?命が幾つあっても足りねーからな!?」


孝巳は絶対だぞ?と釘を指してくる。刹那が思うに、その悲劇を聞いて怒らせたいなどと思う輩はただの死にたがりか、超一級のド変態ぐらいだ。


「みんなぁ、ゲートを解放するよー」


振り向くと、数メートル先でラハールがゲートを開き始めている。


「孝巳さんは、どうするんですか?」


「ん?そうだな…。たまには懐かしの学園でも見て回るかな」


「じゃあ、行きましょうか」


刹那は殺切を抱き抱えると、ゲートに向かう。とても軽い殺切の身体は風邪に吹かれただけで飛んでいきそうな程儚げだ。こんな体で今まで守ってくれていたのかと思うと、刹那は申し訳なく思う。幾ら強くても上には上がいる。それに殺切にはもう傷付いて欲しくない。


「次は俺が守る番だよな…?」


刹那は眠ったままの殺切に問い掛ける。勿論答える筈もなく、荒い息を繰り返しているだけだ。


分かってるさ…


いつまでも弱いままでは先へは進めない。殺切を守れるようになるにはまず、同じ頂に立つことは必須だろう。守る側が守られる側より弱くては話にならない。


「刹那、テメェは何ゴチャゴチャぬかしてんだ!?早く入れや、殺すぞ!」


「あれ?鎌火さん大丈夫なんですか?」


刹那が自然と立ち止まり、ぶつくさと思考に浸るかたちになっていると、鎌火は起き上がってこちらに歩いてくる。体調は回復したようで、ふらつきなく普通に胸ぐらを掴まれる。


「殺切が助かんなかったらテメェのせいだからな!」


「そんな無茶苦茶な!」


「分かったらさっさと入れや!」


鎌火は刹那を持ち上げると、ゲートに向かって投げつける。刹那は慣性の法則で殺切に抱きつくかたちになってしまう。


「ちょっとぉぉ!病人抱えてるんですけどぉぉ~…」


「あ、早いね刹那くん!用意周到だねっ」


勢いそのままにズボッとゲートの中に消えていった刹那をラハールは見送る。


「おいっ!何で逃げんだよ!?」


「は、離せぇ!鎌火怖い鎌火怖い…」


『鎌火怖い鎌火怖い鎌火怖い鎌火怖い…』


「揃いも揃って人を呪いみたいに言ってんじゃねーよっ!」


ジャグから女の子を引き剥がすと、一人と一頭をゲートに投げつける。孝巳とジャグは叫んで絡まるようにしてゲートの中に消える。


「さて…」


鎌火は尻ポケットから煙草を取り出すと、バチチッと指の先から出る紅雷で火をつける。女の子を肩に担ぐと、ラハールの元に歩み寄る。


「お疲れさん!だよっ」


「サーちゃんもなっ」


ラハールは鎌火に飛びつくとそんなことを言ってくる。確かに大変な一仕事だったぜ、と鎌火はカッカッと笑う。正直、天井が崩れた時は焦った。自分の事より、刹那と殺切に対してである。あの時は二人の事で頭がいっぱいになり、危うく無駄死にするところだったのだ。


「殺切ちゃんは鎌ちゃんが思っているより成長しているんだよ?」


瓦礫を支える中ラハールにそう言われ、鎌火は我を取り戻すと、刹那を殺切に任せ、奇襲に備えたのだ。


「でもよ、まさか上空に転移させられるとは思わなかったぜ!参ったねありゃ」


「あ!御免よ?すっかり忘れていたよ!」


ラハールが兎の格好であたふたするのを鎌火は苦笑すると、ラハールの頭に手を置く。鎌火には高所恐怖症という、誰にも言えない弱点があるのだ。


まぁ、ジャグには知られたがな


空中でワタワタしている鎌火を孝巳の帰りを待っていたジャグが助けてくれたのだ。


「下でも上手くいってたみたいだな」


「勿論さっ!バッチリだよっ」


鎌火が手の下のラハールに聞くと、ふふんっと胸を張る。


鎌火を転移させた後、瓦礫を回避したラハール達は壁際に寄り、孝巳が気絶した刹那もろとも《間接型》の幻覚魔法を発動させ、ラハールの《不可侵の領域》の中で身を隠していたらしい。《間接型》の孝巳の幻覚魔法はその場に入るだけで大抵の者やゴロツキ程度には軽く繁栄する。あちらから見れば瓦礫がラハール達に見えていたり、本当は居るのに違う物に見えたりするというわけだ。


「そろそろ時間だね、行こう鎌ちゃん!」


「了解だ、サーちゃん」


ラハールはその場で伸びをすると、迷いなくぴょんっとゲートに飛び込む。


フゥー…


鎌火は吸いかけの煙草の火をブーツで踏んで消すと、ゲートに近寄る。


「……」


鎌火は肩に担いだ女の子を見やる。刹那が着てなかったの察するに、この子の着ている赤いコートは刹那のだろう。試験指定服も着用せず、どうやって試験を受けるつもりなのだろうか?鎌火はやれやれと呆れる。


まぁ、連れて行くか…


鎌火は、ほいそれとコート脱がせるわけにもいかないので着せたまま学園に連れて行く事にする。それに、こんなところで一人取り残すというのも後味が悪い。


「よっこらせっ」


鎌火は振り返り、辺りを確認すると、ゲートの先に繋がる学園へと足を踏み入れた……

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