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公安省特特課  作者: ひざ小僧
第2章 Mission 002 Praying Mantis (蟷螂)
8/22

指令室


昨晩、コードネーム『反乱分子』という思念体に憑依された、天照那美(あまでらなみ)ちゃん(16)と出会いました。人間としての那美ちゃんは悪い子じゃないとは思うんだけど、ちょっと足りないというか、扱いに困る女の子でした。


しかも人間としての那美ちゃんは、天照課長の養子だそうで・・・ 公安省で育てられたというから、いきがかりで天照課長が養親になったんでしょうけど、いきさつの詳細は教えてもらえませんでした。


割烹スナック『とくとく』の料理はとってもおいしくて、ついついお酒を過ごしてしまいました。課長なんか、焼酎のロック、7、8杯はいってたと思います。もちろん、那美ちゃんはウーロン茶で、しっかりご飯も食べていました。那美ちゃんは、ぐでんぐでんになった養父の課長を抱えるようにして、家に帰って行きました。


軽く二日酔い気味の頭を抱えて、N野区のアパートから電車に乗って、東京の中心部にある公安省特務部に向かいました。


公安省本部庁舎は、旧財務省跡地に建てられた、50階建ての高層ビルです。財務省は、S玉県のSたま市に移転されて久しいです。この国の最大の関心事が、財政から、公安、治安に移ったと言えるかもしれません。


特務部は、このピカピカの公安省ビルには入っていません。日比谷公園の端っこに『公園管理事務所』がありますが、特務部はここに『間借り』をしています。特務部は国内外のテロリスト、極右・極左集団、カルト教団、暴力団等のうち特に危険な連中を扱っていますから、世間から秘匿されているわけです。


職員の我々も、特務部に入る際スーツなんて着ていきません。僕の今日の格好は、胸に「日比谷清掃サービス(株)」と刺繍がある作業服姿です。


「おはようございまーす。」


公園管理事務所の扉を開けて、中にいるおじいちゃん、おばあちゃん数名に朝のご挨拶です。ここにいるおじいちゃん、おばあちゃんは公務員OBで、身元確かでとりわけ口の堅い人たちと聞いています。口は堅いかもしれませんが、無口というわけではありません。


「あら、惣ちゃん、研修開け2日目でもう遅刻ギリギリ? あー、ゆうべ、お酒でも飲んだのね? さては、歓迎会かしら? とすると、課長いきつけのあそこだわね。」


元気のいい米山ヨシ子さん(67)が僕の到着時間とたぶん顔色や声音から判断した結果を通告してくださいました。どんぴしゃりです。


「ご明察~。奥のトイレ使いますよ~。」


「トイレ、いっといれ! 」


ダジャレ好きの高山甚平さん(70)がボケをかまします。


面倒くさいのでスルーしつつ、青い人型と赤い人型で構成されたトイレの表示のある戸をあけ、中に入ります。


一番奥の個室トイレに入り、トイレ壁面に付着された消臭スプレーに似せた縦20cm、横7cmほどのプラスチックの箱をぱかっと上方向に開きます。中には、数字のテン・キーと、赤い光をほんのりまとった直径3cmほどのカメラレンズがあります。僕はカメラレンズを覗いて(瞳の光彩を読みとる装置だそうです)、EPPSから読みとったその日の僕のIDナンバーをテン・キーで打ち込みます。


ガウン!


落下重力がかかります。このトイレは、高速エレベーターになっています。昔のハリウッド映画に『黒服の男』というSF映画がありましたが、エイリアンがごちゃごちゃいる空港か入管のような広場に降りていく、あのエレベーターみたいなものです。あっちはカッコイイですが、こっちは臭いです。臭いまで完璧に模写しなくてもいいんじゃない?と思いますが、もしかしたら、そちらの用途でも使用可能かもしれません。


ガウン!


落下が止まったので、トイレ・エレベーターの扉を開けます。そこはまた、狭い部屋になっていて、正面の扉の横に、同じように赤い光をまとったカメラ・レンズとテン・キーがあります。僕はカメラ・レンズを覗き込みながら、EPPSが伝えてくるIDナンバーその2を打ち込みます。


プシュー!


扉が開くと、そこは広ーい部屋になっていて、部屋のドン詰まりにやたら大きなスクリーンがあります。スクリーンのある面を底として、トイレ・エレベーター前の扉から下に段々と階段状になっています。大きな証券会社のディーリングルーム、あるいはJAXAのロケット管制室のように、段々を埋め尽くしてたくさんの机とコンピューター・モニターが並んでいます。正面の巨大スクリーンには、分割表示で日本国内のメディア、CNNやBBC、アルジャジーラ、中央電視台などの海外メディアのニュース番組が流されています。


部屋の中心を走る階段を下りて行き、スクリーンに向かって右側最前列に向かいます。そのあたり一帯の机の島が、特務部EPPS管理課、通称『指令室』です。独立した部屋になってないんですが、なにやら昔の名残りだそうで。


『指令室』の端っこに座っていらっしゃるのが特務課の係、不二美禰子(ふじみねこ)さん(20+α)、『ナイスバディ』さんです。グレイのタイトスカートに、何の変哲もない肌色のストッキングで、長い足を組んでいらっしゃいます。ストッキングが肌色というのも味わいがあるもので、存在感ある太ももさんをより、おいしそうに強調していただけます。くびれた腰の上には、また存在感を主張してやまない、白いブラウスをはじけ破いてしまいそうな反則メロンちゃん二つ。


「不二さん、おは・・・」

「新人! 今、課長みたいにヤラシーおっさんの目であたいを見てたぞ! 朝っぱらから妙なこと考えてると、貴様のチェリーとバナナをつぶしてミックスジュースにするぞ! 」


・・・ まったくお口の悪いことで。僕が彼女をひそかに『ナイスバディ』ちゃんと呼んでいることは、極秘事項(クラシファイド)です。



僕が呆然と立ちすくんでいると、不二さんの影からひょこんとセーラー服が現れました。


「おはよ、お兄ちゃん❤」 




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