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公安省特特課  作者: ひざ小僧
第1章 Mission 001 Wild Boar (猪)
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憑依体


異世界の思念体に憑依されたおばさんが、SG信仰会の建物に入って行こうとしています。まずい、他の会員と接触される前に『解放』しないと!


『指令室、この座標に結界を張ってください。』


『了解。』


パシーン! 破裂音とともに、薄桃色の煙のような、心理バリア、通称『結界』が張り巡らされました。SG信仰会建物前の数十メートル四方、おばさんと僕の周りに霧が立ち込めた、そんな印象です。


おばさんは、すぐに反応しました。


『ナゼ・・邪魔ヲスル?』


おばさんが発した肉声ではない。EPPSと同じく、脳に直接語りかけてくる、どうにも慣れない感じ。


「邪魔って、あなた、一体ナニをしようとしてたんですか? まさか、異世界でもSG信仰会の信仰が流行ってるとか?」


おばさんがくるりとコチラを向くと、あの赤紫色の煙がおばさんの周りからもわもわもわっと湧き上がってきました。


『グルゥウゥオオオォォ・・・』


研修で憑依体のビデオを見ましたが、作りものっぽくてどこか本気にしてませんでした。しかし、ライブの憑依体の迫力を見ちゃうと、過去の戦隊ものテレビ番組を斜めにみてへらへら笑っていた自分を叱りつけたくなります。もっと勉強しとけばよかったって。あんまり関係ないか。


ボワッという炎を発する音とともに、ぽっちゃり人のよさそうなおばさんの形相が変わります。これぞ、変身。


髪の毛は逆立ち、鼻がのびてきて、下あごから二本の大きな牙がにょきにょき生えてきました。腕や足の筋肉がモリモリ盛り上がって・・・胸囲が膨らみ、おばさんのピンクのブラウスや下着があっけなく裂けていきます。もちろん、全然見たいもんじゃありません。


そして出現した怪物は・・・ イノシシの化け物でしょうか。昔むかーし、『モノノケ』とかいうレトロ・アニメ映画で、オコトヌシとかいうイノシシの神様が登場してた記憶ですが、そのオコトヌシさんがマッチョになって立ち上がってる、そんな感じです。


『グルルルゥゥゥゥ・・・ 邪魔者ハ、キエテモラウ・・・』


実は、古今東西、「化け物」とか「妖怪」とか「鬼」とかの類は、この異世界からの思念体が憑依した姿を見ることができる人間がいて、それが語り継がれたのではないかという説があります。いかにも「怖い」姿なのは、思念体が人間の恐怖心を利用して、相手の人間にそう見せているんじゃないか、とも言われていますが、確かではありません。


ヒュッと風切り音がしたかと思うと、巨体のイノシシが突然近寄ってきて、ぶっとい右腕を振り上げ、するどいかぎ爪を僕に振りおろそうとするのです。


EPPSに、後ろに飛ぶ、というイメージを送り込みます。それはもう、必死です。


瞬間、太ももとふくらはぎに大きな力がみなぎり、バーン! と後ろに飛び下がります。ギュンッ! 目の前で、かぎ爪が空を切ります。


「ちょっと! 何するんですか! そんな爪が当たったら、婚活検討中の僕の顔に大きな傷がついちゃうでしょっ!」


『大丈夫だ。すぐ婚活も大きな傷も気にならなくなる。というか「気」がなくなる。』


「それって・・・死ぬってことじゃないかあ! 」


『安心して、消えろ! 』


バキャーッ!! 横殴りに、かぎ爪が左から右方向に襲ってくる!!


くるりと右回転のイメージ。そのまま後方へジャンプ。


EPPSの反応は速い、コンマ数秒の反応速度でイメージを実行。かぎ爪が鼻先数センチを通り過ぎる。


僕にはまだ、逃げることしかできません。


「うわっ! 助けてくれっ! 僕はまだ、攻撃技の一つも習ってないんだよ! 」


余計なこと言っちゃいました。バシュー!! ガシッ!!


イカレル大イノシシちゃんが、大きなかぎ爪を振りまわしてます。僕がよけるたび、建物の壁とか、木とかいろんなものに衝突して、大きな音をたてます。


あ、そうだった、課長には課長が来るまで「かかわるな」って言われてたんだっけ!



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