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公安省特特課  作者: ひざ小僧
第3章 Mission 003 Undecided (未定)
22/22

説得

「随分急なんですね・・・ 明日なんて、受け入れ態勢も整いませんよ」


私立洞純学園の校長室、外国製とおぼしきソファに腰深く座り、目の前で細長い脚を組みかえる、ダークスーツの女性。だめだめだめ、短いスカートの奥が見えてしまいそう・・・ 


「学園長、役所としても困惑してるんです・・・ ほら、衆議院の解散が近いって言われてるでしょ? 現政権が人気なくって、どさくさ紛れの実績づくりというか・・・ 役人ばかり責められる昨今ですけど、政治家だって、ね・・・ どうかお察しください」


「それにしてもねえ・・・ まあ、当学園としてもお上に楯突こうなんて考えてませんが・・・ わかりました、できる限りの協力はいたしましょう。受け入れ期間は、明日から2週間ですね? 」


「はい、どうぞよろしくおねがいします」


百襲ももそ主任は、文部科学省の教育調査課課長という触れ込みで私立洞純学園に乗り込み、学園長との面談を行っています。ソファに浅く腰かけ、しゅいっと背筋を伸ばした主任、美しいです。白いシャツの胸元、ぱつんとはじけそ・・・ うほんうほん


説明から脱線しました。この学園に入り込むのに、文部科学省の調査という名目を使うことにしたのです。もちろん、公安省はスーパー官庁、文科省と口裏合わせることくらいなんでもありません。


何の調査か? ・・・進学校と呼ばれる私立学校が、どんな点で公立学校と異なるか。公立学校の中にも、もちろん進学校はありますが、公立故の限界もあるわけで、もしそうした制約を見直すきっかけになるような秘訣があれば、見直していこうという感じで伝えました。意味わからないですよね・・・ 結局のところただ見学させろと言っているだけで、はっきりとした目標とかもありません。


「学園長、明日からこの諫凪いざなぎが通わせていただきます」


「諫凪惣亮と申します。よろしくお願いします」


学園長に代わり、副校長兼事務長と名乗る初老の男性と事務的な打ち合わせをして、この日は学園を後にした。


帰り道主任がお話してくれたところによると、洞純学園は創立以来女子校であったが、少子化による受験者数の減少、成績の低迷、借金などで廃校の危機まで追い込まれていました。学園の理事達は、起死回生を狙い、そのとき有名進学塾チェーンを運営していた学園長をスカウトしました。学園長は進学塾チェーンを企業に売り渡し、学園入りをしました。はじめに男子生徒を受け入れて共学化し、受験教育に力を入れ、あれよあれよという間に、進学校化に成功したのでした。公安省が注目したのは、その経営手腕もさることながら、学園長の権力志向です。国家公務員上級を目指す生徒指導、政治家との交際に力を入れているほか、私立学校の団体の長にも就任しています。


「主任、あの学園長、きれいでしたね・・・ ほんとに憑依体なんでしょうか」


「あれ、諫凪君、ロリかと思ってたら、熟女もいけるんだ。なんて幅広いスケベでしょう」


「なな、何言ってんですか。ロリでもないし、特に熟女がいいってわけでも・・・ いや、嫌いじゃないですけど・・・ 」


「どっちでもいいわ。学園長が憑依体かどうかは、慎重に見極めないとね。といっても、あと1週間で邂逅かいこうポイントが現れちゃうし、それまでに何とかできるかしら・・・ 」


邂逅ポイントとは、異世界の思念体がこの世界に浸潤しんじゅんしてくる、次元の亀裂みたいなものです。邂逅ポイントの出現は、天照那美あまでらなみちゃんに憑依した『反乱分子』と呼ばれる思念体からもたらされた情報を分析して予測されたものです。


「主任は、これから何か用事ありますか? 」


「なーに、私までナンパ? 見境ないのね」


「ち、違いますよ! よかったら、夕食を『とくとく』でどうかなと思って・・・ 」


割烹スナック『とくとく』は、天照課長の奥さんが切り盛りしている小料理屋です。


「もちろん、君が行こうが行くまいが、私はおいしい料理を食べに『とくとく』に行くつもりでした」


主任、今日はずいぶん僕につっかかるなあ・・・








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