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公安省特特課  作者: ひざ小僧
第2章 Mission 002 Praying Mantis (蟷螂)
18/22

蟷螂


「後藤さん、じゃあ、取引と行きましょうか。」


テラテラ紫スーツの課長が若頭に話しかけます。よっこらしょという掛け声とともに、ベンツのバンの中から、スーツケースを運びだしました。


かしゃかしゃとロックを解除して、スーツケースの半分を開き、若頭をあごで呼びつけます。


「ご注文のブツだ。」


若頭、近づいていって中をのぞき、黒光りする物体を手に取りました。・・・ 小銃です。ひとつだけじゃなく、いくつか入っているようです。


若頭、こちらを振り返って、ゴリ店長を手招きしました。ゴリ店長、ゴルフバックを持って若頭に近づき、頭の部分のチャックを開けました。課長、手を突っ込んで中身をひとつ、とりだしました。・・・札束です。


ゴリ店長はゴルフバックを課長に渡し、ふりむいて僕を呼びつけました。


「おい、これを車に入れろ。・・・ お前、中身見たか? 」


「え? なんのことですか? 」おもいっきりすっとぼけました。


「・・・ 早く運べ。」


はーい、と言いつつスーツケースを持ち上げましたが・・・ クソ重い! ひぃひぃ言いながら、やんちゃレディースのバンに運び入れました。



「後藤さんよ、至誠会に妙な動きがあるんだが、承知してるかい? 」


「妙な・・・? いや、それはどういうことだ、稲山の。」


「的屋の親分たちがさ、お前さんをつけ狙ってるとよ。こっちの動きが漏れてんじゃねぇか? 」


「ふん。老いぼれ達に何ができる。」


「頼もしいこった。でもよ、万が一の間違いでもこっちは大損だ。『対策』についてビジネスマン同志、話し合いたいってよ、うちの会長が。これからちょっと顔貸してくれねえか。」


「物騒なことだな。怖くていけねえよ。」


「こっちは俺と会長だけだ。お前さんとこのバンで、●●ホテルまで行こう。そこに会長がいらっしゃる。お前さんとこのバンなら、今渡したブツもあるだろ? こっちに変な動きがあったら、ぶっ放せばいいさ。」


「承知した。」



課長が乗ってきたベンツのバンは、課長を置いて走り去って行きました。課長がやんちゃレディースのバンに乗り込んできました。


「お邪魔しますよ。」 片手で空を切りながら、後ろの方の座席に座りました。まったく余計な挨拶です。サラリーマンじゃないんだから。今、やくざなんだから。


一番近くの高速出口で降りて、渋滞にまきこまれることなく、すぐにめざすホテルの駐車場に入れました。


「コード194(イチキュウヨン)」


突然、EPPSから『指令室』不二さんの声が耳に流れ込みます。


え・・・ ここでやるのか? コード194とは、結界を張って憑依体を追い詰めることです。念のためですが、決して『イクヨ』とは読みません。もっとも、ダジャレ好きの多い部ですので、番号の元はそんなところかも知れません。


駐車場は比較的空いており、僕たちの外に人影がありません。


バンの横開きの戸を開けて、若頭、ゴリ店長、課長が降りました。


「稲山の。会長はどこだ? 」


課長は、くいっとあごを前方に向けました。そこからやってきた者は・・・


白の道着に朱袴、長い髪の毛を後ろでひとつに束ねた女性です。


「エリ? エリじゃないか。なんだその格好は。いやそれよりも、どうしてここに? 」


エリと呼ばれた女性は、若頭の経営する銀座のクラブに潜入した、我らが百襲(ももそ)主任。


諫凪(いざなぎ)君、一般人を排除。」


僕はゴリ店長の襟首に思いっきり手刀を打ち込みました。うぐっとうめいて、ゴリ店長が前のめりに倒れ込む前に、そのごつい尻に蹴りを入れました。


「し足りないけど、しかえし。」


どさっ


「お前ら、一体何者だ? 稲山会じゃないな? 」


「指令室、結界をお願いします! 」僕は若頭の声を遮るように叫びました。


パシーーーーーッ!!!!


薄桃色の霧が立ち込めました。結界は、万が一一般人が現場に紛れ込んでも、心裡操作で僕たちと憑依体が見えないようにする技術です。見えなくするだけで、一般人と当たったりぶつかったりしたら、ケガさせちゃうことになります。だから、憑依体と対決するときは、他人が入ってこない、しかも戦えるだけ広い場所が必要なのです。システムの改善が望まれます。那美ちゃん、なんとかできないでしょうか。


「お前が異世界から来た思念体であることはわかってるんだ。」


「エリ? 何言ってんだ、頭おかしいのか? 」


「とぼけてもダメ! 」といいざま、百襲主任が若頭の顔めがけてハイキックを決めにかかります。辛くも頭を後ろに避けましたが、つま先が頬をかすめたようです。若頭の頬から、つーっと一筋、血が流れます。


うるるるるるぅ・・・


若頭が低く唸ると、ぶちぶちぶちっとワイシャツのボタンが飛びました。


ふしゅーっ・・・


結界内に、熱気が立ち込めます。若頭の体がぐんぐん大きくなり、肌が黄緑に変色していきました。腕が細くなって鎌状に変形し、頭が逆三角形になり目がぎょろりと大きくなりました。腹が後ろに向かって大きくなり、足が長く延びましたが大きく折りたたまれています。


「カ・・・ カマキリ! 」









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