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公安省特特課  作者: ひざ小僧
第2章 Mission 002 Praying Mantis (蟷螂)
16/22

間隙を縫う


だぁーーーー!!!


またひっくり返された・・・。今朝は既に10回転んでいます。百襲(ももそ)主任のおっぱ・・・胸には1回も手拳が入りません。


「もう一回お願いします! 」


百襲主任は、至誠会が経営する銀座の高級クラブにもぐりこみ、ターゲットである若頭後藤康雄との接近に成功しています。強いだけじゃなく、綺麗で仕事もできる。パーフェクト・ウーマンとは、彼女のことです。


パシッパシッパシッ!!! 拳の突きが僕に向かって打ち出されます。それを平手でかわしながら後退します。くるりと回転して、攻撃に転じます。パシッパシッパシッ!!! 正拳突きを繰り返します。白く細い腕で、華麗にかわされてしまいました。


主任は、攻撃に移ろうと、右足を振り上げ横蹴りを僕に入れようとしました。僕は彼女の足をよけるのではなく、そのまま足に巻き込まれるように、蹴りの力を利用して彼女の方に体を回転させ近づきます。


「なっ!?」


彼女の顔10cm前から、右手の平で彼女の胸の間、胸骨の部分をトンと押しました。


「やった! 初めてできた! 」


主任は腕で胸を包むようにして、真っ赤な顔で僕を睨んでました。そして気を取り直したように、「も、もう一度! 」と仰ると、先ほどに倍する勢いで拳が繰り出されます。今度はよけるだけで精いっぱいで、敢え無くダウン。「まだまだ~!! 」なんだか主任のエス心に火をつけてしまったようで、この日は二度と主任の胸を突くことはできませんでした。でも、攻略法、見えてきた気がします。


稽古が終って、道場のシャワー室で汗を流してから、少し主任と話をすることができました。


「若頭、組を飛び出すつもりらしいわよ。」


「え? 至誠会をやめるということですか? 」


「そうね。自分に従う若い連中を全部連れて、『稲山会』と合流する計画よ。」


「稲山会って、関東じゃ構成員数ナンバーワンの組織じゃないすか。」


「当然、守旧派は面白くない。でも稲山会と正面衝突したらつぶされるのは至誠会だから、合流する前に、若頭一派をナンとかしようとするでしょうね。」


「そこに、すきが生じそうですね。」


「ええ。課長が工作に入ったらしいわ。」


忘れてました。おっさん課長のこと、長らく忘れてました。そういえば、今日は那美ちゃん稽古休んでるな。どうしたんだろう?




道場を後にして、自分のアパートに戻りました。さいたまにレディースを迎えに行く少しの間、お昼ごはんと休憩を楽しむのがこのところの日課です。


がちゃがちゃ・・・ あれ? 違和感が。鍵かけてったはずなのに、開いてる?


僕は緊張感を高め息を殺し、自分のアパートに入って行きます。僕の素状が組にバレた?


リビングに入ろうとしたとき・・・


「お兄ちゃんっ! 」


顔を真っ赤にして、怒りをあらわにしている那美ちゃんが立っていました。


「あれ? どうして僕のうちへ? 鍵はどうしたの? 」


不二ふじさんに言って、鍵渡してもらったの! そんな些細ささいなことはどうでもいいのですっ! 」


些細でしょうか。たしかにここは、公安省が借りている物件ですが、僕にはプライバシーはないのでしょうか。指令室の不二さん、僕に無断で部屋の合鍵を他人に渡すのもどうかと思いますけど?


「お兄ちゃん。これを可愛い妻にわかるように、説明してご覧なさい。」


手には、赤いジャージ(下)と、大柄なピンクの女性用下着、いわゆるパンティーが握られています。あ、ボクちゃんハウス嘔吐事件のとき、レディースの一人から借りたというか、もらったアイテムです。あれ? 今妻とか何だとか、さらっと変なこと言いませんでしたか?


「お兄ちゃん? 私というものがありながら、まさか、おおおんなの人を、ここに泊めたりして、そのええええっちなこと・・!!! 」


「あ、いや、これ僕のです。」


「なんですってぇぇええええ!!! まさかっ! そんなっ! 」


那美ちゃん、今度は顔が青ざめています。・・・ 盛大に勘違いしてませんか? 僕のものと言ったって、これらは緊急避難的にいただいたアイテムで、こういうものを履く趣味があるとかそういうのじゃありませんよ?


「・・・ しっかりして、ナミぴょん! まだ、直る。幼い妻の献身的な愛で、きっと立ち直らせて見せる・・・ 」


ぶつぶつ言って、那美ちゃん、そのままふらぁっとアパートを出て行ってしまいました。


なんなんだろ、あの娘。


ふと気がつくと、テーブルの上におにぎりが3個、ラップに包まれておいてありました。キッチンの鍋には、まだ熱いお味噌汁までありました。那美ちゃん、作ってくれたんだ。カップラーメンが続いていたので、ありがたい。部屋を見渡すと、だいぶ綺麗になってます。掃除もしてくれたようです。


ラップをはがし、おにぎりを一つとって、口に運びます。んまい! ちょっとしょっぱいかなと思ったけど、ともかく嬉しい。那美ちゃんが思念体に憑依されている、コードネーム『反乱分子』とは、とても思えないんだけどな。



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