第2話:逃走
光は徐々に強く、大きくなってゆく。その正体が数台の車のヘッドライトであることを3人が認識するのに大して時間を要さなかった。
マキは素早く車をターンさせ、すぐにでも車を出せる様にしていた。
「マイク!早く番号を!」
マイクも車にエンジンをかけながら叫ぶ。
「叫んで奴等に番号を聞かれると変更される恐れがある!町の中心部まで車を並走させながら話すから車を出せ!」
「わかったわ!」
すぐに2人は車を急発進させ、道路を並走させる。
ひっそりと静まりかえって日々の喧騒など微塵も感じさせない闇の中を、2台の並走する車とそれを追う数台の車のエンジン音が響いてゆく。
追跡者との距離は確実に狭まりつつあった。
「マイク!番号を早く!リサも準備はいいわね!」
その時リサは落としてしまった機械を見つけたはいいものの、その機械のディスプレイにはヒビが入り、とても使い物になりそうもないことが分っていた。
「ママ!機械がさっき落ちた衝撃で壊れちゃったの!」
「なんですって!?…仕方ないわ、貴方が番号を記憶して頂戴。」
「マキ!番号は653-8245だ!」
その番号をリサは何度も頭の中で復唱し、記憶した。
「リサ!覚えたわね!」
リサは力強く頷く。
「あと車はこのまま町の中心部に向かわせろ!そこで仲間と合流して脱出する手筈になってる!」
「分ったわ!」
その間にも追跡者の車は着々と距離を詰めてくる。恐らく車の中には武装した施設の兵が何人も乗り込んでいるのだろう。
マキ達とマイクは町の中心部で合流することにして一端別れた。
幾度も交差点を曲がり、何度目かの道を曲がった後、マキは車をゆっくりと停車させた。