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摩訶不思議  作者: シエラ
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観音(かんのん)

皆さんご存じの観音様の「観音」て、一体どういう意味なのでしょうね。

「音を観る」・・・深い意味があるような気がします。

そんなお話です。

昔々、あるところにお姫様がおりました。


このお姫様はたいそう大事に育てられました。


なぜそんなに大事にされていたかというと、このお姫様には神様からの伝言が始終あったからです。



神様からの伝言・・・・・・それはどんなものなのでしょうか?



お姫様は小さい頃からお空でお話しすることがお仕事でした。

それは生まれ持っての技でした。

代々伝わる秘伝でもありました。


けれど、このお姫様はやんちゃで、無鉄砲な性格でしたから、とんでもないことまでお空でお話しすることがありました。


お付きの者は、このお姫様に関しては小さな頃からずっとハラハラしっぱなしです。


お母様は手慣れたもので、お姫様が突飛なことをお空で言いそうになる瞬間に、お上手に気をそらすことをして、決してお姫様に粗相を言わせないように出来ました。


お付きの者たちは、このお姫様はお母様と一緒の時は安心と、思っておりました。


けれどお母様のいないときにはどうしていたのでしょう。


それは神様が見守り続けてくださっていたのでした。



神様は、お姫様に聞こえるように音を出しました。


人間の声では出せないような高い高い音でした。


ある時にはその音は高い鈴の音のようにも聞こえました。


お姫様はその音が聞こえるときには自分は清らかで良いお心を開いているのだなとわかりました。


意地悪なお友達と遊んでいるときも、イジイジといじけているときも、この音が聞こえてきたときは、神様が「お姫様そのお心で良いのですよ」という印の音なのでした。


それが神様からの伝言なのでした。


お姫様の心に、神様がすごく喜ぶと、その音はよりいっそう高い綺麗な音になりました。



お付きの者は、ハラハラしながらも神様に見守られているそんなお姫様を大事にしようと思うのでした。



ところがです。


隣の国のスパイが、このお姫様のことを代官に伝えました。


代官は、「神様と交流しているなんて許せない、そのお姫様を奈落の底へ陥れてしまおうぞ」と考え始めました。


その隣の国の代官たちは、まずお姫様に聞こえる音を、偽の音に変えようと試みました。


あれこれあれこれと技術を使い、音を作りました。


そして、かのお姫様に聞かせました。



けれどもその音は、神様の音とは全然違う汚い音でした。


お姫様にはその違いがはっきりと分かりました。



しかし、このままでは許さない代官たち、技術の腕を上げ、とうとう神様の音に近い音まで出せるようになってしまいました。



お姫様は、神様の伝言の音を頼りに生きていたのに、そのような偽の音に惑わされて、生きる支えが危うくなりました。



けれどお姫様はじっと音に耳を傾けるようになりました。


常に耳を澄まし、目を懲らすといった様子で、生きていくようになりました。



そのうちにお姫様には、偽の音と、神様からの伝言の音を聞き分けられるようになりました。


お姫様はもう一人前の大人になりました。




そして、結婚相手も自分の確かな目と耳と心で選び、良き伴侶と共に生きていけるようになりました。


結婚してからも、神様からの伝言はあります。

隣の国の代官たちもまだまだ悪さを続けています。



けれど今度は一人ではありません。


ともに助け合って生きていける伴侶がいます。




お姫様は、今日も耳を澄まし、目を懲らして、自分の心と神様の音を聞きます。


代官たちの偽の音に惑わされないように。


おしまい


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