ヨリシロ
ヨリシロとは「依り代」と書きます。神様が降臨されるところという意味です。
そんなお話を書いてみました。
古い古い、昔のお話です。
ある国のお姫様がお年頃になりました。
このお姫様には小さな頃から心に決めていたお人がおりました。
遠くに住んでいる方でしたが、小さな頃から二人はお空でお話をしていつも助け合って生きていました。
けれど、二人は大人になるとともにお空でのお話もなくなり、それぞれの人生を歩むことになったのでした。
お姫様は若かりし人生とはいえ、辛いことも、苦しみも経験し、心も体も成長していきました。またお姫様というお立場にとってとても重要な「魂の修行」も一段一段成し遂げなくてはなりませんでした。
「魂の修行」。
それはお姫様の魂が何よりも清らかで、透き通るように澄んだ「鏡」のようであり続けるための修行でした。これはお空でお話をする民族のお姫様である以上、必ず「鏡」の魂でいなければならないという掟がありました。
またある意味では、魂が「鏡」でなければお姫様としては認められないという厳しい掟でした。
どんなことがあっても濁らず、常に周りの人の心まで写してしまうようなそんな澄み渡った清らかな「鏡」であるのがお姫様でした。
その結婚相手として選ばれる王子様も、依り代と呼ばれる人ではなくてはなりません。
ヨリシロとは神様が降りてこられるところを意味します。
お姫様が小さな頃から大好きな、あのお空でお話をしていたあの子もヨリシロでした。
お姫様がお年頃になり、魂の修行もでき、お姫様の結婚の段取りが着々と進んでいた頃、ヨリシロのあの子も結婚の支度を始めました。
しかし、お姫様とヨリシロの結婚の邪魔を企てるもの、ヨリシロを殺してしまおうと考えるものなど、悪い人も大勢いました。
けれどお姫様の一途な願いが叶って、二人はようやく結婚をすることができました。
結婚をしたお姫様の身の回りでは、不思議なことがいっぱい起きました。
ヨリシロの妻としての新たな魂の修行にも打ち勝たなければなりませんでした。
荒ぶれた魂の修行中、お姫様は御霊で子供を何人も作る技も身につけました。
そしてなんと、その荒ぶれた生活の中で、ある夜、とうとう神様が夫であるヨリシロに降臨されました。
神様はヨリシロを通して、結婚生活の行方と、お姫様の周りの人々にしてもらわなければならない儀式の方法を語りました。そうすることでその荒ぶれた生活は終焉し、お姫様とヨリシロの生活は平和になっていくだろうということでした。
神様の降臨は3回ありました。
お姫様の生きる支えとなりました。
それから結婚生活も数年して、やっと落ち着いた頃、お姫様はご縁続きの犬を飼うことにしました。
すると、その犬にも犬神様の霊がおりました。
お姫様はいつも、自分の魂が澄み渡っていて他の人が映るかどうか念入りに見つめました。
自分が鏡であれば、夫は依り代でいてくれる。
それがお姫様の生きる力になりました。
お姫様は空に言いました。
「私がこの地球にまた生まれてくることがあれば、必ずこの夫もまた生まれてください。私の夫となる人は、いついかなる時もこのヨリシロの夫ただ一人です。あなた、お願いしますね」と。
ヨリシロの夫は応えました。
「わかっているよ。必ず、必ず、君のために生まれるよ」と。
傍らで眠っていた犬も空に言いました。
「私も必ず」と。
おしまい