双ヶ丘の秘密
宮中の不思議なお話
昔々、そのまた昔、何千年も前のお話です。
その時代、宮中には天上の人と呼ばれる方々がお住まいでした。
天上の方々は一族をたいそう大事にしておりました。
天上の人達の一日の生活は、外からは全く見ることは出来ず、信頼のあるお付きの者でさえも、その生活はどのようなものなのか、知ることは出来ませんでした。
しかし、時折、六弦のお琴の響きが聞こえてきたり、囲碁を打つ音が聞こえてきました。
また、時々天から、この方々の幸せそうな笑い声と話し声が聞こえてきました。世の人々はそんなお声を聞きながら心を和ませておりました。
お付きの者も、その琴の音や囲碁を打つ音、そして天の声を聞いて天上の方々の様子を察するようにしていました。
天上の人々が穏やかに幸せに暮らせた時代には、世の中全体が平穏で豊かで繁栄しておりました。
そんな穏やかで平和な時代がありました。
ところがです、ある時から、お付きの中に悪さを考えるような悪党者が忍び込むようになりました。
悪いお付き人達は、それ以上は入ってはいけないと言われているお部屋にまで、どんどん忍び込み、天上の方々の様子を見て、悪さをし始めました。
愛し合っている夫婦を喧嘩させて別れさせたり、幼子をいじめたり、とそれはそれはひどい悪さの数々でした。
天上の方々は、疲れ果て、病気になってしまったり、亡くなられる方もおりました。
そんな時、天上の最後に残されたただ一組の夫婦が、一緒にいられるのもこれまでかと思いながらも必死で寄り添いあっていました。
夫婦は悪党どもに邪魔されて、まだ子供が出来ておりませんでした。しかし二人の愛は果てしなく続き、寄り添い合うことが何よりの幸せとなっていました。
そんなある日のことでした。
夫婦はいつものように寄り添い合っていました。
すると、どうでしょう。
手と手をつなぎ合わせただけで、妻のお腹に子供が宿りました。
またある日、今度は身にまとっている布と布を合わせただけでも、またお子が宿りました。
夫婦はびっくりしました。
しかし、妻のお腹に宿った命はこう言いました。
「この方のお腹に宿っていられるのも、あとわずかな時です。悪党どもが悪さをして子供をお腹の中で殺そうとするでしょう。それで私たちは代わりになるお腹へ移ります。必ず元気に生まれますので、あなた方夫婦は心配されぬように。」と。
すると、妻のお腹は急にぺちゃんこに引っ込んで、宿っていた命は消えました。
夫婦は驚きながらも、そのまま寄り添うことを必死で続けました。
幾日も幾日も、愛溢れる心が途絶えないようにと寄り添っていました。
その頃、隣町のお寺では、急に大きくなったお腹を抱えて赤ちゃんを産みに来る人で賑わっていました。
赤ちゃんは38人生まれました。
男の子と女の子は一組ずつになっていました。
生まれた時から、結婚相手を選ばなくても良いようにと、神様が一組ずつにしてくださいました。
お顔の全く似ていない双子の子供のカップルが19組もできました。
この知らせを聞いた天上の夫婦は、安堵しました。
夫婦は双子のカップルが生まれた土地を双ヶ丘と名付け、そこに山荘を建てました。
双子のカップル達はそこで忍びながら成長していったと言うことです。
お ・ し ・ ま・ い