第55話「あんなに嫌だったのに……」
朝。
俺。
起きる。
◇
【測量進捗率:54%】
◇
「…………」
五十四。
◇
昨日。
五十。
超えた。
◇
だから。
もう。
怖くない。
◇
増えろ。
◇
どんどん。
増えろ。
◇
できれば。
今日。
百。
◇
「先生」
門倉隼太。
「何?」
「参りましょう」
「うん」
俺。
立つ。
◇
今日。
松前。
◇
そこまで。
行けば。
海。
渡る。
◇
本州。
◇
そして。
江戸。
◇
まだ。
遠い。
◇
知ってる。
◇
もう。
学んだ。
◇
だから。
言わない。
◇
終わり。
なんて。
絶対。
言わない。
◇
俺。
成長。
した。
◇
出発。
◇
歩く。
測る。
記録。
◇
また。
歩く。
◇
いつもの。
仕事。
◇
海。
見る。
◇
俺。
ちょっと。
考える。
◇
蝦夷地。
来てから。
どれだけ。
海。
見た?
◇
ずっと。
海岸。
測って。
歩いて。
◇
海。
見ながら。
飯。
食って。
◇
海。
見ながら。
休んで。
◇
牡蠣。
食って。
◇
「…………」
また。
牡蠣。
出てきた。
◇
強い。
◇
俺の。
蝦夷地の。
思い出。
◇
牡蠣。
かなり。
上位。
◇
嫌だ。
◇
もっと。
ある。
◇
西別。
◇
厚岸。
◇
星。
◇
雨。
◇
測量。
◇
みんな。
◇
「…………」
そう。
◇
みんな。
◇
俺。
前を見る。
◇
宗平。
◇
門倉。
◇
測量隊。
◇
最初。
名前。
覚える。
余裕すら。
なかった。
◇
今。
普通に。
一緒に。
歩いてる。
◇
「先生」
門倉。
振り返る。
「遅れておりますぞ」
「今行く!」
◇
俺。
追う。
◇
歩く。
◇
さらに。
測る。
◇
【測量進捗率:55%】
◇
「よし」
◇
進む。
◇
【56%】
◇
「いいぞ」
◇
もう。
数字。
怖くない。
◇
むしろ。
楽しい。
◇
一%。
増える。
◇
それだけ。
俺たち。
進んだ。
◇
それが。
分かる。
◇
そして。
しばらく。
して。
◇
門倉。
前を見る。
◇
「先生」
「何?」
◇
「松前でございます」
◇
俺。
前を見る。
◇
「…………」
◇
松前。
◇
着いた。
◇
俺。
何も。
言わない。
◇
門倉。
俺を見る。
◇
「先生?」
「いや」
◇
待ってる。
◇
「何をでしょう?」
「ちょっと」
◇
待つ。
◇
出る。
はず。
◇
来い。
◇
来い。
◇
視界。
光る。
◇
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:58%】
◇
「…………」
◇
五十八。
◇
俺。
頷く。
◇
「よし」
◇
門倉。
「何がでしょう?」
「ちゃんと進んだ」
◇
五十八。
◇
まだ。
全然。
百じゃない。
◇
でも。
いい。
◇
松前。
来た。
◇
そして。
ここから。
海。
渡る。
◇
俺。
振り返る。
◇
蝦夷地。
◇
「…………」
◇
あれ?
◇
急に。
変な。
感じ。
◇
ここ。
離れる。
◇
そう。
思ったら。
◇
ちょっと。
寂しい。
◇
「…………」
何で?
◇
俺。
あんなに。
帰りたかった。
◇
寒い。
◇
遠い。
◇
歩きたくない。
◇
江戸。
帰りたい。
◇
ずっと。
言ってた。
◇
なのに。
◇
いざ。
離れる。
思ったら。
◇
俺。
後ろ。
見てる。
◇
「先生」
「何?」
「どうされました?」
◇
俺。
答えない。
◇
蝦夷地。
見る。
◇
あっち。
ずっと。
ずっと。
先。
◇
西別。
◇
俺。
行った。
◇
自分の。
足で。
◇
測った。
◇
戻った。
◇
地図。
作るため。
◇
「…………」
◇
俺。
本当に。
歩いたんだな。
◇
今さら。
思う。
◇
門倉。
隣。
来る。
◇
何も。
言わない。
◇
それで。
いい。
◇
俺。
しばらく。
見る。
◇
そして。
息。
吐く。
◇
「よし」
◇
前。
向く。
◇
「帰ろう」
門倉。
頷く。
◇
「はい」
◇
帰る。
◇
今度こそ。
◇
本州。
◇
江戸。
◇
まだ。
遠い。
◇
でも。
帰る。
◇
その日の。
測量。
終える。
◇
記録。
確認。
◇
間違い。
ない。
◇
俺。
地図。
見る。
◇
線。
ある。
◇
俺たちが。
歩いた。
線。
◇
「…………」
◇
すごい。
◇
初めて。
ちゃんと。
思う。
◇
これ。
俺たちが。
作った。
◇
俺。
指。
置く。
◇
ここ。
歩いた。
◇
ここも。
◇
ここも。
◇
全部。
覚えてる。
◇
「先生」
門倉。
「はい」
◇
俺。
間違えた。
◇
門倉。
少し。
笑う。
◇
「お疲れでございますか?」
「違う」
◇
恥ずかしい。
◇
「何?」
「蝦夷地での測量も、一つの区切りでございますな」
◇
俺。
止まる。
◇
区切り。
◇
そう。
◇
終わり。
じゃない。
◇
区切り。
◇
俺。
その言葉。
好き。
◇
「うん」
◇
頷く。
◇
その夜。
俺。
横になる。
◇
明日。
海。
渡る。
◇
蝦夷地。
離れる。
◇
俺。
目。
閉じる。
◇
いろんな。
景色。
出る。
◇
最初。
何も。
分からなかった。
◇
歩数。
数えるだけで。
必死。
◇
夜。
星。
見て。
◇
また。
歩いて。
◇
雨。
降って。
◇
牡蠣。
◇
「…………」
◇
お前。
本当に。
出てくるな。
◇
俺。
笑う。
◇
そして。
最後。
西別。
◇
あそこ。
まで。
行った。
◇
俺。
◇
普通の。
四十歳。
だった。
◇
それが。
伊能忠敬。
五十五歳。
身体。
借りて。
◇
蝦夷地。
歩いた。
◇
「…………」
◇
俺。
結構。
やったな。
◇
誰も。
いない。
◇
だから。
言う。
◇
「よくやった」
◇
自分に。
◇
初めて。
言った。
◇
ウインドウ。
出る。
◇
【測量進捗率:58%】
◇
「…………」
◇
今。
いいところ。
だったのに。
◇
「分かってるよ」
◇
まだ。
四十二%。
◇
残ってる。
◇
でも。
今日は。
いい。
◇
明日。
海。
渡る。
◇
俺。
目。
閉じる。
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
中身。
浩哉。
四十歳。
◇
第一次測量。
松前。
◇
俺は。
今日。
蝦夷地を。
測り終えた。
◇
そして。
初めて。
◇
離れるのが。
少しだけ。
寂しい。




