7 3/24 春の新芽(ロッタ)
冬の森は、まだ少しだけ寒かった。
ロッタは両手をこすりながら歩いていた。
「寒い……寒い。……もう春になったんじゃないの?」
背負った薪がカタカタと揺れる。
吐く息は、まだ白い。
「もう! 春って聞いたのに!」
ロッタは地面を軽く蹴っ飛ばす。
そのときだった。
「あれ……?」
足を止める。
しゃがみ込む。
枯れ草の間に、小さな緑が見えた。
ロッタは目を丸くした。
「……え?」
指でそっと触れる。
やわらかい。
小さなちいさな葉。
「嘘……」
ロッタの顔が、ぱあっと明るくなる。
「芽だ……!」
新芽だ。
思わず声がはずむ。
「芽が出たぞ!」
森の中にロッタの声が響く。
周囲を見回す。
「あっ……こっちにも」
少し先にも、小さな緑。
「あっ、あっ、あっ!」
ロッタは薪を地面におろして、駆け寄る。
「すごい……」
しゃがむ。
春の訪れが感じられた。
「むへへ……」
うれしくて、なんだか笑ってしまう。
春が来たんだと、ロッタは両手で頬を押さえる。
「うわあ……!」
空を見上げる。
「ねぇ! 見てる!? 春が来たんだよ」
だれもいない森に向かって叫ぶ。
どこかでは、その声を鳥が聞いているかもしれない。
風が少しだけ、やわらかかった。
ロッタが小さな芽に顔を近づける。
「がんばったんだね……」
そっと言う。
寒かっただろうに。
指でそっと土を寄せた。
「えらいなぁ……」
ロッタの目が少しうるんだ。
「……私もがんばんなきゃ」
そう言って立ち上がる。
薪を背負う。
重いし、町までは遠いが、さっきより少しだけ背中が軽く感じられた。
「今日もとっても幸せ」
ロッタの足取りは軽い。
森の中に、小さな春がいくつも芽吹いていることを、ロッタはすでに知っていた。
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