6 8/23 森で見つけたベリー(アンジェリカ)
アンジェリカは今日も森に入っていた。
彼女は薬師見習いだ。
森での仕事は薬草の採集。
だが、好奇心旺盛なアンジェリカは、ただ薬草を採集するだけじゃ満足できない。
「うーん……」
しゃがみこんで草をかき分けるアンジェリカ。
腕を組んでうなっている。
「全然、見つからないなぁ」
朝から森を歩き回っているというのに。
いつまで経っても、目あての薬草が全く見つからない。
「おっかしいなぁ。……昨日はこの辺って言っていたのに……」
ふうぅと、小さくため息をつく。
「なんだかもう、面倒くさくなっちゃったな」
ごろん。
その場で寝転がる。
服が汚れるのは気にしない。
元々、森の中を駆け回っているので、服は土や枯葉で汚れている。
寝転がってなんともなしに付近を見渡す。
葉っぱの影に、赤いものがちらっと見えた。
「……ん? なんだろう」
起きあがって、アンジェリカは顔を近づける。
「あれ?」
枝の下に、小さな実がいくつもぶら下がっていた。
赤くて丸い。
つやつやとしている。
「ハームベリーだ」
アンジェリカの顔が、ぱあっと明るくなる。
「やったね、ラッキー!」
思わず、声が大きくなる。
きょろきょろと、アンジェリカは周囲を見回した。
人の気配なし。
だれもいない。
「……。ちょっとだけなら」
そっと一粒つまむ。
ハームベリーは甘みの強い果実だ。
だが、枝から離れると、急速に甘みを失ってしまう。
森でしか食べられない極上のおやつだった。
「いただきまーす」
ぱくり。
赤い実を噛んだ瞬間――アンジェリカの目は大きく見開かれていた。
「甘~っい!」
あまりの甘みに、ついつい叫んでしまう。
これまでハームベリーは、枝ごと収穫されたものしか食べたことがない。
それは味の落ちたハームベリーだった。
「なにこれ! 新鮮なのって、こんなにおいしかったんだ!」
もう一粒。
ぱくり。
「すご……」
とろけたような表情で、アンジェリカがつぶやく。
お昼ご飯がこれからなのも忘れて、夢中になって食べてしまう。
ぱくぱくぱく……。
「最ッ高……」
空を見上げる。
木漏れ日が風で揺れていた。
「今日もとっても幸せ」
アンジェリカは笑った。
「さあて、もうひと頑張りしますか……」
最後にハームベリーをもう一粒ほおばる。
アンジェリカは再び薬草を探しはじめていた。
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