4 6/1 久しぶりの再会(ガルド)
その日は一日中蒸し暑かった。
「……」
ガルドは町の門番だ。
若い頃は冒険者として様々な場所を訪れた。その経験があったからこそ、ガルドは門番として登用されたのだ。
ガルドの仕事は朝早くに町の門を開けること。開門中、怪しげな人間を町に入れないこと。そして、3つめが今からやろうとしていることだった。
すなわち、日暮れとともに門を閉めることだ。
「……今日も何事もなかったな」
まもなく、完全に日が沈む。
いつものように椅子に腰掛けていたガルドが、門を閉めようと立ちあがる。視界が上がったことで、ガルドは遠くにいる旅人の姿を認めた。
旅人は1人。
杖をついた老人だ。
蒸し暑いというのに、ご苦労にもマントを羽織っている。
旅人はゆっくりとした足取りで、町のほうへと近づいて来ているようだった。
立ちあがったガルドが、旅人に向かって大声を発する。
「おい! もう門を閉める時間だぞ」
思いのほか健脚のようで、老人はすでに表情を確かめられる距離にいた。
旅人が顔を上げる。
そして、目を細めた。
「おっと? その声は……」
訳が分からず、ガルドは眉をひそめた。
ペテン師のたぐいだろうか。
だが、それを見た老人が笑う。
「おいおい、儂を忘れちまったのか? ひどいなあ、ガルド」
ガルドの目が見開かれる。
旅人に心あたりがあったからだ。
「……。……まさか」
それには応えず、代わりに旅人は両手を広げた。
「久しぶりだなあ。俺だよ」
「バスコーム……」
たっぷりと数秒は固まったのち、ガルドが叫ぶ。
「バスコォオオオム!」
門の前に響く大音声。
通りかかった町人が驚くのも気にせず、ガルドはバスコームの胸に飛びこんだ。
そうして、肉の減ってしまった老人の肩を激しく掴む。
「おいおい、よせよ。痛いだろう?」
「お前、生きていたのか!?」
バスコームは笑った。
「勝手に殺してくれるなよ」
ガルドは歓喜に打ち震えていた。
「だって、お前……30年前に」
バスコームはガルドと同じく元冒険者で、2人は往時パーティーを組んでいた。だが、あるクエストに失敗し、それ以来バスコームは死んだものとばかり思っていたのだ。
「儂もてっきり、あの時死ぬんだと覚悟したんだがな……。どういうわけだか、このざまよ」
「どうして、もっと早くに来てくれなかったんだ。この30年、いったい俺がどれほどお前のことを心配したと」
「すまんな、帰るのが遅くなった」
ガルドは目頭を指で押さえる。
溢れそうになる涙は、それでも目じりの端からこぼれていた。
「遅いなんてもんじゃねえだろ!」
「全くだ。記憶を失っていてな。儂も、儂のことを思い出したのは、ほんの2年前なんだ」
バスコームのほうも、戦友との再会にこみ上げて来るものがあるようで、心なしか瞳が潤んでいるように見えた。
そんな2人を見て、付近を通る町人たちはくすくすと笑っていた。
涙をこらえようとガルドが空を見上げる。すでにすっかりと日は落ちていた。
「とにかく、お前にまた会えて嬉しいよ」
「儂もだ。今はここで働いてるのか?」
「ああ、門番をやらせてもらっている」
「そうか。お前は昔からどんな時でも冷静だったからな。有事にも落ち着いて対応できるだろう」
昔の戦友に褒められ、照れたガルドはそっぽを向いた。
「よせよ、がらでもねえ」
しばしの沈黙。
「もう仕事はしまいか?」
「ああ、そうだ。再会を祝して、どうだ一杯」
「もちろんだ。付き合わせてくれ。最高にビールの旨いギルドを知っているんだ」
にやりとガルドが笑う。
「そいつはいいな」
「今夜は飲み明かそう。お前と話したいことがたくさんあるだ」
「俺もだよ、バスコーム」
夜の町に、2人の笑い声が響いた。
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