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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第九十一話 いつもこうだと助かるご都合主義

「急な訪問で申し訳ありませぬクリューゲル様。そちらに光翼の魔王、ウェスティリア様がいらっしゃるとお伺いしたもので、是非国王がお会いしたいと……」


 光翼の魔王であるティリアが荷物検査の時に知られているのは分かっていたが、俺が思うより早く国王側が動いた。

 そう、翌朝早々に城からの使者がクリューゲルの屋敷へやってきたのだ。

 まあ一緒のところを見られているのでここに来るのは間違いではない。

 それに城へティリアが出向いたとしても、バウムさんの仲間だと警戒されて門前払いされるくらいまでは考えていた。

 なので、向こうから会ってくれるなら願っても無いチャンス――


 ――なんだけど、こちらのことをどこまで掴んでいるかで吉と凶が決まる。

 少なくとも俺は姿を隠しておく必要があるので、見えないところからやりとりだけ聞いておく。


「……確かにいらっしゃるが、まだお休みになられている。急に来られてはウェスティリア様も驚かれるだろう、話はしておくので一度引き取ってはいただけないだろうか?」


 クリューゲルがそう答えると、人の好い笑みを浮かべた男は額の汗を拭く仕草をしながら、「一つ」と人差し指を立てる。


「そういうことならば……と、言いたいところですが、手ぶらで帰ってはなにを言われるか分かりません。失礼だとは思いますが、準備ができるまで待たせていただくことは可能でしょうか……?」

「……今の国王なら死罪くらはやりかねんか。分かった。こっちで待っていてくれ」


 クリューゲルが昨日、俺達と話しあいをした応接室へ案内する。男の後ろには槍を携えた騎士が二人ついてきているのが見えた。


「ご丁寧なことで……とりあえず魔王相手に戦いを起こす気はないと思いたいが……」


 男達が応接室へ入った後、俺は入れ違いで外に出る。

 少し手順は変わったけどやることは変わらない。俺は手早く『速』をフルにしておこうとステータスを開く。


「デブリンを倒したら一気にレベル上がってたんだよな……」


 【ジュミョウ=カケル】


 レベル:10


 HP:1930


 MP:19220

 

 力:38


 速:35


 知:23


 体:34


 魔:52


 運:29



 【スキル】


 回復魔王(ヒール ハイヒール)


 魔法:炎弾 風刃 氷の楔 地獄の劫火


 剣技:斬岩剣


 能力値上昇率アップ 全魔法適正 全武器適性 ステータスパラメータ移動 全世界の言語習得:読み書き


 【特殊】


 寿命:99,999,687年


 魔王の慈悲:相手に自らの寿命を与えて回復させることができる。


 生命の終焉:触れた相手の寿命を吸い取る事ができる。スキルが強力になると一瞬で絶命させる事も可能


 ナルレア:レベルアップやスキルを覚えた際、音声で色々と知らせてくれる。(音声説明アシストとTIPSが合成されました)


 追憶の味:自身が飲み食いした料理について限りなく再現可能になり、食材を見極めることもできる。


 運命の天秤:死ぬ運命にあった人間を助けようとすると、自身の寿命が減る代わりに死の運命を傾ける事が出来る。ただし#$%&――

 

 今のステータスはこんな感じで、クラーケンを倒した時に一レベル上がり、デブリンを倒した時にはなんと三も上がった。で、現在はレベル十だ。

 スキルは相変わらずだけど、魔法と剣技が別に振り分けられていた。


 <私が整理しました>


 と、ナルレアが言う。HPとMPがおかしい数値な気がしたけど、これで正常らしい。

 そしてチェルを救ったことで微妙に寿命が減っている。末尾が八百二十四だったはずだから百三十八年ほど減ったのか。

 チェルめ、長生きだな……バウムさんの分は減っていないところを見ると、ハイヒールで回復したのが良かったのか?


「そういえば……」


 ふと、ステータスを見て気付いたことがある。『回復魔王(ヒール ハイヒール)』だ。この二つは何で魔法に分類されていないんだ?


 <……カケル様、そろそろ行きませんと>

 「ん? ああ、そうだな」


 ナルレアに言われて庭を見ると、ちょうどティリア達が出てくるところだった。

 サクっと『速』を六十にしてから一気に駆け出す。


「うわ!? 速っ!?」

<百まで行くと残像が残りますよ>

「マジでか!?」

<多分!>


 嘘かよ!? 

 家屋の間などへ移動しつつティリア達を追う。城が近くなってきたので、俺は見張りの居ない場所を探し、城壁を飛び越えて城の庭へと着地する。


「さて、ここからが本番だな……こういう時、姿を消すスキルとかあると便利なんだけどなあ」


 草むらに隠れて兵士や騎士をやり過ごしていると、ナルレアがおもむろに言葉を発する。


<作られては?>

「はあ?」

<『知』が二十を越えてましたよね? 魔法かスキルのどちらか一つが作れますよ。次は三十を越えたらまた一つできます>

「そうなのか? ご都合主義というかなんというか……一般の冒険者でもそうなのか?」

<レベルを上げたのはカケル様自身の努力ですから、運が良かったと思えば。一般の方は作ることはできませんね。ジョブのスキルを覚えるくらいなので、カケル様独自のステータスとお考えください。さ、カケル様の思う潜入スキルを思い描いてください>


 ……やっぱりティリアに『真実の水晶』を使ってもらうべきか? 

 今更だけどやっぱりちょっとオーバーステータスな気がする。アウロラの思惑は知っておいた方がいいかもしれないな……


 とりあえずこの件は保留にして、スキルを考える。

 一番いいのはやはり姿が見えないというのが理想だろう。今回の場合に限らず、堂々と歩けるのが潜入スキルとしては優秀だな。


「よし、決めた。相手の認識を逸らすスキルにしよう」

<かしこまりました。名前はどうしますか? もぎたてスイーツとかでいいですか?>

「なんでだよ!? しかもセンスないなお前!」


 んー、名前……名前か……。


「『存在の不可視』ってのはどうだ?」

<問題ありません>


 ナルレアが問題ないと口にした瞬間、レベルアップの時に似た音が聞こえてきたのでステータスを確認する。


 スキル:存在の不可視 一度使用すると、他者から一切認知されなくなり、二十四時間効果が持続する。ただし状況を問わず『誰かに触れる』と解除される。

 一度効果が切れると、三十分は使用不可。


 なるほど、いいスキルだ。

 デメリットもあるけど、触れなければ二十四時間は堂々と城を歩けるってことだな。

 気をつけないといけないのは、誰かに触れるのが自分からでも相手から偶然ぶつかってもダメだと言うことか。


「『存在の不可視』」


 自分では分からないが、身体をなにかが覆った感覚があった。

 これで大丈夫なんだろうか? そこへおあつらえむきに兵士が一人、あくびをしながら歩いてくる。


「どきどきするな……」

<まさか……恋?>


 ティリア達がいなくなった途端饒舌になるナルレアをとりあえず無視して、兵士が通る道の横に突っ立ってみる。


「……ふあ……眠……朝っぱらから魔王を連れて来るとか面倒なことだな……」


 黙って視線を送るがまったく俺には気付かず、素通りしていく兵士。おお、これはいいな。


<覗きをし放題ですね!>

「うるさいな!?」

「誰だ!?」

「っと……!」


 俺は口を手で押さえて冷や汗を一滴たらす。

 兵士は槍を構えてきょろきょろするが俺は見えていないようだ。声は聞こえるのか、注意しないといけないな。


「……まだ寝ぼけてるのかね、俺……さ、見回り見回りっと……」


 のんきにあくびをしながらまた歩いていく。


「危なかったな……ナルレア、少し黙ってろよ?」

<申し訳ありません>


 反省しているのか分からないシレっとした声で謝罪をしてきた。まあいいかと俺もそれ以上は追及しなかった。それよりも早いとこ城内へ入らないとな。


 ◆ ◇ ◆


 城内:執務室


「光翼の魔王が来るよ」

「え? なんでまた? あたし達のことバレたの? まさか裏切りエルフさん……?」

「俺は知らんぞ。どういうことか説明しろ」


 すると最初に声を発した男がニヤリと笑い、話はじめる。


「町に入ったっていう報告があってね。興味があるから呼んだんだよ。僕たちの邪魔をするのかどうか確認をしないとね」

「邪魔をするなら始末する、か? しかし魔王相手に我等では太刀打ちできんだろう」


 大きな体躯をしたローブの男が腕を組み、ため息を吐きながら意見する。他の者もそれに賛同して頷いた。


「まあ、そうだね。僕も勝てるとは思わないよ。でも戦うのは僕たちじゃない。そうだろ?」

「……国を使ってやるのか? いや、そんなことをしなくても追い返して封印を壊せばいいはずだ。私は反対だ」

「あたしもよ。そんなことをしたら危険が危ないじゃない!」

「それに魔王を倒す戦力はエルフ達に向けるはずだろ? 関係ない魔王相手に戦力を消費しちゃまずいんじゃないの?」

「ふふ、それもそうだね。まあ、僕はやる時はやるけどね」

「ん?」


 後半の方は小さくて聞き取れなかった。仲間が眉をひそめていると、執務室の扉がノックされる。


「……マ、マオウ、ガ、トウチャク、シマ、シタ……」

「早かったね。向こうにもなにか考えがあるのかな?」

「風斬の魔王に頼まれた、とかかな。それじゃ、光翼の魔王様を見に行こうか」


 ローブの集団はそれぞれフードを被り直し、部屋から出て行くのだった。

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