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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第七十五話 ひとまずの別れ?

 ボロボロの船はゆっくりと接舷し、俺達は無事港へと到着した。

 地面の固さを感じていると、乗船していた他の人達と一緒に集められ話を聞くことになった。


「それでは急ピッチで修理を進めます。一週間もあれば出航できると思うので、それまでにはここへ戻ってきてください」


 そう言って順番に乗船証明チケットを手渡しされた。

 そのまま別のお客さんへ対応を行っていた。これが無いと乗せてくれないらしいので失くさないようカバンへとしまう。


「さて、どうするかな……とりあえず宿探しからか。お前達はどうするんだ? 俺は船が出るまでここで観光でもしておくよ」

「あ、そうか。忘れてたけど、同行してるわけじゃないんだもんね。ボク達は風斬の魔王様へ会いに行ってくるからここでお別れだね」


 ルルカが思い出したかのように言う。

 もう少し寂しがって欲しいものだが、それはそれで面倒なので言わないでおく。


「ここから馬車で二日くらいですし、船に乗るためすぐ戻ってきますよ。その時はまた一緒に行きましょう」

「ああ、どうせ行き先は一緒だしな」


 ティリアも俺が同行しないことについて特に言及がないところをみると、そのつもりはないみたいで安心する。

 後、全然関係ないが馬車も乗せていたらしい。さっき降りるとき豪華な馬車を俺に見せてリファがドヤ顔で下船していた。


「着いて来てくれないのか……」


 リファが残念そうに言い、目に見えて肩を落とす。こいつは感情がハッキリしていて分かりやすいのがいいな。


「そうだな。アウロラが俺をここに寄越した本当の理由は気になるけど、あいつの言い分としては『好きに生きていい』だったから、気にしないで生きていくことにするつもりだ……あのデヴァイン教とやらを見る限り、メリーヌ師匠も気になるしな」


 総本山へ向かったメリーヌ師匠が今一番の懸念点だ。アウロラを称えているようだけどどうにも胡散臭い。フエーゴに行った後はそっちへ向かうつもりだったりする。

 そんなことを考えているとふいに空が翳った。上を見上げるとゲームで同じみな姿が目に入った。


「ん? ありゃ……ドラゴンか!?」


 空を数匹のドラゴンが飛んでいた。あれ、危ないんじゃないか?


「ああ、あれは#竜の騎士__ドラグーン__#ですね。この国は森や林、それと平野がきれいに分散している地形なので、上空からの攻撃や偵察が有効なんです。あの高さを狙える武器もありませんしね。あれはワイバーンなのでドラゴンの親戚みたいな感じですけど」


 竜の騎士……ということはやっぱり武器は槍なのだろうか? 

 少し興味があるけど、ここでノコノコと着いて行ったらおそらくなにかに巻き込まれることになるであろうと勘が告げていた。


「ふ、ふーん。まあ俺には関係ないな」

「……気になるんだ」


 ルルカに言われてドキッとする。顔に出ていただろうか。


「そんなことない」

「カケルの武器は槍だしな、竜の騎士もそうだぞ」


 やっぱりかー!

 なぜか嬉しそうに言うリファに対し、俺はくるりと海岸へ向いて背中越しに手を振る。


「ほら、早く行けよ。一週間なんてすぐ来るぞ」

「……そうですね、行きましょうリファ、ルルカ」

「ちぇー」

「残念だ……」


 ティリアが二人を窘めてくれたようで、気配が遠ざかっていくのを背中で感じる。

 また一週間後に会うことになるけど、このままメリーヌ師匠を追う船に乗ってもいいか? 

 ま、その辺りは後で考えるとして、俺はカバンからずるりとクラーケンの足を取り出した。

 あの時、海に全部捨てている中、どさくさに紛れて一本カバンに収納しておいたのだ。


「……食えるだろうか……」


 でかい。

 それは間違いないが、味はどうだろう……砂浜に行って俺は火を熾すことにした。


「≪炎弾≫」


 適当に木を集めて少し切ったクラーケンの足を焼く。そろそろ頃合いだと思い、一切れ口に運ぶと……


「おええええええ……」


 恐ろしく臭い!?

 これはアンモニア臭か!? それにめちゃくちゃ固いし、しょっぱい!


「ぐは……!? あれか……ダイオウイカ、みたいなものか……」


 するとナルレアが話しかけてきた。


<そのようですね、カケル様はダイオウイカを食したことがありませんからレシピはありませんね>


 これは自分で調理法を考えろということか……スルメなら食ったことあるが、どうもそれとは一線を画すらしく、まったく閃かなかった。


「現時点をもってクラーケンの足を破棄! これより帰還する!」

<……>


 そこはノッてくれよ!? 

 一人で叫んでいたのが気恥ずかしくなり、俺はクラーケンの足をその場に捨ててその場を立ち去ろうと振り返る。


 するととそこに――



「残念でしたねお嬢様。美味しくないそうです」

「食べごたえはありそうでしたけど……残念です」

「段々臭いがきつくなってきたわね、埋めた方がいいんじゃ?」


 ティリア達が立っており、ガクッと俺は崩れる。


「お前等行ったんじゃなかったのかよ!?」

「いえ、きっとクラーケンの足を食べるのだろうと思って隠れて着いてきました」


 俺が叫ぶと、ティリアが答えてくれた。キリッとした顔で言われてもなあ……後、回収するのを見ていたのか……


「お嬢様の食い意地は今に始まったことじゃないしね。ボクとしてはクラーケンを食べようだなんて人間には会ったことが無いから興味深かったよ? たこ焼きもそうだけど、カケルさんの発想は見ていて面白いかな。さて、それじゃ食べ物にはありつけなかったし、そろそろ本当に行きましょう。夜の森は危ないですから」

「そうなのか? もう夕方近いし、途中に町が無いなら一泊して行った方がいいんじゃないか?」

「あまり猶予はありませんし、朝から出ても一日は野営になるでしょう。それに私達に勝てる人や魔物はそう居ないので大丈夫ですよ」


 ニコッと笑い、今度こそティリア達は優雅に立ち去って行った。食い物を狙っていたくせに。


「……俺も行くか……」


 とりあえず宿を探そう。

 できればユニオンで魔物討伐の依頼でもしてレベルとお金を稼いでおくかな。

 最近まで必ず近くに誰かいたので、なんとなく寂しさを感じながら町中へ向かって歩き出す。


「臭っ!? 何この臭い!?」

「わんわん!」

「あ、ダメよコロちゃんそんなのを口にしたら!?」

「わぉえぇぇぇ……」

「コロちゃーん!? 毒、毒なのね!? 誰の仕業かしら……! 見つけて警備団へ突きだしてやる……!」

「やべっ!?」


 俺は慌てて海岸から駆け出した。

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