表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

51/51

第四十六話 もう一つの敵?

「グランツ本当に強いな……今度は俺とも戦ってくれよ、訓練したい」

「あ、私も見たい~」

「い、いや、はは……」


 対抗戦後、クラスに戻るとグランツはまだクラスメイト達に囲まれていてタジタジの状態だった。

 残りを一人で倒したんだから評価は高いだろうし、食堂無料権が手に入ったので尚のことだろう。


「エリン、不機嫌そう」

「べっつに~」

「グランツは大丈夫ですよ、エリンを大事に想ってくれていますし」

「ちょ、ちょっと……恥ずかしいことを言わないでよ……」

 

 そんな他愛も無い話をしていると、ネーレ先生が教室へ入ってきた。

 今日の締めを行い本日は終了となった。

 外に出るとセバスが馬車の前に立って頭を下げていた。昨日と違って帰宅する生徒は多いが、念のため周囲を警戒しながら馬車へと向かう。

 

「ご苦労様セバス」

「は、ありがたきお言葉! ささ、どうぞ……お前等も早く乗れ」

「へいへい……」


 さて、後はボーデンさんにソシアさんの件を伝えないとな……それにしてもどう言えばいいのか?

 そのまま事実を突きつけてソシアさんが認めるだろうか? 

 それともレリクスの名前を出してみるか? 

 でもレリクスが嫌いということであればソシアさんとしては絶好の機会になるか。

 ……最悪、ご両親にだけ話して決めてもらうのもアリだな。


 俺は外の景色を見ながらボーっと考えていたが、ソシアさんを巡る一連の事件は思わぬ形を迎えることになる。


 ◆ ◇ ◆


 屋敷へと戻った俺達は部屋で着替えた後、俺とグランツは廊下へ出た。トレーネとエリンも出てきたので一緒にリビングへ向かうことにした。

 ソシアさんとはリビングへ入る直前で出会い、ノックをして一緒に中へと入る。


「お父さま、お母様。ただいま戻りました」

「……お、おお、戻ったか……」

「?」


 ――テーブルの上に封筒が一枚。


 漫画とかで見たことのある封蝋というものがしてあったようだが、すでに開封されていた。

 それを母親のアムルさんが顔を青くして見つめていたのでなにかあったのだと悟り、俺からボーデンさんへと尋ねることにした。


「その手紙……なにかあったようですね?」

「カケル君……う、うむ……これを……」


 ボーデンさんに封筒を手渡され中身を見てくれと促され、俺は手紙を取り出した。


「どれ……」

『こんや 12じ だれかが――』

「うおお!」


 反射的にバシイ! と、勢いよく床に手紙を叩きつけた。


「ど、どうしたんですか!?」

「び、びっくりしたじゃない!」

「危なかった……全部読むと呪いがかかる魔法が施されていた……」

「それ絶対嘘でしょ! ボーデン様は読んでるし!?」


 グランツとエリンに大声をあげられながら封筒をもう一度見ると、もう一枚紙が入っていたので、今度はそちらを読んでみる。


「どれ……」

『乙女の月 二十二の日 娘をいただきに参上する』


 と、だけ書かれていた。

 これは――


「誘拐予告……?」


 するとそこでボーデンさんが心底焦ったように俺達へ口を開いた。


「前の時も手紙が届いた後ソシアが行方不明になった……また同じ者の仕業かもしれん! たの……」

『頼む』と言いかけたところで、ソシアさんが青い顔をして叫ぶようにボーデンさんの言葉を遮った。

「ち、違うわ! 私、こんなもの送ってない! ……あ!?」


 ……どうやら今回はソシアさんの狂言ではないみたいだな。

 それと派手に自爆してくれたから自作自演については簡単に話が進みそうで、ボーデンさんが眉を顰めてソシアさんの方を向いて尋ねはじめる。


「……ソシア? 『こんなものを送っていない』とはどういうことだね?」

「……」

「ソシア?」


 青い顔のまま俯いて黙ってしまったソシアさんの代わりに俺がご両親に真実を告げる。


「前の脅迫状、あれはソシアさんの自作自演でした」

「……!?」


 ソシアさんが驚いて俺の方を見た。知っていたのかという表情だ。

 だが、なにも言わないのでそのまま話を続ける。


「レリクス王子が密偵をソシアさんにつけていまして、山の中で身を隠していたことを話してくれました。誰かに襲われたわけでもなく、自分から誘拐事件を起こしていたのです」

「……」

「な、何故そんなことを……?」


 アムルさんがソシアさんの肩に手をおいてガクガクと揺さぶると、目を伏せてからソシアさんが告白を始めた。


「……申し訳ありません……レリクス王子との婚約が嫌で、向こうから破棄してもらえるような状況を望んでやりました……」

「な、なんと!? 何が気に入らんというのだ! 王族だぞ!」


 ボーデンさんが鼻息を荒くして詰め寄ると、ソシアさんがゆっくりと応えていた。


「レリクス王子は普段から穏やかですし、私達にも優しく接してくださいますが……怖いのです」

「怖い?」


 トレーネが首を傾げて相槌を打つと、ソシアさんが頷きながら続ける。


「はい……あの目の奥……暗い情念のようなものを感じるのです。それがなにかまでは分かりませんが、あの方の目を見る度に背中が凍えるの」

「しかし、結婚については楽しみにしておったようだし、積極的に話しておったと思ったが……」

「……面と向かって婚約破棄をこちらから申し出ればそれこそなにをするか分かりません。だから誘拐されてキズモノになったと思ってもらえるかと考えたんです。でも密偵がいたのは誤算でした。なので、今日の対抗戦で顔に傷を作れば王女に相応しくないであろうと行動を起こしました。これもカケルさんによって完璧に治されてしまいましたけど……」


 チラリと俺を見る目はあの時と同じく少しだけ恨みがましい感じがした。そういう事情ならそうなるだろう。

 俺はなにも言わずにそれをじっと見返しているとやがて目を逸らした。


「そ、そんなことまでして……カケル君、ありがとう。私からお礼を言わせてもらう」

「……いえ」


 俺はとりあえず返事をすると、ボーデンさんがソシアさんの頬を叩いた後、ギュッと抱きしめた。


「叩いたのは私達を心配させた分だ……お前がそんなことを考えていたなんて知らなかった……嫌なら辞退してもいいんだ。娘の嫌がることをさせる親はいないんだ」

「お、お父様……お父様の夢を私は……」

「いいんだ。そんな言葉でお前を苦しめていたとは……すまなかった」

「う、うう……」


 泣き崩れるソシアさんにアムルさんも背中からそっと抱きしめて泣き始める。これにて一件落着!

 ……というわけにはいかないので、悪いとは思ったが俺は咳払いをして空気を読まずに打ち破った。


「ゴホン! これでソシアさんの自作自演の件は大丈夫ですかね? となると、次はこの予告状についての話をしたのですが……」

「ん、んん……そうだな。ソシア、心当たりはないか?」


 一旦ソファへ座り直してからボーデンさんが再度尋ねていた。

 ソシアさんは涙をぬぐい、再び青い顔をして俺達に向かって告げる。


「……実は、対抗戦前日、帰りに襲われたあの時。本当は別のクラスの方に誘拐するフリをしてもらう予定でした」

「ああ、それはレリクスに聞いた。俺達がレリクスと話している時にソシアさんが接触していた女生徒だろう?」


 ソシアさんは目を見開いて驚く。一体どこまで知っているのかという感じだ。


「え、ええ、その通りです。ですが、今日そのことについてお礼を言うつもりでしたが、こんなことを言われました……」


『え? そんなはずは……ソシア様に中止になったって聞いたから私はやっていませんけど……?』


 

「どういうこと?」


 エリンが分からないといった感じでソシアさんに聞くと、ソシアさんも首を振ってポツリと呟いた。


「私が聞きたいくらいです。私はその方に話をした後、勘づかれまいと一度も接触しませんでしたし、そんなことを言った覚えもありません」

「気持ち悪い」


 ……どういうことだ? 誰かがソシアさんに成り代わったってことか?


「なら、この誘拐予告も同一犯の可能性が高いですね」

「だな、ソシアさんの計画を逆手に取って本当に攫うつもりだったんだろう。解せないのはわざわざ予告状を送って来たことだ」

「とりあえずソシアの婚約解消は私が陛下へ伝えるとしよう。生誕祭なのでパーティを欠席するわけにはいかんが……」

「はい……」

「では、パーティの日まで学院は休むことにしましょう。狙いが分からない以上、外に出るのは控えた方がいい」


 俺が提案すると、さすがに危ないと判断したらしい。

 ソシアさんも頷き、屋敷へ引きこもることが決定した。屋敷の中なら手出しはしにくいだろう。


「(おっと、寿命を見てみるか)」


 『ソシア=ブレンネン 残寿命:十五日』 

 

 変わっていない……まだなにかあるのか? 

 原因を取り除かないと変わらないのはやっぱりかってところだな。

 予告状を回収して俺達は部屋へと戻る。すると燃える瞳の三人が部屋に訪ねてきた。


「カケルさん、いいですか?」

「どうした?」


 部屋へ招き入れると三人は浮かない顔をしていた。大変な仕事になってしまったから仕方ないか。


「しばらく学院に行けなくなったのが残念だな。折角食堂がタダになったのにさ」


 俺が苦笑しながら冗談を口にする。だが、そこでグランツが神妙な顔で話しかけてきた。


「カケルさん、少しお話いいですか?」

「……いいぞ」


 恐らく俺のことだろうな……なんとも憂鬱な気分で俺は椅子にどかっと座り話始めるのを待つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ