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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第四十四話 誘拐事件の真相

「お前……それをどこで……!」

「フフフ、僕を王子と知っててその口ぶり。間違いないね」


 声を荒げるもレリクスは気にした様子も無く目を瞑ってティーカップを口につける。それにイラっときた俺はテーブルを叩きながら質問を続ける。


「質問に答えろ! この町に来てからはそんな話をした覚えはないぞ!」

「……アドベンチャラーズ・ユニオン」

「なに?」

「ユニオンは国が運営している、との説明は受けなかったかい? 変わったことがあればユニオンマスター経由で報告があるんだよ? ユニオン同士は『セフィロト』と呼ばれる魔力を使った通信で連絡が取れるからね。もっとも最近はセフィロトの動きが鈍いらしいけど」


 ユニオン……ユニオンか。

 確かに異常があれば報告するのは理にかなっている。後半はなにやらぶつぶつと言っていて聞き取れなかった。

 ひとまずレリクスの言葉について俺は考える。ユニオンマスターには二人しか会ったことがないのでおのずと答えは出てきた。


「そうか……ドライゼンさんか……」

「正解だ♪ 異世界からきた魔王様」


 カルモの町のマスターは俺を追い出そうとしていたし、彼しかいないだろう。

 レリクスはさも嬉しそうに人差し指を立てて微笑む。彼の言葉を聞いて、グランツ達がギギギ……と、首をこちらに曲げて俺に聞いてくる。


「カ、カケルさん……異世界人って……」

「それに……ま、魔王? で、でも魔王様は六人とも健在だし、最近継承したってのは光翼の魔王様以外に話がないわよ。光翼の魔王様は女の子らしいし……」

「……」


 トレーネだけがなにも言わずポカーンと口を開けて呆然としていたが、まあ当然の疑問だろう。


「こうなるからバレたくなかったんだがな……」

「ははは、まあまあ。とりあえず君のことは今は置いておこう。その顔が見れただけで満足だしね」

「てめえ……ん!?」


 俺が槍に手をかけたところでいつの間に回り込んでいたのか、ペリッティに手を抑えられていた。


「それ以上は許しませんよ」

 

 無表情に俺の目を見てくるその顔に表情は無い。

 恐らくこっちが本来の顔なのだろう。ここで争っても仕方がないかと俺は槍を置いて椅子に座りなおし、ペリッティへと告げる。


「……離せよ。もう攻撃したりはしない。で、ソシアさんの件を聞かせてもらうか」

「……!」

「戻っていいよペリッティ。そうだね……まずはカケル君が彼女出会った少し前から話そうか――」

 

 レリクスが語るその内容は俺もグランツ達も目を見開いて驚いていた。

 薄々感づいてはいたが(本当だぞ?)、あの誘拐騒ぎはソシアさんの自作自演らしい。

 もちろん密偵をつけていたからこそ分かることだが学院を出た後、一人で山の方へと歩いていき、隠していた野営道具で一夜を明かしたそうだ。

 しかし一日だけだからと食べ物は持って行かなかったため、匂いに釣られて俺の前へと現れた。


「――その後は君の知る通り、誘拐されたからと護衛を頼んだのさ……燃える瞳の諸君は予想外だったろうけど」

「でもどうしてそんなことを? だいたい他の誰にも告げるなって脅迫状だったみたいだし、実際誘拐されたことを知っている人は学院にも居ませんでした」


 エリンが首を傾げてレリクスへと尋ねると、困ったように笑いそれについての回答を俺達に告げた。


「……どうもね、ソシア君は僕のことが嫌いみたいなんだよ。それで、スキャンダルとなりそうなことを自分から起こして僕の口から婚約破棄を言わせたいらしい」

「ってことはお前が密偵をつけていることは……」


 「知らないと思う。だからこその偽誘拐騒ぎじゃないかな? クラスのみんなには伝わらないけど、婚約者候補として脛に傷があるのを隠すのは気まずい。だから彼女のお父上からの報告が無い訳じゃない」


 大っぴろげにせず婚約破棄を狙うのか。頭が回る分、レムルより悪役令嬢っぽくなってきたな。


「それで、ソシアさんとは結婚しないのか?」

「まさか! 彼女の容姿も僕に媚びない性格はとてもいい。魔力も高いし言うこと無しだ。僕は彼女を嫁にしたいと考えている。他の女性は僕から見ればゴーレムだよ」

「ああ……なんとなくソシアが嫌いになる理由が分かった気がします……」

「ええ!? 今のでかい!? で、出来れば教えてくれないか!」

「王子、嫌われているとわかっているのに執着するし、本性は汚い」

「こ、こらトレーネ!? も、申し訳ありません……!」


 さすがトレーネ。的確にレリクスの悪いところを突いていく。


「ぷ」

「ペリッティ、いま笑ったね?」

「笑ってません」

「笑ったよね?」

「笑ってません」

「ならどうして肩をひくひくさせてるのさ!? ……まあいい」

「実は陰で王子はスケコマシと言われています」

「今それを言うのか!?」


 うむ、俺の正体を言った時は影の支配者みたいな空気だったが、今はただの振られた彼女に固執するストーカーに近い。話が進まないのでとりあえず話を戻す。


「ならお前は今後どうするんだ?」

「特になにも。このままパーティまで過ごしてくれればいい。いずれにせよ、生誕の義で婚約者の宣言でほぼ確定だからね」

「ソシアさんが嫌がっていても、か? レムルじゃダメなのか?」

「……そこはなんとも言えないね。あまり嫌がっている相手を嫁にするのは後々を考えると良くは無い。けど、魔力が高い娘は必要だからね。それにレムル君はお父上が家柄に固執する古いタイプの人間みたいでね……僕のことが嫌いではないと思うけど、洗脳に近いんじゃないかな? 魔力が高い娘を生贄にするみたいなもんだ。可哀相に」


 冷めたお茶を眉を顰めて飲みほしながら肩をすくめていると、トレーネが口を開いた。


「王子、意外と大変」

「分かってくれるかい? 辛辣な眼鏡っ子。君はいいよね、好きなカケル君と一緒にいられて」

「うん」

「はっきり言うね……さて、ソシア君のことはこれで問題ないだろう。もう安全だし、狂言であったとボーデン卿に伝えてくれればこの話は終わりだ」

「ちょっと待ってくれ、昨日誘拐されかけたんだがあれもか?」

「ああ。あれはソシア君が事前にとある女生徒に頼んでいたんだよ。そうだねペリッティ」

「はい。今、あそこでお話しされている方がそうです」

「マジか!?」


 俺達は振り向くと、見た目大人しそうな女生徒が困った顔でソシアさんと話していた。なにか女生徒にお礼をしているのか、それとも悪役令嬢よろしく脅しているのか――


「……バカバカしい。そこまで分かっているなら俺から言うことは無いな。お前達は?」

「俺達も特には……一体なんだったんでしょうか……俺達が学院に編入してまでやることだったんでしょうか……」


 目に見えて落ち込むグランツをエリンが慰めていた。嘘に踊らせたことに加担したのだろう。後でフォローするとして俺はとりあえず話を締めることにした。


「後はボーデンさんに任せよう」

「それがいいね。報酬が出なかったら僕が出してあげるよ、五十万セラだったよね?」


 と、笑いながら言ってくるが、このとき俺は別のことを考えていた。

 レリクスのソシアさんの話は恐らく本当だろう。そもそもこの嘘を俺達につくメリットが無い。

 あるとすれば、実はレリクスもソシアさんが嫌いで秘密裏に殺す為、俺達を油断させるという理由があるかも、というところだ。

 それに、これで解決したのであれば変わるはずのものが変わらないのだ。


『残寿命 一六日』


 そう、ソシアさんの寿命だ。

  全て狂言であるならソシアさんはなぜパーティの前日に寿命が消えることになっているんだ……?


「――で、カケル君には是非ウチで働いてもらいたいんだけどどうかな?」

「は? え? 悪い、考えごとをしていた。なんだって?」

「カケル、お城で働くの? そしたら会えなくなる?」


 要領を得ないがすごく悲しそうな顔をするトレーネが俺をじっと見ていた。するとレリクスが口を開く。


「君、異世界人で魔王だからね。この先、旅をしていてもあまりいい結果にはならないと思うよ? だからウチで働かないかなって。もちろんその眼鏡っ子も連れてきていいし、グランツ君達を騎士団に招いてもいい」

「なに?」

「それに君はレベル一でマナポイントが500あったらしいし、興味があるんだよね。僕の護衛でもしてくれると助かるんだけどね? ちなみに今はどれくらいあるのかな?」


 ペラペラと好き勝手に喋るレリクスに、俺はイラっとしながら度肝を抜いてやろうと、わざとボソッと喋った。


「……レベル六で、マナポイントは三千八百だ」

「さ……!?」


 流石のレリクスもこの数値には目を見開いて驚いていた。それを俺はスマホで激写してやる。異世界人とばれたなら、こいつらに見せても構うまい!


「いい顔だ、ほら」

「こ、これは……精巧な絵……色までついて……」

「異世界の道具、なのか……?」


 グランツ達が俺のスマホに釘付けになっていると、ネーレ先生やゴリラ、レムルのクラスの先生が大声で生徒達を招集していた。


「話は終わりだ。行こう」

「そ、そうですね……」

「ソ、ソシアを迎えに行かないとね……」


 二人がそそくさと俺から離れていくのをみて少しだけ寂しく感じるが、ばれたのなら仕方ない。恐れさせておけば旅に出る時にあとくされが無くていいだろうし。


 ……味方かどうかわからないけどトーベンさんに連絡をしておくか。


「行こう?」

「……そうだな」


 この先ロクなことにはならない、か。

 なんとなくレリクスの言いたいことは分かった気がする。

 ひとまず変わらず俺の横を歩くトレーネにホッとしながら、俺はソシアさん達のところへと戻った。


◆ ◇ ◆


「……あれでよろしかったのですか? あの眼鏡っ子をダシに脅迫でもすれば引き入れるのは難しくありませんが」

「それは彼が意固地になるだけだから止めた方がいいと思うね。でもマナポイント三千八百……彼を引き入れておけばこの国の安全はさらに強固になる。それに、彼の子もきっと強く産まれてくるだろう……まずは引き入れることが先だね。トレーネ君と子供を作らせて……レムル君あたりとの子も面白くなりそうだ」


 カケルたちが去った後、片付けをしながらペリッティがレリクスへ尋ねる。

 すると青写真として魔王を手元に置けば国は安泰だろうと笑みを浮かべる。

 子供もきっと強い。

 だからこそ下手な真似はしたくないと。


「私も準備はいいですよ」

「フフ、気に入ったのかい?」

「はい。ぼんやりしているようですが、あの目は私と同じ……です。久しぶりに熱くなりました」

「……ふうん……親殺しのペリッティと同じ、か。興味があるね」

「しかしマナポイントが三千八百など本当でしょうか?」

「現在する魔王のレベルはだいたい八十前後で五千くらいと聞いたことがある。だから嘘の可能性は高い。だけど、彼はそんな嘘を吐く必要があるとは思えないね。隠れて町で生活をしているくらいだし」

「……確かに」

「いずれにせよ彼はなんとか手に入れたい。ソシア君を含めて、宜しく頼むよ」

「かしこまりました」


 そう言ったレリクスの視線の先にはカケルのだるそうな後姿があった。

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