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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第四十二話 対抗戦 準決勝②


 次の対戦へと移る前に俺達は順番を決める話し合いをしていた。

 先ほどはレリクス王子が先鋒だったことを考えると、今度は最後に回ると考えるのが妥当だろう。


「向こうのメンバーがどれくらい強いのかが分からないのが厄介だな」

「あたしが先鋒で引っ掻きまわしてこようか?」


 エリンが持ち前の足で攪乱しようかと提案してくるが、それをソシアさんが断った。


「いえ、レムルさんが先鋒で五人抜きをしていたことを受け、私が行きます。二番煎じですがアピールは必要ですし……」

「雇い主はソシアさんだ。俺は構わないぞ」

「私も」

「うん、気を付けてね!」

「そうなると万が一を考えて、二番手はカケルさんがいいでしょうね」


 負け続けると印象も良くないのは確かだな。

 ソシアさん以降のオーダーはグランツが提案した順番で決まり、ネーレ先生に声をかけた。


「順番はおーけーです~。Fクラスはもう決まっているので、始めますね~! それでは最初の人、前へ~」


 スッ……っとソシアさんが前に出ると、Fクラスの生徒も前へ出てきた……レリクスでは無い。黄緑の髪を途中から二つ結びにしている女生徒で、武器はなんと斧だった。


「お手柔らかに!」

「ふふ、手加減はしませんよ!」


 お互い不敵な笑いを浮かべて対峙すると、例によってネーレ先生の声が響いた。


「は~い! はじめぇ~!」


 自分の距離を取りに女生徒がじりじりと間合いを詰めてくる……武器が武器だけに、一気に駆け出してこないのが不気味だが――


「来ないならこちらから行きます! ≪光刺≫」


 ソシアさんが魔法を使うと、太目の針のようなものが掌から何本も飛んでいく。

 女性とはそれを素早く回避して一気に間合いを詰めに来た。


「ちょっとずるいけど、後手に回った方が有利なこともあるんですよ! ≪風刃≫!」

「お、あの子魔法も使えるのか」

「なるほど! ≪輝きの盾≫! ≪光刺≫!」

「お!? よ! っほ! あいた!?」


 ぶわっとソシアさんへ鋭い風が襲いかかる。

 しかしソシアさんは薄いバリアのような魔法で打ち消し、またも光刺で女生徒を射ぬこうとした。

 女生徒は間合いを詰めながら光の棘を回避しようと転がる。しかしその内の一発が太ももを掠めて血が流れた。


「む。私だって使える……兄貴、私も斧を持つ」

「カケルさんならいざ知らず、お前には無理だぞ……」


 俺が感心しているとトレーネが鼻息を荒くしてグランツを引っ張っていた。

 人には向き不向きがあるからな? 中々面白い動きをする子だけど、風の魔法はそれほど強くない。

 恐らく『魔』のステータスの差だろう。斧の一撃が通らなければソシアさんを討ち取るのは難しいと思う。


「うへ……魔法合戦じゃ分が悪いや……! ならさ! ≪爆風≫!」

「え?」

「おお!」


 訝しむソシアさんにワクワクする俺。

 風魔法を地面に叩きつけてその反動で大きくジャンプをしたからだ。あの魔法、覚えとこ。


「近づいた……!」

「やりますね、でも空に上がったのは失敗でしたよ? ≪光の矢≫」


 ソシアさんが人差し指を銃みたいな形……いわゆる『バッキューン』にした瞬間、指先から光刺よりも太く尖った光の矢が女生徒を捉えた。

 空中で身動きが取れないので放たれたらアウトだ。女生徒の額に汗がにじむ。俺ならまだ手はあるが、どうする?


「ハッ!」


 掛け声一閃! 矢が放たれた! しかし、女生徒もまだ諦めてはいなかった。


「クッ……! ≪爆風≫!」


 もう一度魔法を使い、身体の軌道を変えて矢をなんとか避けることができた。

 しかし再び落下をする。

 ソシアさんの頭上近くまで来たとき、斧を振りかぶる。


「もらった……!」

「危ない……!」

「≪輝きの盾≫」


 決まったかに見えた。

 だが、斧の一撃はソシアさんの輝きの盾であえなく防がれてしまった。


「うーん、惜しい……!」

「カケルさんはどっちの味方なんですか!」


 エリンに怒られつつ成り行きを見守ると着地した女生徒が膝をつき、そこへソシアさんが指を顔の前にピタリと構えた。


「まだ、やりますか?」

「……いや、私の負けです。マナポイントが無くなったので打つ手がありません……」

「勝者~ソシアさん~!」

「やったね!」


 ソシアさんが俺達のところへ戻ってくるとエリンが抱きついて喜びを表していた。グランツも雄叫びを上げながら暑苦しい感じでソシアさんを労っていた。


「どうしたのカケル?」

「いや、さっきの子、マナポイントが尽きたって言ってたけど、やっぱり戦士系だと少ないのかなと思って」

「うん。訓練とレベル次第だけど、武器を振り回していたら上がりにくい」


 なるほど、使えば使うほど上がりやすいって感じだな。


「トレーネのマナポイントはどれくらいあるんだ?」

「私は八十。慣れた炎弾なら二十発くらいはだせる」


 だいたい一発あたり四ポイントか。

 そう考えると確かにヒールとハイヒールはマナポイントの消費が高いな。


「あの子の魔法、どれくらい使うんだろうな……ちょっと使ってみるか ≪爆風≫!」

「あ、カケル……」


 地面に向かって出した魔法は文字通り爆風になって俺を空へと押し上げる! 


「どわあああああ!?」


 結構な高さまで上がった後、降下が始まった。

 下を見ると、先程ソシアさんと戦っていた女生徒がポカーンと見ながら口をパクパクさせていた。

 口の動きから『なにあれ……!? パクリにしても威力が……!』みたいな感じである。


 おお、そうだ! マナポイントの消費は……


 3850/3900


五十!? ちょっと減り過ぎじゃない!? 

魔法使いのトレーネでも一回しか出ないだろこれじゃ? あれか? 『魔』が高くなると消費も大きくなるのか?

 うーむ……それとも、無意識に強力にしてしまったかという線もあるか。

 というかマナポイント高いな俺。

 そんな心の中の問答がだいたい三秒くらいあった後、俺は地面に叩きつけられた。


「カケル!」


 トレーネが駆け寄ってくるのが分かる。ああ、流石トレーネ……心配してくれるのか……


「カケル、人の魔法名を使う時は許可を取った方がいい。訴えられることもある」


 違う心配だった。


「そ、そうか……炎弾も?」

「あれは一般的な名前だから大丈夫。もし、私のオリジナルでもカケルなら許す」


 なるほどな。

 魔法も複雑なことで……師匠とか見つけたらいいのかね? こういう時に賢者とかが教えてくれるのが物語の流れってもんだが。


 俺は落ちた衝撃で四十くらい減ったHPをヒールで回復をし、二戦目の観戦をするため待機状態に戻った。


「始め~!」


 ちょうど始まるところだったので良かったな。

 とはいえ、始まってみれば他の人達も最初の女生徒と同レベルくらいの強さで、その後も苦戦することなくソシアさんが連勝を重ねた。


「ふう……」

「後はレリクス王子だけか」


 俺が呟くと王子がレイピアを抜きながら前へと出てくる。


「いやあ、流石はブレンネン家のお嬢様だね! 僕の婚約者候補に相応しい。でも、ここは手加減をしないよ?」

「……望むところです! 私はレムルさんと戦うために王子を倒したいと思います」

「うん。そういうところも悪くないね? それじゃ先生」

「あ、はい~!」

「……」


 レリクス王子が笑いながら、レイピアをソシアさんへと向けた。

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