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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第四十一話 対抗戦 準決勝①

「ふぉいうわふぇで俺ふぁねらふぁれふぁ」

「飲み込んでから喋りなよー」


 エリンに窘められて俺は口の中に残っていたパスタを一気に飲みこんだ。

 念のためソシアさんの近くの席で昼食を食べながら先ほどの経緯を三人に伝えるつもりだったのだが、先に食事を優先してしまった形だ。


「悪い悪い。で、レムルと一緒に校舎裏で敵に襲われた。姿が確認できなかったのが悔やまれる」

「それは仕方ありませんよ。けど、どうしてカケルさんを狙ったのでしょうか? ソシア様を狙うのが難しいから周りから、ということですかね」

「その辺りはなんともだな。単純に俺が目障りだから誘われたという線もある」


 するとトレーネがお茶を飲みながら声を小さくして俺に言う。


「……性悪が自作自演で誰かに襲わせた、とか」

「いい勘だなトレーネ。でも、あいつはシロっぽいかな? 誘拐事件について聞いてみたが本当に何も知らない感じだった。後はレリクス王子が怪しいかと思っているんだけど……」

「王子様が? ソシアさんを襲わせてなんのメリットがあるんですか?」


 エリンがきょとんとしながら首を傾げて聞いてくる。この世界の人間で、かつそれなりに人気がある王子相手だと疑いにくいのかもしれないな。


「もしソシアさんと結婚したくないと思ってるとしたら有り得るだろ? 他に好きな人がいるとか、レムルを選ぶためとかな。殺さないまでも、誘拐されたとなると……ほら、色々あるだろ?」

「色々?」

「ああ……うん。それを理由に婚約破棄は有り得るかも……でもソシアを選ばない理由も見当たらないかなあ……」


 まあ、エリンの言うことももっともなのでそこは特に言及せずにおく。


「どちらにせよ、俺達以外は敵だと思って過ごさないとダメということですね」

「ああ、なんにせよ学院内で襲われたのが気になる。こうなると生徒の可能性が高いから、お前達も絶対一人になるなよ」

「わかった。でもカケルが一人になるから私が見ておく」


 トレーネが頷いてから俺の服の裾を掴んでニコッと笑う。

 俺が不満げな顔をしているとグランツとエリンがつられて笑っていた。


「カケルさんもトレーネには敵いませんね。ん? そろそろ集まるみたいですよ、ソシア様を迎えに行きましょう」

「そうしよう。次の相手はそれこそレリクス王子のクラスだし、気を引き締めていこう。ソシアさんを勝たせないとな!」


 おー! と、トレーネとエリンが声をあげながら歩いていると、ソシアさんが丁度席を立つところだった。


「ソシアさん、行こうか?」

「ええ。それではレムルさん、決勝で会いましょう」

「ホーッホッホ! 望むところですわ! しかし、王子に勝てるかしら? それではごきげんよう!」

「おう、またな」

「ふぇ!? またあなたですの!? ふん、それでは! ……先程の件、わたくしからも調べて差し上げますわ。ソシアさんはともかく、学院に不穏分子がいるのは好ましくありませんからね」

「……!? 分かった」


 すれ違い様に口をへの字に曲げたレムルが耳打ちをしてきた。その言葉は意外なものだった。根はいいやつなのかもしれないが……。


「ホーッホッホ! おどきなさい、邪魔ですわよ!」


 レムルが歩くと人がきれいに分かれて道ができるので何となく、印象で損しているのではないかと思った。一応、味方が増えた、か?

 俺達も行くかと思っていたところに、今度はレリクス王子が話しかけてきた。


「やあ! 次の相手は君達だね! お手柔らかに頼むよ? まあ、僕は強いから負けても悔やまないでね」


 もう勝った気でいるレリクス王子がうんうんと、腕を組んで頷いていた。それに対して答える。


「まだ分からないぜ? こっちも負けるつもりはないしな?」


 俺がグランツに目をやると、ぐっと拳を握って声をあげてレリクス王子を見ながら言う。


「はい! 王子、胸を貸していただきます!」

「ええ……ー男に貸す胸は無いんだけど……どっちかといえばそっちの二人かな? どうだい、うちの侍女にならないかい?」


 ウインクをしながらエリンとトレーネに言葉を投げかけるが、当の二人はどこ吹く風で答えた。


「あはは……あたしはパスですね。グランツがやきもちを焼いちゃいますし」

「う……」

「私もカケルがいるからごめんなさい」


 すると髪をかきあげながらレリクス王子は高らかに笑った。


「ははは! これは残念だよ! そして僕になびかない女の子とは興味があるね」

「ふふ、王子には私がいるじゃありませんか」


 コロコロとソシアさんが笑い、フッと笑いソシアさんを見た後口を開く。


「そうだね、パーティが楽しみだよ……それと……」

「?」


 お供と一緒に出て行こうとするレリクス王子が俺の前で立ち止まってから、顔を覗き込んでくる。何だ、一体?


「君とはゆっくり話をしてみたいね? 対抗戦が終わって時間があれば誘わせてもらうよ! それじゃ、また後で♪」

「……」


 ……やはりレリクスは怪しいか? 

 だとしたらあからさますぎる。そう思わせといて、という作戦ということも考えられるし今は静観だな。


「カケルさん、気になりますが今は対抗戦を勝ち抜きましょう」

「怖い顔してる」

「あ、ああ。すまない。じゃあ行こうか、ソシアさん……ソシアさん?」

「あ!? え、ええ、行きましょうか! 王子相手でも負けられないですからね」

「お、おい、そんなに慌てなくてもいいんだけど!?」


 何故かハイテンションで、スタスタと歩いていくソシアさんを慌てて追う俺達。


 さっきレリクスを見る目は悲しそうだった……気がする。そして濁っている気がした。


 ……三人には言っていないけど、もう一つ可能性があるんだよなあ……当たってなければいいんだが。



 ◆ ◇ ◆



「それでは~午後は残りの試合を行います~! まずはAクラス対Hクラス、どうぞ~!」


 のんびりしたネーレ先生の声が訓練場に響き、レムル率いるAクラスと知り合いがまったくいないHクラスの戦いが始まる。


「いつもどおりこの戦いからルールが変わり、勝ち抜き戦になります~。一人で全員を倒すこともできますし~最後の一人で逆転もできますよ~! 諦めずに頑張ってくださいね~」

「勝ち抜き戦か。全員倒すまで終わらないなら油断できないな」

「そうですね。私としては王子にアピールできるチャンスになりますから嬉しいですけど♪ レムルさんもそのつもりでしょう。ほら」


 ソシアさんが神妙な顔つきで壇上を見ると、レムルが不敵な笑いをしながら腕組みをして待っていた。あいつ先鋒か!?


「ホーッホッホ! モブクラスなどすぐに終わらせて差し上げますわ! 誰からでもかかってきなさいな」

「私が相手よ。ソシアとあんただけがレリクス様の婚約者候補じゃないってことを見せてあげる……!」


 真っ赤なロングヘアを振りかざしながらレムルを指差して睨みつける女の子。ソシアさんがその女の子を見て声をあげる。


「あの方は……!」

「知っているのか、ソシアさん?」

「ええ、ミモレ・グラシュさんと言いまして、この国では五本の指に入るグラシュ家の貴族です。しかし魔力はそれなりだったと思います」

「でも、ここでレムルさんに勝てば逆転の可能性もあるのかな?」


 エリンがソシアに尋ねると、壇上を見たままコクンと頷いた。

 この人もライバルと考えれば相手がレムルでなくなる可能性がある。そのせいか行く末を見届けたいようである。


「始め~!」

「そんなヒールで戦いに挑むなんて馬鹿にされたものね! ≪大地の牙≫!」


 床が盛り上がりながら近づき、レムルの足元で突き上がる。

 それをひらりと回避するレムル。威力は高そうだがいかんせん出が遅い。だが、ミモレはその足でレムルに接近を試みていた。


「魔力が上がっていますわね! でも、それだけではわたくしには勝てませんわよ? ≪氷槍≫!」


 ヒュヒュと、氷の槍がミモレを襲う。


「≪土壁≫」


 またも床を盛り上げて氷の槍を受け止め、そのまま前進していく。恐らく魔法の出が遅いのは織り込み済みで、なるべく近づいて発動させるつもりなのだ。


「やりますわね、ではこれなら! ≪氷撃≫」


 ボーリングの玉ほどの氷塊がレムルの手に生み出され、そのままミモレに投げつける。するとミモレはそれを横の移動だけで回避し、持っていたロッドでレムルに殴り掛かった。


「近づいた!」


 振り下ろされたロッドをレムルもロッドで受け止めた。そこで不敵に笑いながら言い放つ。


「近づいたところで有利とは限りませんわよ?」

「分かってるわよ! ≪砂の鎖≫」


 その瞬間ロッドから砂が吹き出し、レムルを囲むように砂埃が舞った。間接的な目くらましといったところか。


「続けていくわよ!」

「くっ……」


 前が見えないことをいいことに、ロッドで殴り掛かるミモレ。

 レムルはロッドでうまくガードしているが、相手が見えないので何発か貰い、痛みで呻く。


「ホーッホッホ! いっぺん言ってみたかったのよねこれ! どう? 降参するなら今のう……いたぁぁぁぁ!?」

「あら、ごめんあそばせ」


 砂に囲まれたまま、シレっとした声だけが聞こえてくる。

 どうやら足を踏まれたらしくミモレが片足でとんとんと跳ねていた。ヒールで踏まれたら流石に涙目である。


「うぐぐ……偶然とはいえやってくれたわね……! とどめよ! ぎゃああああ!?」


 魔法は使わず尚もロッドで殴り掛かる。だがミモレの悲鳴だけが壇上に響き渡るばかりだった。


「ホーッホッホ! とどめはどうなさったのかしら!」

「ば、馬鹿な……!? こうも足を踏んでくるなんて……見えている訳が……」

「もう終わりですの? 以前より善戦しましたが、ここまでのようですね。 ≪霧氷≫」


 レムルが魔法を使うと、周りを覆っていた砂埃が氷の結晶と共にパラパラと落ちていく。


「ホーッホッホ! 足音まで気を使えなかったあなたの精進不足ですわね? では……!」

「あ、あああ……!? こ、降参! 降参します!」

「それまで~! 勝者、レムルさん~!」


 ロッドを構えて魔法を使おうとしたレムルを見て、尻餅をついたまま後退しつつリタイアを宣言するミモレ。そこで勝負ありだ。


「フフフ、わたくしのとっておきを出そうと思ったのですけれど、惜しかったですわ」

「ぐ……次こそは……」


 レムルを睨みつけながら壇上を降りるミモレ。


「さあ、次はどなたですの?」


 ――初戦のミモレがHクラスの最大戦力だったのだろう。

 モブクラスに相応しく、それなりの生徒が出てきたがレムル一人で残りを倒しAクラスが決勝へと駒を進める事になった。


「強い……!」

「性悪、中々すごい」

「まさか圧勝とはな……さて、次は俺達だ、行くぞ」


 グランツとトレーネが驚く中、ネーレ先生の声で俺達は壇上へと上がる。


「フフフ……」


 レリクス王子が不敵に笑いながら俺達と対峙した。

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