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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第三十八話 響け! 悪役令嬢の高笑い!

「そこまで! Bクラスの勝利!」

「やったな! 流石はグランツだぜ!」

「トレーネちゃんも頑張ったわ!」

「ソシア様も華麗でした!」


 壇上を降りるグランツ達にクラスメイトから労いの言葉がかけられる。

 俺の方を見てグランツが拳を突き上げて喜び、トレーネがドヤ顔でVサインをしていた。


「まずは一回戦勝ちましたね!」

「あれくらいは余裕」


 グランツとトレーネ兄妹とシアさんがクラスのみんなに称えられながら壇上を降りていく。その後をついていき俺も壇上を降りた。


 ……お気づきだろうか? 

 そう、俺も対抗戦のメンバーとして大将で参加していたのだ。


 簡単に経緯を説明するとだね? 

 朝のホームルームでネーレ先生が『ソシアさんはレリクス王子とのことがあるから活躍してもらうためにメンバーです!』と、五人決めるんじゃなかったか? という昨日の発言をひっくり返すことを急に言い出し、それならとグランツ・エリン・グネンに、とりあえず名前を知っているオライト君の名前を書いて投票箱へ入れたのだが、いざ開封すると、俺・グランツ・エリン・トレーネの名が連なっていた。何故か? みんな戦いたいんじゃないのかと思っていたが、ソシアさんのためにここは優勝を狙う必要があるのだそうだ。なので、昨日の訓練結果を鑑み、それと負けた時に責任を取らされたくないという打算から、いつも一緒にいる俺達に白羽の矢が立った。次点でグネンとオライトの名前があがっていて二人は焦っていた。


「なんで僕が!? しかも一票だけとか無い方がいいよもう!?」

「……俺もだ……誰だ一体!?」


 匿名なのでバレることはあるまい。


 ――とまあ、感情が高ぶって早口になってしまったが、そういうことなのだ。

 ちなみにウチのクラスはB。Hクラスまであったりする。

 で、抽選でEクラスとぶつかった結果、グランツ、トレーネ、ソシアさんが勝利を収めた。

 Eクラスはよくも悪くも平均的で、あまり面白みがないメンバーだった。グランツは『昨日戦った、二列目の二番目の席の彼の方が強かったですよ』と言っていた。


 ……お前が昨日戦ったのは一番右の三番目の席だけどな。

 そんなどうでもいいことを心の中でつっこんでいると、副将だったエリンが俺に話しかけてきた。


「楽ができてよかったねカケルさん♪」

「それはそうだけど、昨日の襲撃を考えると参加したくなかったんだよなあ」

「でも私達の方が間違いなく勝てる。頑張る」


 珍しくやる気の眼鏡っ子が杖を掲げて鼻息を荒くする。なんだかんだで学院生活を楽しんでいるようでなによりだ。

 

「ふふ、トレーネも魔法で頑張っていましたしね。火の魔法が得意なのね?」

「そう。でもカケルはもっと凄いから追いつけるように頑張らないと」

「まあ。愛されてますね」

「……」


 聞かなかったことにして、次の試合までどうするかと思案したその時、グランツが壇上に上がるレムルの姿を見て声を上げた。


「カケルさん。俺の勘ですけど、あの方とは戦いそうな気がします。他のメンバーも含めて見ておいた方がいいのではないでしょうか」

「確かにそうだな。使っている武器と魔法の傾向は知っておいて損は無いか……みんなもそれでいいか?」

「もちろん! あたしは元気が余ってるし!」

「私も構いませんわ。レムルさんが去年からどれくらい強くなっているか楽しみです」


 ああ、一応向こうだけじゃなくてソシアさんもライバル認定をしてるんだな。

 昨日のボーデンさんとの会話もそうだけどソシアさんは見た目より我が強い。そして魔力も。

 それなのにどうして襲撃は防げないのか……?

 しかし俺の思考を寸断するようにレムルのAクラスと、モブがいっぱいのCクラスが激突する!


「げ、いきなり悪役令嬢からか……!?」

「そこ! おだまりなさい!? ふふん、ソシアさんに……あなたでしたか。わたくしの実力をとくとご覧あれ! オーホッホッホッホ!」

「始め~!」

「んな!? まだ笑っている途中ですわよ!?」


 聞こえていたとは地獄耳め……そして自信たっぷりに高笑いをするレムルを無視して審判のネーレ先生が合図をして戦闘が開始された。


「レムル様が相手とは……いきます!」

「どこからでもどうぞ。まあ近づけないでしょうけど」


 Cクラスの男子生徒の武器は剣。

 だが少し短めで、それを右手と左手に持って構えていた。対するレムルは宝石のついたロッドを両手で持ち相手を睨みつける。


「……たああ!!」


 ダッシュでフェイントもなく近づいていくモブ男。それをレムルが魔法を唱えて迎撃を行う。


「≪冷厳の楔≫」


 ロッドの先から冷気が漏れだし、意思をもったかのようにモブ男へとまとわりつく。


「ぐ、さ、寒いっ!? でもこれくらいで止まれない!」


 二刀流で繰り出された攻撃は届かず、軽やかに回避するレムル。ぴょんと、後ろへ下がりモブ男に告げる。


「あら、根性はありますわね? ではこちらでは? ≪氷傷≫!」


 レムルが唱えると、氷の矢がレムルの周りに数本現れ、距離が離れたモブ男をロックオンしてキリキリと向きを変えた。

 

「いきなさい!」

「うわ!? 痛い!? くそ、まだまだ!」


 飛ばされた氷の矢は直撃を避けたものの、肩や足を斬り裂き、あっという間にズタボロになる。

 それでも前へと進む根性は見上げたものだが、すでにレムルのてのひらであることは外から見ている俺には容易に分かった。


「やりますわね」

「ここまで近づけば……! もらった!」


 モブ男が思い切り剣を振りおろし、レムルの頭にヒット……とはならなかった。


「え!?」

「遅いですわよ。今、あなたが攻撃したのは氷で作った鏡……そう! わたくしはすでにあなたの後ろに回っていましたのよ! それ!」

「うう……無念……」


 後頭部をロッドで一撃。

 それでモブ男はダウンしてしまった。『速』はあったけど、もうちょっと『力』と『体』が無いとダメだなありゃ。


「勝者~レムルさん~」

「当然ですわ! オーッホッホッホ!」


 高笑いをしながら拍手の中で手を振るレムル。


「あいつは氷魔法が得意なんだな」

「ええ。私は光魔法が得意なんですけど、相性が悪いんですよ……」


 ソシアさんが真剣な顔でレムルを見ながらぐっと拳を作る。

 正直、悪役令嬢なんてしょぼくれた強さしかないだろうとタカをくくっていたので、氷の鏡を作ったりするトリッキーさは侮れないと感じた。


「……次はあの男ですね」


 グランツが目を細めてレムルと入れ違いに上がってくるのはツォレだ。


「あの時はカケルさんだったので良かったですけど、俺だと勝てるかどうか……」

「そうなのか? 俺はお前の方が強いと思うけどな」

「その言葉は嬉しいですが、よくて五分でしょうね。でも……戦ってみたいです」


 剣術士として是非、と熱く語るグランツ。

 そう言えばステータスって鍛えたら上がらないのかね? レベルだけでしか上がらないのならそいつはいつまでたっても『力』が四のまま、とかになりそうなんだけど……


<回答します。訓練による引き上げは可能>


 そう思っていると、ナレ子が頭の中で教えてくれた。なるほど、なら無駄にはならないのか。


<ナレ子の呼び名は不満であると進言します>


 贅沢な!? ……仕方ないその内にでも考えてやるよ。


「カケル、始まる」


 トレーネの声に反応して意識を壇上へ戻すと、ちょうどネーレ先生が合図をするところだった。

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