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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第三十四話 婚約者、一触即発

「≪地獄の劫火≫!」


 俺の放った魔法は渦を巻き、竜の口のようにも見える形を作って的に向かって飛んで行った。


「「な、なに、アレ!?」」


 クラスメイト達が悲鳴のような声を上げるのが聞こえる。

 無理もない……放った俺自身、わけがわからず汗だらだらなのだから。


「あ? あー!?」


 的の横であくびをしていた、ゴリラが炎を見て驚きの声をあげる。

 クラスメイトは俺の後ろだが、ゴリラは的の近くに居るためある意味、奴に向かっても炎がいく。その恐怖は計り知れない。

 このままだとゴリラは恐らく骨も残らず消滅。殺人の罪で俺は捕まるに違いない。保身のため俺は慌てて叫んだ。


「逃げろゴリラ!? できるだけ全力で!!」

「うわ……うわああ!?」


 あの巨体で意外に素早い……!

 よし、範囲から外れたからこれなら死ぬことはあるまい。そしてゴリラの横をドラゴンみたいな炎が通り過ぎる。

 余波が凄いのだろう。ゴリラの左半身の服は焦げ、髪はチリ毛。髭もぶすぶすと煙を上げていた。


 着弾した瞬間、アクション映画さながらのすごい爆発を起こしていた。

 的は木端微塵という言葉が生ぬるいくらい跡形もなく消し飛んだ。もちろんゴリラも吹っ飛んだ。


「おわおわわわわわ!?」


 地面をゴロゴロと転がり、壁に背中をぶつけて地面に倒れ込むゴリラ。

 一瞬、静まり返る訓練場。

 

「せ、先生ー!?」


 だが、すぐにハッとなり、オロオロするクラスメイト。


「カケル凄い凄い!」


 ただ一人、トレーネだけがぴょんぴょんと飛び跳ねながら喜んでいた。

 その声にソシアさんがハッ我に返り、ゴリラの元へ駆けつけた。

 原因の俺も後に続く。


「せ、先生!? 大丈夫ですか!?」

「う、ううん……ソシア様……一体なにが……」

「ソシアさん、俺が治すよ」

「分かりました。誰かネーレ先生を呼んできてください!」

 

 ソシアさんがそう言うと、クラスメイトの女の子がコクコクと頷き校舎へと走っていく。

 今の騒ぎを聞きつけて、いくつか分かれて授業をしていた別クラスの人間も集まってきたようだ。それはともかく半チリ毛がもう笑いの限界なので俺は回復魔法をかけた。


「≪ハイヒール≫」

「え……!?」

「ん?」


 俺が魔法を使うとみるみるうちに毛と服が元に戻っていき、ことなきを得た。


「ふう……」


 しかし、そこで招かれざる客が登場する。


「一体なにごとですの? 今の轟音はなにかしら」

「あ、レムルさん」

「そう、悪役令嬢のレムルだった」

「うるさいですわね! ってまた貴方ですの!? ……焦げた匂い……一体なにが……?」


 うるさいのはお互い様だと思うが、絡まれると面倒なのでそのことは口にはせず、ありのままを……ソシアさんが話す。

 というか目力で『私に任せてください』と、遮られた形だ。


「私達のクラスも実地訓練なんですけど、魔法訓練中にちょっと予期せぬことが……」

「予期せぬこと? ソシアさん、あなた適当なことをおっしゃっているのではなくて? 『ちょっと』で訓練場の壁があんなことになりますか!」


 げ、ゴリラに気を取られていて気付かなかったけど、でかい穴が空いてる……!? 

 これは弁償になるパターンでは……


「魔法が強すぎてああなってしまっただけなので、ちょっとですよ?」

「……まさか貴女がやったとか言うのではありませんわよね? 確かに王族になるなら魔力は高ければ高い方がいいですが……」

「私じゃありませんよ?」

「いーえ、信じられませんわね、勝負ですわ」

「レ、レムルさん、それくらいに……」


 おどおどした気弱そうな男がレムルを止めようとしていた。


「先生は黙っていてくださいます? これは次期王女をかけた戦い……」

「ふふん、そうなのかい? それじゃ僕も見ていないといけないのかな?」


 レムルが先生に指を突きつけながらまたも怒声を浴びせていると、こちらに近づきながらイケメンが現れた。するとクラスメイトの女子が色めき立った。


「キャー! レリクス王子よ!」

「実地訓練だからいらしていたのね……!」

「こっちむいてー」


 それに引き替え男子は――


(ケッ、王子が何だってンだ)

(ああ、ボクの天使エリカちゃんの目がハートに……! くそ、イケメンめ……!)


 ――小声でひがんでいた。


 それはともかくこの男が王子か。

 顔はもちろん、振る舞いもきれいである。俺がソシアさんの横で見ていると、王子……レリクスが大げさに手を広げて二人に言う。


「やあ、久しぶりだね子猫ちゃん達! 僕の為に争うのはノン。止めてくれないかい?」

「あ……レ、レリクス様……」


 ニコッと微笑むと、レムルが借りてきた猫のように大人しくなってもじもじと上目使いでレリクスを見ていた。


「性悪女が気持ち悪い」

「そうだな」

「そこ! うるさいですわよ!? ……ああ、いえなんでもありませんのよホホホ……」


 トレーネがボソッと呟いたのでつい反応してしまったが、ソシアさんの友達としていると彼女の印象を悪くするかもしれない。

 俺はトレーネの頬を引っ張りながら成り行きを見守ることにした。


「どうされたのですかレリクス王子?」

「ん~、相変わらず美しいね、ソシアは。僕は一番に訓練が終わってね。お茶休憩をしていたんだよ。するといきなり爆発音が聞こえたからきたってわけさ! まさか君達がいるとは思わなかったけどね」


 よく見れば横にパラソルらしきものとティーセットを持ったメイドさんが傅いていた。割とシュールな光景だ。王子の喋り方も緩いし、ボンボンって感じは拭えない。


「それはそれとして。結局あの穴を空けたのは誰なのかなぁ?」

「えっ、と……」


 ソシアさんがどう説明したものかと落ち着かない様子を見せていた。まあ、流石に言わない訳にもいかないか。


「それは俺がやった……やりました」

「……へえ、君が? そんなに強そうじゃないけどねぇ?」


 余計なお世話だっっての。


「カケルさん……」

「……貴方が……?」


 ソシアさんとレムルがそれぞれ口を開く。

 すると俺を見定めるように上から下まで見たあと、レリクス王子は微笑み話を続ける。


「……ソシアを見る限り嘘ではない、か。うん、分かった。戻ろうか。レムル君も訓練の途中なのだろう?」

「え? で、でも」

「戻るんだ、いいね? ……ほら、代わりの先生も来たみたいだしね」


 レリクス王子が入り口をチラリと見ると、ネーレ先生がぱたぱたと走ってくるのが見えた。

「みなさ~ん! だ、大丈夫ですかぁ!」


 「それでは騒がせたね、戻ろうか」


 レリクス王子がそう言うと、メイドがコクリと頷き、背を向けて歩き出した。

 すると少し歩いたところで立ちどまると、振り返った。

 そして俺を見ながらニヤリと笑って口を開く。


「そうだ、君の名前。聞いておこうかな?」

「俺か?」

「うん、そうだね」

「カケルだ」

「カケルね、OK。明日の対抗戦楽しみにしているよ! あははは!」


 レリクス王子が見えなくなったところで、レムルがソシアさんに向かって指を突きつけていた。


「決着は明日ですわね! レリクス様は争わぬようおっしゃいましたが、対抗戦なら文句もありませんでしょう。覚悟しておきなさい! ホーッホッホッホ!」

「ああ、また勝手に……」


 気の弱そうな先生がレムルの後を追い、クラスのみんなだけになった。ゴリラみたいな先生も困るが、ああいう先生もそれはそれで困るよな。


「マレウス先生! マレウス先生!」


 ポカーンと俺達のやりとりを見ていたネーレ先生が倒れていたゴリラに気付き、身体を揺する。


「お、おお……私の天使ネーレ先生……し、心配で来て下さったのですね……!」

「いえ~授業が進んでいないと聞いたので来てみたら~マレウス先生が寝てらしたんですよ~? あんなに大穴を空けたのをすぐ報告せず生徒をほったらかしにして寝るとはいいご身分ですね~ぷんぷん!」


 口でぷんぷんって言う人を初めて見た。


「い、いやこれは訓練のせいで……あ、あいつのせいです!」


 俺を指差しながらガバッと起き上がるゴリラにネーレ先生は追い打ちをかけた。


「人のせいにしてはいけません~! 今日はわたしが生徒達の授業を見ますから、戻っていていいですよ~」

「し、しかし……」

「駆け足!」

「は、はいー!」


 口ごもるゴリラにネーレ先生が叫ぶと、ゴリラはシャキッと立って訓練場を出て行った。うん、ネーレ先生はきっと頼りになると思う。


「それでは~わたしが代わりに実地訓練をしますね~♪ この授業、くじ引きで先生を決めたんですけど、わたしがやりたかったんですよね~」


 今日だけですけどね? と、微笑み、俺達は訓練を再開する。


 ネーレ先生式の魔法訓練は得意分野を申告し、俺のように的を当てる攻撃魔法を主としているそうだ。

 的に当てなくても飛距離や威力で成績を決めてるようである。


「それじゃあカケル君は見ていないから~もう一回見せて~」

「「それはやめてください! あの穴を空けたのは彼なのでそれで判断してください!」」

「え、ええ~?」


 満場一致で俺の魔法は却下された……。いや、ちゃんと魔力をおさえてやるよ?


「とほほ……俺は魔法がダメだなあ……」

「兄貴は剣で生きるから問題ない」

「あたしは風と相性がいいみたいね!」


 そんなバタバタした授業だが、後は普通に進んでいった。

 燃える瞳の三人はトレーネ、エリン、グランツの順で良かったようだ。『燃える瞳』なのに水属性と相性が良かったらしいグランツは複雑な顔をしていた。


「はい~それじゃあ次は戦闘訓練ですよ~!」


 ネーレ先生の合図で俺達は引き続き戦闘訓練に移行する。

 ……それにしてもレリクス王子、か。意味深な笑いが気になったけど、能天気そうだったな。


 というか『生命の終焉』を使っておけばよかったかな? 

 なんとなくレムルの性格を見るに、この調子だとソシアさんが婚約者になりそうだし、なにもないといいが――

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