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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第二十五話 とても基本的な冒険者達

「それじゃ俺は仕事があるんで……」

「ま、待ってください! それじゃ俺達の気が済みません、せめてこれを受け取ってもらえませんか?」


 そう言ってグランツが差しだしてきたのは茶封筒だった。このパターンは記憶に新しい。恐らく中身はお金だろう。


「別にいいって、自分のために助けただけなんだから」

「どういうこと?」


 青髪で眼鏡のかけたいかにも魔法使いって感じの女の子が上目使いで不思議そうに尋ねてきた。


「あの時の俺は肉を食っていてな。目の前で死なれたらしばらく肉が食えなくなると思ったんだよ。自分勝手な理由だろ? ほら、行った行った」


 ポカーンとしている三人をシッシと追い払う仕草をすると、弓と矢を背負った茶髪ポニテの女の子が噴きだした。


「プッ……あははは! 肉が食べられなくなる? それだけの理由で助けたの? 自分で言うのもなんだけどいつ死んでもおかしくないケガだったのよ? タチの悪い治癒術士なら高額請求か体を差し出すか、奴隷として売り飛ばされるかされるわよ」

「うん、あなたはおかしい。でもきっと優しい」


 いや、結構この世界も過酷なんだな……というかケガを治療を受けただけで人生が狂うとかなんだよそれ……

 思ったより回復魔法って使える人が少ないのか? 俺がそんなことを考えているとグランツが拳を握り涙を流して叫び始めた。


「うおおお……俺は感動した! なんて欲の無い! まだ人間は捨てたものじゃない……!」


 暑苦しっ!? お金を払わなくてラッキーくらいに思ってもらっていいんだけどなあ。


「たまたま助けただけなのに大げさだ! 今回は運が良かったと思って次から無茶するなよ? 礼は聞いたし、お金とかは要らないからな」

「本当にいいの? 私達の全財産をかき集めたから結構ある、はず。でも今日からしばらく野宿。命があっただけ儲けもの」


 封筒を俺に渡そうとにじり寄ってくる眼鏡っこがとんでもないことを口走る。


「それを聞いて受け取れるわけないだろ!? いいから、もう帰れよ」

「……分かった……いえ、分かりました。しかし助けてもらうばかりだと申し訳ないので。困ったことがあったらなんでも言ってください」

「ん? そうだな、この町に来てそれほど経ってないから、もしかしたら何か聞くかもしれない。その時は頼む。まあ養成所でトーベンさんに聞けばいいか……」


 何故か俺のバックを取ろうと動く眼鏡っこを捕まえてグランツに返す。


「え!? 養成所!? ……あなたレベルは?」

「俺はレベル五だな。ジョブはない」

「あの回復魔法が使えるのにレベル五……」

「俺達はまだまだ修行が足りないな……」

「お前達はいくつくらいなんだ?」


 すると茶髪ポニテが待ってましたとばかりに手を上げてアピールをしてきた。


「はいはーい♪ あたしはエリン! 十八歳でーす!」

「そっちの『いくつ』じゃないぞ!?」

「ちぇー、ノリが悪いわねぇ。レベルは八で、弓術士よ!」


 弓使いかレベルも俺より高いな……

 明るくて表情がコロコロ変わるのは好感が持てる。すると次に眼鏡っ子が手を上げて鼻息を荒くしていた。

 横にして持っていたから気付かなかったけど手にした杖は彼女の身長と同じくらいの長いものだった。


「私はトレーネ。レベル七の魔術師で、十五歳」


 声の抑揚はあるけど、エリンと違って表情は殆ど変らない。


「む、エリンの時より嬉しくなさそう。スリーサイズは上から七……」

「待て待て、それは必要ないからな? 後、なぜ脱ごうとする」

「最後は俺……名乗りましたがグランツです。レベル九の剣術士で、このパーティ『燃える瞳』のリーダーです。失礼ですが名前を聞いてもいいですか?」


 バランスがいいパーティだな。

 回復役が居ないから無理はできないけど、きちんと回復薬を持っていればうまく戦えると思う。


「俺はカケル。カケル・ジュミョウだ。まあ、聞いての通りレベルはグランツ達より低いから、たまたまハイヒールがうまくいったってだけだよ。あまり目立ちたくないから、言いふらさないでくれると助かる」


 俺がそう言うとグランツがすごく決意した顔で頷いた。


「分かりました! 人知れず善行を積む……凄い人だ! そういうことにしておきます!」


 また『うおおお!』と感動しているところにエリンが俺に耳打ちをする。


「暑苦しいかもしれないけどあまり気を悪くしないでくれると嬉しいかな……グランツ、いい人なんだけど真っ直ぐすぎて騙されたりするのよね。カケルさんはグランツとは違うベクトルでいい人そうだし、たまに付き合ってあげてくれないかしら?」

「苦労してそうだな……まあこの町にはしばらく居ると思うから、暇だったら声をかけるよ」


 と、言っておけばとりあえずは安心してくれるだろう。恐らくもう関わることはあるまいが。


「ありがとう。兄は不器用だから、カケルみたいなのが友達だと私も助かる」

「あ、妹なのか。そういや髪の色が一緒だな」


 トレーネがコクリと頷くと、グランツが正気に戻り、俺に向き直る。


「カケルさんなら妹を託せますからいつでも!」

「いつでもなんだよ!? まったくアンリエッタといい、会ってそれほど時間が経ってない奴を信用するなって」

「……アンリエッタ……?」


 アンリエッタの名を口にした瞬間、トレーネの目が鋭くなった気がした。だがエリンは気にせず話を続ける。


「そ、そろそろ帰りましょ! カケルさん、本当にありがとうね! もし討伐クエストとか行くなら呼んでね♪」

「それではカケルさん、また!」

「あ、ああ、気を付けてな」


 暴れ出したトレーネを担いで三人はユニオンを後にした。


「……嵐のような奴らだったな」


 疲れた……それが俺の感想である。

 ま、これで義理は果たしたし、あいつらもお礼を言えて満足しただろう。後は顔を合わせなければその内、気にしなくなるだろう。


 ――などと思っていた俺が甘かった。


 それはさておき、とりあえずこの日を境に厨房から離れることができたので、明日から冒険者稼業に戻れるようになった。



 ◆ ◇ ◆


 翌日。


「朝はそうでもないんだよな」


 ユニオンの食堂でボア丼を出すの昼からと決まっている。そして朝は専用のメニューがあるのだ。

 俺は朝食代わりにリンゴを齧りながら二階へと足を向けて養成所を目指していた。

 カルモの町だとゼルトナ爺さんが養成所の教官だったし、ここはどんな人かな。


「おはざーす」


 ガラリと学校の教室みたいな扉を開け中へ入ると――


「来たかカケル」

「トーベンさんんん!?」


 よっ! っとばかりに片手をあげてトーベンさんが教壇の前で立っていた。


「今日は他にも来るらしいから席について少し待っててくれ」

「ええー……まさかトーベンさんが?」

「そのまさかだ! 『全武器適性』持ちとか他のヤツに任せられるか! まったくお前は俺を飽きさせないな」


 トーベンさんの為に生きている訳ではないと言いたかったが。この人に何を言っても効果は薄いだろう。

 とはいえ興味を持ってくれるのは悪くない。俺はトーベンさんに質問を投げかける。


「養成所って来る人は少ないのか? カルモの町でも俺ともう一人、それと子供が算術とか習っていたけど」

「ん? カルモに行った事があるのか。あそこは町だがここと違ってそう大きくないし、村と一体化しているから冒険者になるより農民になる人間の方が多いんだよ。子供は田舎の町に学校が無いから、養成所を学校代わりに使うことがよくある。この町は学校があるから、通わせたり寮に入れたりするな」


 ならアンリエッタの幼馴染のビーンは珍しい部類だったのか。

 まあ、あいつが冒険者になるのは止めそうだけどな。別れ際の恥ずかしいセリフを思い出しながら俺はククッとほくそ笑む。


 すると、廊下からガヤガヤと賑やかな声が聞こえてきた。


「来たみたいだな」

「さて、どんなやつが来るかな……」


 俺がちょっとだけワクワクしながら扉が開くのを待つ。もしかしたら可愛い子かもしれない……そしたら一緒にパーティを組んだりしてとか――


「(来た!)」


 入ってきた人影は三人。


 そして姿を現したのは――


「カケル、居た」

「なにぃぃぃぃ!?」


 人影はトレーネを筆頭に見知った三人だった……! なぜこいつらがここに……!?

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