第二十.五話 手段を決めるウェスティリア
カケルがユニオンマスターに話を聞いているころ、ウェスティリア達は次の町へ向けて移動中だった。
この「ペンデュース」という世界は北と南に大きな大陸があり、中間は海が広がっている。海洋には大小様々な島が存在し、世界が形作られている。
そして現在ウェスティリアの居るのは南大陸の東にある『コーラル』という大地である。
ここの大地から南へ下ってから遠回りをすると、途中にある大橋を渡ることでカケルの居る西の『キオスク大地』へも行くことができる。
しかし、陸路は南大陸をぐるっと回る形になるため、相当遠回りしてしまう。
馬車を使ったとしてもかなり時間がかかるのだ。魔物や盗賊といったものに襲撃を受けることも少なくない。
だが、もう一つ移動手段がある……それは海路だ。
ポクポクと馬車に乗ったウェスティリア達三人も、丁度その話をしていたところだった。
「えーっと……地図だとこの先の村を抜けたら、陸路か海路を選――」
「陸路で」
「早っ!?」
「ふえっ!? んぐ……!?」
ルルカがウェスティリアにどっちがいいか尋ねようとしたが、言い終わる前に陸路を選択していた。
御者台に座っていたリファがルルカの叫びに驚き、まんじゅうを喉に詰まらせた。
「あああ!? リファ!? はいお茶!」
「んぐんぐ……ぷは……ありがとうルルカ」
「どういたしまして。で、お嬢様。即答でしたけど、どうして陸路を? お言葉ですが陸路は時間もかかりますし、危険も伴います。新しい魔王に会うのは急がなくても大丈夫なんですか?」
ルルカはすぐにコーラル大陸に行くなら海路を使うだろうと思っていた。
いや、海路で行きたかったのだ。海にも魔物は現れるが、危険度を考えれば南を回っていくより時間も危険も少なくて済む。
するとウェスティリアは目を瞑って少し考えた後に口を開いた。
「他の魔王達が動き出す可能性を考えると、急ぐ必要があります。ですが、海路だと美味しいものが……あ、いえ、私は船酔いしやすいので陸路がいいのです」
「今あんた『美味しいものが』って言ったね!? 陸路で町から町へ行ってご当地料理を食い尽くすつもりなの!?」
「お、おいルルカ、魔王様にあんたは……」
「だまらっしゃい! いいですかウェスティリア様、ボクとの約束は三ヶ月経って見つからなかったら帰るという話だったはずです。陸路だとキオスク大地へ行くだけで二ヶ月はかかりますよ? 到着して見つける暇なんてありません」
捲し立てるように言い放つと、ウェスティリアは眉毛をへの字に曲げてシュンとなってしまった。
「ずるい顔しないでくださいよ……だいたい目的は食べ歩きじゃないんですよ? それに姿を知らない新しい魔王を探すのはかなり苦労しますよ、多分」
すると、我が意を得たかのようにウェスティリアの眠そうな目が開きキラキラと輝き、鼻息を荒くしてルルカへと言う。
「それなんですけど、どうも魔王のスキルを使ったみたいで、波長が分かるようになりました! だから近くにいけば分かると思います!」
「流石ですねお嬢様!」
「ふふ、それほどでもありませんよ」
無責任に褒めるリファを見てルルカは顔を険しくする。
ウェスティリアをダメな子にしている原因は多分リファにもある、と。それを踏まえてルルカはウェスティリアへ提案する。悪い顔で。
「……そうですか、なら陸路にしましょう。魔物はボク達で倒せますから危険はないと思いますしね」
それを聞いて満足そうにうんうん、と頷くウェスティリア。だが、ルルカの話はここからが本番だった……!
「あー、でも港町で美味しいお魚を食べたかったですねー。新鮮な魚だから食べられる『サシミ』という料理や『ニツケ』……焼き魚はいつでも食べられますけど、港町ならではの料理……ああ、そうそう、お嬢様が屋台で食べていた串焼き、あれにエビやホタテといった海鮮を焼いた、海鮮焼きというのもあるみたいです。塩とタレ……どんなものか食べて見たかったなあ」
そこまで言ってからルルカがチラリとウェスティリアを見ると、『#△__こんな形__#』をした口から少し涎が出ていた。
「(後一押しかな?)でも、陸路もおいしいもの……」
「海路にしましょう! やはり新しい魔王には早く会わねばなりません! 海路なら一ヶ月で到着しますよね? うん、それがいいです」
「そうしますか? やっぱり早い方がいいですよね! (よし!)」
見えないように拳をぐっと握り、心の中で喜ぶルルカ。特に意見も無く、ウェスティリアに着いていくリファが今後の行動について言葉を放つ。
「では、村で一泊してから港町へ向かいましょう。港町まで一週間かかりますから食料も調達で。馬車も船には乗せられるので、向こうについてからも馬車で移動できるのは助かりますね。この子達の餌も買わないと」
こういうことはしっかりしてるのにな、と、リファを残念な目で見つめるルルカはひとまず港町へ向かう事に安堵していたのだった。
「海鮮……気になる……」
「そこじゃないでしょ……」
やはりただ食べ歩きたいだけなのでは、とため息をつくルルカであった。
一方、自分を探しているなど露ほども知らないカケルはというと――




