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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第十七話 回復の魔王


 TIPSを使い、『生命の終焉』と『魔王の慈悲』のスキル効果を目にした俺は口元を歪ませる。

 なんて使えない、悪質なスキルだ……これならと、俺は『速』にパラメータを振り分けつつ、這いながらニルアナさんを助けに向かった。


「う、うう……ご、ごめんねアンリ……」

「お、お母さ……ん」

「ひ、ひひ……さあ終わりだ……!」


 男達が息の根を止めようと最後の力を込めようとした時、俺はニルアナさんを絞めている男の手をそっと掴み、支えにして立ち上がる。


「き、貴様まだ生きていたのか……!? それにそれだけやられてまだ立ってくるとは……なら、お前からトドメを刺してやる!」


 ニルアナさんが床にドサリと倒れる……まだ息がある。大丈夫だ。

 男は俺を振りほどこうとするが『力』にも振り分けなおしているのでそう簡単には外れない。


「くそ、離せ……!」


 男は懸命に振りほどこうとするが、俺は俯き、口を歪ませたままかすかな声で呟く。


「『生命の終焉……』」

「な、なんだ……? 熱い……?」


 熱を持ったように男の手首を持った手が熱くなる。手首から薄紫の光がうっすらと放出し、俺の手に吸い込まれては消えていく。


「この! 離せってんだ……あ、あれ? 剣が……重い……どうなっているんだ……?」


 するとダガーの男が短く「ヒッ!?」と呻いた後、大声をあげた。


「お、おいトング!? お前髪が抜けているぞ!? そ、それにその手は……」

「え? え? ……あ!? あああ!? な、なんだこれは!? 手が……骨と皮だけに!? け、剣が重い……持っていられない……!? なんだ、この手……どこから……や、やめろまとわりつくんじゃない! た、助けてくれラルゴ!? 手が! 無数の手がぁ!」


 ガランと、トングと呼ばれた男は剣を取り落とした。そのまま胸を抑えて膝をつくと、やがて意識を失う。

 その姿は八十を越えた爺さんのようにしわがれていた。俺はそれを見届けるとダガーの男に振り返る。


「ト、トング……? て、めぇなにをしやがったぁ!」

「……」


 焦った叫びを受け流しつつ俺はダガーの男……ラルゴに向けて顔を上げながらゆっくりと近づいた。


「あ、赤い瞳……きゃ!?」


 そう呟いたのはアンリエッタ。

 俺の目を充血しているものだと勘違いしていたのを思い出して、不意ににやけてしまう。それが勘に触ったのかラルゴはベッドへ行き、村長を突き飛ばしてアンリエッタの首のダガーを押し付けていた。


「それ以上近づくなよ……! もし近づいたら……あ、あれ?」

「近づいたら、どうなるんだ?」


 『魔』を一だけ残して『速』を上げたので、ラルゴが後ろを向いた瞬間に走り出せばこれくらい訳は無い。

 俺はダガーを持つ手を掴み、買っておいたナイフでアンリエッタのロープを切った。そのままラルゴの手から遠ざける。


「アンリエッタ、ニルアナさんを」

「う、うん……!」


 「くそ! 待ちや……ってえ!? お、俺はレベル十の冒険者だぞ!? お前みたいなひょろいヤツの腕を振り払えないなんてことがあるか!? なんなんだお前は!」

「そうだな……もう信じてもらえるのは諦めたんだが、もう一度だけ言っておこうか。俺はカケル。別の世界から来た……回復魔王だ」

「ま、魔王だと……!? ハッタリか……! 聞いたこともねぇ魔王だ!」


 振り回したダガーが俺の胸を貫くと、俺はゴボっと血を吐いてしまう。


「は、はは! ざまぁみろ! ……え?」


 今ので寿命が減ったか。まあいい、腐るほどあるしな。


「嘘じゃないんだけどな? まあ今から死ぬお前には関係ないか……終わりだ『生命の終焉』」


 トングの時と同じく掴んだ手首から薄紫の光が放出し、なにかが俺に吸収され始めると、ラルゴがジタバタと暴れはじめた。


「う、うわ!? なんだこの手……! ど、どこから現れた!?」


 そういえばさっきのヤツも『手』が、とか言ってたな? 

 俺には見えないんだけどこいつらにはなにかが見えているらしい。狂ったように空いた手を振り回して追い払う仕草をしていた。

 そしてみるみる内に、髪の毛は白くなり、歯が抜け落ち、骨と皮だけになっていく。


「やめろ、掴むな! 掴まないでくれ! あひゃ!? か、身体が言うことを利かない……!? い、嫌だ! じにた、く、な、い――」


 抜け殻のようになったラルゴがベッドへドサリと倒れ込み動かなくなった。横ではアンリエッタがニルアナさんのロープを解いて体を揺すっていた。


「お母さん! お母さん!」

「ん……アンリ?」

「お母さん……良かった……」


 良かった、二人は無事みたいだ。となると、残りは一人。俺は村長を睨みつける。


「ひっ!?」

「村長さん、あんたももう終わりだ。大人しく捕まるんだ」

「お、おのれ……よくもワシの邪魔を……! 覚えておれ! 必ず思い知らせてやる!」

「あ! 逃げられちゃう!」


 アンリエッタが叫ぶも俺は微動だにしなかった。何故なら――


「さらばじゃ! ……ぶるへぇ!?」

「なにが『さらばじゃ』だ! 逃がす訳ないだろうが!」


 寝室から出ようとした村長をぶっとばしたのは……ビーンだった。

 ニルアナさんを助ける前に、近くに倒れていたこいつから先に回復させておいたのだ。気付かれないように移動して出口を塞いでもらうようお願いしていたのだ。


「ナーイス、ビーン! 見せ場があってよかったな!」

「うるっさい!? 腹立たしいけど、あんたのおかげでアンリ達が助かった。さて、それじゃお返しはさせてもらおうか……」

「あ、あわわ……ワ、ワシが悪かった……! た、頼む命だけは……!」


 尻餅をついた村長にビーンが指を鳴らしながら迫る。

 うむ、腹の傷は結構深かったから思う存分やるといい。村長が死にそうになったらヒールをかければいいし。マナポイントが尽きるまで何回でも。


 と、村長が死なないよう手を尽くそうと考えていた所で表が騒がしい事に気付く。


「やや! 窓ガラスが! カケルの言っていたことは本当じゃったな!」

「ええ! 私は信じていましたよ! アンリエッタちゃん! カケルさん! 無事!? 助けに来たわよ!」


 あの声は……!


「ミルコットさんにゼルトナ爺さんか! こっちだ!」


 二人だけかと思ったら警護団らしき人間も何名か連れてきているようだ。

 家の中にいる俺達の状況を見て、即座に行動に移してくれた。

 っと、その前に……


 「(『魔王の慈悲』)」


 俺はトングとラルゴを縛りながら手を掴み、あれだけ叫んでも発動しなかった『魔王の慈悲』を使う。


「あ、あれ?」


 アンリエッタが二人の様子を見て、目を擦っていた。

 そりゃそうだろう、さっきまで骨と皮だった奴等がある程度元に戻っているんだからな。


「村長さん……」


 警護団に連れて行かれる村長を見てニルアナさんが呟いた。すると村長は……。


「ふん、もう少しじゃったのに惜しいことをしたわ。もう少しマシな冒険者を雇っておれば……」


 悪びれた様子も無く、まだそんなことを言っていた。どうしたものかと思っているとビーンが拳骨を食らわせた。


「お前……!」


 激高するビーンを抑えて俺は村長の前へ立つ。


「貴様か……! 貴様さえフォレストボアを倒さなんだらこんなことにはならんかったんじゃ! 疫病神め!」

「違うぞ爺さん、俺は魔王だ」

「なにを馬鹿なことを。……なっ!?」


 俺は村長の正面から肩を掴み『生命の終焉』を使う。


「あ、あああ!? 手、手がたくさん!? はふん……」


 やっぱりなにか見えたらしくすぐに気絶した。そのまま二人の冒険者と一緒に警護団が引き取り、全てが終わった。


「ごめんなさい、すぐに来られたら良かったんだけど、踏ん切りがつかなくて……」


 受付の時とは違い、ローブとロッドといういかにもな格好なミルコットさんが俺に頭を下げる。ゼルトナ爺さんもしっかり鎧兜に剣を携えていた。


「わしは警護団を説得するのに時間がかかってのう。まあ、無事で良かったわい……」

「いや、あまり色々言えなかったから信じてもらえないかも、とは思ってたから大丈夫だよ。なんとかなったし」

「オレは先行したのに役に立てなかった……」

「いやあそんなことはないだろ?」


 するとアンリエッタがビーンを励ましていた。


「うん、刺されたのも私を庇ってからだし、村長さんも逃がさなかったから大丈夫よ! 本当にありがとうね!」

「そ、そうか……?」


 心なしか嬉しそうなビーンが鼻の頭を掻きながら照れる。はは、良かったなビーン。


「カケルもありがとう……あなたが居なかったら私達死んでいたわ」

「ま、気にするなって! 色々と助けてくれたお礼だ」

「本当になんと言ったらいいか……ところでカケルさん。大丈夫ですか?」

「え? 何がです?」

「その……全身血だらけなので……痛かったりしないのかな、と……胸も血が……」


 ニルアナさんが俺を指差してそんなことを言う。

 そういえばビーンにはヒールをかけたけど、自分にはかけてなかった……そう思った瞬間、目の前が反転し始めた。


「あ、あれ? そ、そうだ……ヒー……」


 どさ、っと俺は意識が遠くなっていく。

 血を流しすぎたのはマズかっただろうか。胸にダガーを刺されたんだもんな――


「ちょっと!? カケル! カケ――」

 

 ああ、アンリエッタの声が遠くなっていく……

 薄れていく意識の中で、俺はスキルがもうちょっと分かりやすくなってほしいと思っていた。TIPSは便利だけどな……もう少し……しんせ、つ……にならんかな――



 今度こそ意識が飛ぶ……その時、俺は声を聞いた気がした――


 『音声説明アシスト』を習得。

 『運命の天秤』を習得。


 レベルが上がりました。

 

 【ジュミョウ カケル】


 レベル5


 HP:255/255


 MP:2531/2531


 ジョブ:(未収得)(回復魔王)


 力:23 +3


 速:17 +2


 知:10 +2


 体:19 +3


 魔:28 +6


 運:16 +2


 【スキル】


 回復魔王


 ヒール:消費マナポイント 25


 ハイヒール:消費マナポイント 30

 

 能力値上昇率アップ


 全魔法適正


 全武器適性


 ステータスパラメータ移動


 全世界の言語習得:読み書き


 【特殊】


 寿命:99,999,887年


 魔王の慈悲:相手に自らの寿命を回復させることができる。


 生命の終焉:触れた相手の寿命を吸い取ることができる。スキルが強力になると一瞬で絶命させることも可能。

 

 TIPS:触れたスキルの説明を見る事が出来る。


 【音声説明アシスト】:レベルアップやスキルを覚えた際、音声で色々と知らせてくれる。


 【運命の天秤】:死ぬ運命にあった人間を助けようとすると、自身の寿命が減る代わりに死の運命を傾けることが出来る。ただし#$%&――。

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