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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第十二話 ゼルトナ爺さんによる冒険者講座、初心者編

「カケルと、言ったかの? 待たせたのう今度はお主たちの番じゃ」

「お……!? もういいのか? 子供たちは?」


 眠りかけていたところに声をかけられ、俺がハッとして言葉を返す。

 そこでさっきオッソと呼ばれていた子供が俺に白い歯を見せながら笑う。


「今度は俺達が横からあんちゃんたちの話を聞く番なんだよ! 冒険者になるかどうかはわかんねぇけど、聞いておいて損はないからな!」

「そうですそうです。あ、わたしはスィーといいます」

「兄ちゃん弱そうだなあ。槍、ちゃんと使えるのかよ? あ、オイラはゴルってんだ、よろしくな!」


 三人のガキ……子供たちがそれぞれ挨拶をしてくれたので、俺も返してやることにする。


「俺はカケルだ。冒険者登録したばっかりだから強くはないな。よろしく。で、一応、養成所としては問題ないのか?」


 俺がつぶやくとゼルトナの爺さんがコクチとうなずいた。


「うむ、すぐに使わずとも知恵はいくらあっても困ることはないからのう。帰っても構わんが、こやつらは帰っても暇じゃと言って帰らんのじゃ。ほれ、ビーンも挨拶をせんか」

「オレはいい。そっちのアホ面したヤツの名前は聞いたしな」


 フン、と鼻を鳴らしてビーンとやらがそっぽを向く。こいつは俺ほどではないがそれなりに年齢が高い。多分、十七とか十八歳くらいだろう。

 しかしいきなりケンカ腰とはご挨拶だ。だが、俺は大人なので怒ったりはしない。


「ビーンか、よ・ろ・し・く・な!」

「ぐああああ!? か、肩をすごい力で握るんじゃあない!?」


 ステータスは『力』に振っているので少し力を入れただけで悶絶していた。


「こら、仲良ぅせんか……まあ、カケルは今回初めてのようじゃから、基本的な説明をしてやろうかのう。まずはステータスからじゃが――」


 本で見た通り、の話をゼルトナ爺さんがすらすらと説明してくれる。


 『力』はそのまま、腕力や武器を持つための数値で、『速』は足の速さや回避能力に関係してくる。

 『体』は持久力や防御力、身体能力に関係し、上がってくると疲れにくくなったりジャンプ力が上がったりするということが分かった。


 『魔』は魔力で、魔法を使う才能を表しているらしい。

 最低でも十は無いと魔法使い系のジョブにはなれないとか『知』は頭の良さ……ではなかった……なんと閃きの度合いなんだってさ。

 魔法の話を少し聞いたところ、標準となる魔法以外は全部自分で考えるか、師匠を見つけて教えてもらう必要があるらしい。

 例えば魔法使いの弟子になったとして、魔法を教えてもらっても『知』が低かったら『理解』ができないので、覚えることができない、もしくは限りなく弱いものしか発動しないというのだ。

 以上のことから魔法はレベルアップで覚えるものではない。となると俺のヒールとハイヒールはどうしてレベルアップで覚えたのかという謎が残る……

 後、『知』が低いイコール『アホ』というわけでなくてよかった。

 で、最後に『運』だけど、この値は『事象』についての運ということらしく、回避や攻撃の時はもちろん、罠にかかりにくかったり、魔物に発見されにくいといったところに関係する。

 高ければシーフみたいな隠密性の高いジョブがいいぞと言われた。


「んで、相手のレベルとステータスは見れない、か」

「そうじゃ。ただ、ユニオンの職員はカードを魔法道具にかざしていろいろ確認するから見れるがの。口外はトラブルになるからご法度ではある」

「まあ、お前程度のステータスを見ても仕方ないしな」

「くっ……」


 さっきから絡んでくるなあコイツ。俺とは初対面のはずだけど、なんなんだ? 

 しかし俺が何かを言う間もなくゼルトナの爺さんが口を開く。


「では次は武器じゃが、得意武器は一つ作っておくといい。最初に選んだ武器がそのまま得意武器になることはよくあるが、お金に余裕ができたらいろいろ使ってみるのもいいじゃろう。カケルは槍を選んだようじゃが」

「ああ、リーチの長さは相手を寄せにくいからな。それと外での戦闘ならこいつが良さそうだと感じた。おかげでフォレストボアを倒せたな」


 すると、爺さんが目を見開いて明らかに動揺を見せた。横に座っていたビーンも俺を見て驚いているようだ。

 

「お、お主レベルはいくつなんじゃ?」

「え? 今は四だな。倒したときは二だったけど」

「二か……装備も初心者用の槍で防具も無しでか? ううむ……」

「さっきそのフォレストボアを運び込んできたからミルコットさんに聞けば分かるぞ? あとはアンリエッタが証人かなあ」

「まじか! あんちゃん!?」

「すごいです!」

「弱っちくなかったんだな!」


 どうやらフォレストボアを倒したということで子供たちの興味と尊敬を手に入れることができたようだ。


 しかし――


「……チッ」


 アンリエッタの名前を出したあたりで露骨に舌打ちををするビーン。ななんだってんだ……?


「まあ、嘘をついても意味はなかろうし、それはええじゃろ。なんにせよ自分に合った武器を見つけるのを忘れないようにな。む、もうこんな時間か……今日はここまでじゃ、明日はスキルと魔法、そしてジョブの詳しい話をするぞ」


 それでは解散とゼルトナ爺さんが締めた。するとビーンは俺を一瞥した後、無言で部屋から出て行った。


「一体どうしたんじゃあやつは? まあとりあえずまた明日な」

「ありがとうございました。他にもいろいろ聞きたいんですけど、また明日にでも」

「そうか? メモでまとめておいてくれたらワシがわかる範囲で答えてやるわい、じゃあの」

「あ、オイラ家の手伝い頼まれてたんだった!? またな兄ちゃん!」

「俺も帰るー」

「わたしもーばいばいお兄さん」

「おう、気を付けてな」


 爺さんが手をひらひらさせて出ていくと、子供たちもそれを追って部屋を出て行った。俺は部屋に一人残される。


「俺も行くか」


 何気に正午を回っているので、腹が減ってきた……ついでにフォレストボアの解体状況を確認しに行こう。


「さて、どうかな……?」


 俺は一階に降りて受付に顔を出す。するとちょうど窓口にミルコットさんが居たので声をかけた。


「ミルコットさん、フォレストボアどうなりました?」

「あ、カケルさん。講習終わったみたいですね? ゼルトナさんの都合でお昼までしかなくて申し訳ないけど」

「時間はいっぱいあるから大丈夫ですよ」

「そう言ってくれると助かるわ。フォレストボアは今ちょうど解体が終わったところなの。報酬はちょっと待っててね」

「ごゆっくりー」


奥へ確認に行くミルコットさんを見送り、俺は適当な椅子に腰かけて戻ってくるのを待つ。


「そうだ、新しいスキルを試してみるか」


 『命の終焉』とは名前からして物騒なスキルだが……まさかいきなり人を殺したりしないよな?  俺は念のため誰も見ないようにして呟いてみる。


「生命の終焉……」


どこかで悲鳴などがあがらないか身構えたが、周りの喧騒は変わらなかった。魔王の慈悲と同じで不発に終わったようだ。


「はあ……やっぱりか。この魔王っぽいスキルはやっぱりわかんないなぁ。TIPSを使うか?」


と、その時ミルコットさんが戻ってきて俺に声をかけてきた。


「お待たせしました!」

「ありが……と、う」

「? どうかなさいましたか?」


言葉を詰まらせた俺を見て首をかしげるミルコットさん。しかし、俺の視線はミルコットさんの綺麗な顔ではなく、頭の上にいっていた。


『ミルコット 寿命残:五百八十年』


な、なんだこれ……? さっきまではこんなの無かったよな。 まさか、これが生命の終焉の能力なのか……?

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