【番外記録①】ありがとう。平君。
少し冷ややかな風と暖かい太陽の光で私は目を覚ました。両親は仕事で忙しく家に帰って来ない日もあるので、小学生の妹、海の世話は私がしないといけない。
今日は『上空の城リピュタ』で観た卵トーストを作ろう。
トーストが焼き上がるまでの間、ふと私はあの日のことを思い出した。
✴︎
入学二日目の事。私は困っていた。
外は大雨。城南線は案外雨に強く、運転見合わせにはならない程度なのだけど問題はその後。家まで少し歩かないといけないのに傘が無い。
私はそんなに体が強くないからすぐ風邪をひいてしまう。ただでさえ友達を作るのが苦手な私が休んでしまったらまたひとりぼっちで学校生活を過ごさないといけない。もう悲しい思いはしたくないな…。
そう考えながら鬱々としていると
「どうしたの?」と隣の席の平君が声をかけてきた。彼は入学式の時も私を助けてくれた。
「か、傘が無くて…。けど歩かないといけなくて…。」
私は喋るのが苦手なのでまたボソボソと喋ってしまった。
最初はみんな話しかけてくれるのだけど、こんな喋り方だから一週間もしたらみんな話しかけてこなくなってしまう。平君ももう少し経てば話しかけて来なくなっちゃうんだろうなぁ…。
スッと黒い折り畳み傘が目に入る。
「良かったら使って。僕ずっと電車だし濡れても平気だからさ!」と平君。
「え、い、いいの…?あ、ありがとう。」
「全然いいよ!てか保健委員一緒だし、席も隣だからさ、いっぱい話そうね!!」
「で、でも私、友達出来た事無いし、喋っても楽しく無いと思うよ…。」
「そんな事無いと思うけどなぁ。ほら、初めて成宮さんと会話を交わした時はちょっとびっくりしたけど。喋ってみると暖かいというか、もっとお話し聞いてみたいなって思ったよ!そうだ!ぼ、僕が最初の友達って事でどうかな…?」平君は優しい目を細めてそう言った。
「あ、う、うん…」突然の事でポーっとしていると「じ、じゃあ、また明日!」とリュックを傘代わりににするのか頭の上に置いて平君はジタバタと走り去って行った。
私の体温が少し上がった気がする。
こんな日の雨なら濡れても風邪ひかないかもしれないなぁ。
✴︎
チン!とヘンテコな音を立ててトーストが飛び上がる。わ!と私は我に返った。
私は海を起こし学校へ送り出した後、自分も色々と支度を済ませ高校へ向かうため玄関の扉を開けた。何故だろう、あの日から扉が軽く感る。私、学校に行くのが楽しみなのかも知れない。またあの暖かい優しさに触れたいのかも知れない。
「ありがとう。平君。」
まだ温まりきらない世界の中、私は誰にも聞こえない声でそう呟いた。
たまに成宮さん目線の番外編も書こうと思っています。あと週間ランキングに載ったと通知が来ました!!ランキング的には最下位くらいな感じですが、初めて小説を書いている身としてはすごく嬉しいです!!いつか一位を取ってみたいですね。
今回もお読みいただきありがとうございました!




