黒瀬玲央の、ちょっと騒がしい休日
休日の朝。
アラームなしで起きるだけで幸福度が上がるのは、転生前から変わらないらしい。
ベッドの上で伸びをしつつ、玲央はぼそっとつぶやいた。
「……よし、今日は誰にも会わずに静かに過ごす」
そう、今日は完全オフだ。
絢もいない。
セレナもいない。
男子達からの“過剰なアプローチ”もない。
最高の休日のはずだった。
……だったのだが。
◆ 1. 街へ、のんびり買い物へ
玲央はお気に入りの喫茶店へ向かい、
コーヒーを飲んで読書でもしようと思っていた。
「……あれ、黒瀬じゃね?」
後ろから聞き覚えのある声がした。
振り返ると、
クラスの男子二人がこちらを見て目を輝かせていた。
「今日暇?よかったら一緒に――」
「ごめん、今日は一人でゆっくりしたいんだ」
玲央が微笑んでそう言うと、
二人はなぜか 撃ち抜かれたような表情 になった。
「っ……! 黒瀬……かっこよすぎ……!」
「こういう断り方する男子、どこにいんの……!」
逃げるように立ち去る玲央。
(なんで断るだけでモテエフェクトになるんだよ……!)
転生後の世界は、やっぱり生きづらい。
⸻
◆ 2. 喫茶店での静寂
やっと喫茶店に入り、
席に座ってカフェオレを頼む。
(いい……こういうのだよ……)
心がほどけていくのを感じたその瞬間。
カラン、と扉の音。
入ってきたのは――
絢。
玲央はコーヒーをこぼしそうになった。
(なんで……なんで今日に限って……!)
絢は玲央を見つけると、
「……あ、」とほんの少し目を丸くしたが、
すぐにクール面を取り戻す。
トコトコと近づいて、
無言で隣に座る。
「……ここ、空いてたから」
「いや、他にも空いてたよね?」
「……たまたま。別に、あんたと一緒にいたいとかじゃないし」
(うわっ……いきなり隣とかキモイかな……心臓死ぬ……)
玲央は笑ってしまう。
休日の静寂は、すでに消えた。
だが――嫌ではない。
⸻
◆ 3. さらに騒がしくなる予感
二人でカップを傾けていると、
喫茶店の扉が再び開いた。
「あれ?玲央?……に神宮寺」
落ち着いた低い声。
青い長髪が揺れる。
セレナ。
玲央はテーブルに頭をぶつけそうになる。
「奇遇だね。まさか、二人きりで……デート?」
「デ、デートじゃない!!」
珍しく絢が即答で否定し、
セレナがくすっと笑う。
休日の静かな時間?
そんなものは最初から存在しなかった。
玲央はため息をつく。
(……まあ、これが今のオレの“普通の休日”なんだろうな)
カップを口に運びながら、
悪くないな、と思っていた。




