第6話「青き王女からの誘い一君の選択」
放課後。
玲央は校門の前でぼんやりと夕日を眺めていた。
すると、セレナが颯爽と現れた。
「来た。」
彼女の言葉と共に、胸の奥が静かに高鳴る。
「ちょっと先に、“校舎裏の彫刻庭園”へ――君を案内したくてさ」
彫刻庭園――この学校の古い校舎の裏に、小さな石の彫像がたくさん並ぶ静かな場所がある。
人が少なく、夕暮れ時はとても雰囲気がある。
玲央は少しためらったが、好奇心が勝った。
「いいけど……誰か来たらまずいだろ」
「大丈夫。僕がいるから――」
そう言って、セレナはふと軽くウィンクした。
彫刻庭園。
西日に照らされて、石像が影を長く落としている。
セレナがゆっくり歩きながら言った。
「昔さ、君と同じクラスだった時──
黒瀬は、いつも遠くを見ていた。
静かで、目立たない。でも、どこか光があった」
その言葉に、玲央は少しだけ視線をそらす。
「覚えてたのか……?」
セレナは笑った。
そして――
「当然だよ。僕は、美を見る目があるから」
その瞬間、セレナの顔が、王子様ではなく――ただの少女に戻った。
――それが、なぜか妙に切なかった。
「……あのさ。俺、前みたいに“普通”でいたいだけなんだ」
「だから、あんま関わらないでくれ」
その言葉を聞くと、セレナの瞳が一瞬だけ滲んだ。
だがすぐに、柔らかな笑みを浮かべて言った。
「わかった。でも覚えておいて。
君が“普通”でいられるなら――それもまた、美しいと思う。
だけど、僕は君を“普通”にしておくのは寂しいと思う――。
だから、いつか選んでよ。
もし君が“普通でいたい”なら、私は引くよ。 でも……もし迷ってるなら、私を選んで欲しい な。 私と一緒にいれば、君をもっと輝かせられるから。
考えておいてね。」
怜央は黙ったままだった。
(輝くとか分かんねーよ。俺はこれからも普通でいたいし)
夕暮れの空を背景に、校舎の影。
その中に、絢の姿があった。
彼女は遠くから、セレナと玲央の二人を見つめていた。
その表情は――怒りでも嫉妬でもなく、静かな決意を秘めていた。
(……ふん。覚えておけよ。あんたなんかに、絶対――玲央、渡さねぇからな)
小さくそう呟き、絢は夕暮れの校舎を背に、姿を消した。




