第5話 「青き王女、転校――そして三角形の始まり」
夕暮れの校門の前。
オレンジ色の空を背に、青髪の長身の少女―― 蒼城セレナ はゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
「久しぶりだね、レーオ。」
その声は低く、滑らかで、そして確信に満ちていた。
普段なら――たとえ女子同士でも――聞き慣れないほど“丁寧で色気のある言葉遣い”。
だが校庭のざわめきも、放課後の夕日も、その声の気配にかき消されるほどだった。
「……な、なんでお前がここに――」
玲央の言葉は震えていた。
セレナは微笑み、両手を軽く広げながら答える。
「転校してきたんだ。君と同じ高校に。
それだけで、この再会がどれほど美しいことか、分かるだろう?」
彼女の言葉に――傍らの 神宮寺絢 の表情が変わる。
眉がぴくりと動き、瞳が鋭くなる。
空気が、一瞬にして張り詰める。
しかしそんな空気を気にもせずセレナは口を開いた。
「では、また学校で会おう」
数日後
昇降口付近には、いつの間にか人だかりができていた。
男女問わず、多くの生徒たちがセレナを取り囲み、囁き、目を輝かせていた。
セレナはゆっくり胸を反らせ、王女様のように微笑む。
「君たち、初めまして。蒼城セレナ。
これからよろしく――ね?」
その堂々たる態度と美貌は、まるで学園の中心に光を放つかのようで、
女子生徒たちは眼を見開き、男子生徒たちは期待と歓声を上げた。
そんな熱気の中、絢はただ黙って――冷たい視線をセレナに向けた。
心の中で――
(――なんなの、あの女。何様のつもりだ?)
と、静かな怒りと狼狽が入り混じる。
授業が始まる直前――廊下で。
セレナは気軽に玲央の肩に手をかけ、ささやいた。
「ねえ、玲央。放課後、少し時間ある? 君に見せたいものがあるんだ」
その声色に昔を思い出すような懐かしさを、玲央は感じた。
だが同時に、胸の奥がざわついた。
背後から、絢の冷たい声が聞こえてきた。
「……あんた。あんまり調子乗んなよ。黒瀬は私の友達だ――
つーか、昔馴染みだが知らないけど今更もう関係ねえんだから近づくな」
セレナは振り返り、にこりと笑う。
「強気だね、神宮寺。いい。その強さ、嫌いじゃない――けど、
私の玲央に近づくのも“許可を得てから”にしてくれ。僕は、彼の“美”を尊重するのが好きだから」
絢の肩が、一瞬だけ震えた。
だが絢は言い返す。
「……ほざけ。
“美”だの“尊重”だの、気取った言葉並べてんじゃねーよ。
あんたみてーな奴に、黒瀬の何がわかんだよ」
言葉は荒い。音も荒い。
──それが、ぎこちなさを隠せずに震えていた。
セレナは微笑み、何も言わずその場を去ろうとしたがこちらを向き直した。
「1つだけ言わして貰おうかな。今の君よりは知ってると思うよ」
──その背中を見送る絢は、普段の冷静さを捨て、まさに“獣のような眼”で睨んでいた。




