第4話「帰り道の分かれ道」
図書室を出ると、外はすでに夕暮れ。
校舎の影が長く伸び、風が少し冷たかった。)
「なぁ、途中まで一緒に帰らないか?」
絢は頷き無言で歩く。
横顔は相変わらずクールだが、歩幅がほんの少し速い。
(落ち着け私……。
普通に歩くだけ……。
別に、普通……
てかなんで返事しなかったんだよ!私のばか!)
――さっき図書室で「嫌じゃない」と言ってしまったことを
彼女はまだ引きずっていた。
玲央は、そんな絢の“いつもと微妙に違う空気”を感じ取っていた。
「神宮寺。ほら、これ」
玲央が手を差し出すと、絢は瞬きを一つ。
「……なに?」
「さっき貸してくれたやつ。写し終わったから」
「あ……」
絢は気づかれないように視線を落とし、ノートを受け取る。
その手がほんの少しだけ震えた。
(やば……。指触れた……。
いや違う、触れたっていうか……近かった……近すぎた……!)
玲央は絢の耳が赤くなっているのを見て、胸があたたかくなる。
「ありがとな。すげー助かった」
「……別に。ただ、気になっただけ」
「気になるって、勉強のこと?」
「……勉強のこと」
(勉強じゃないけど!? うわああなんで言い直さないの私!!)
絢は横を向いたまま、ごく小さく息を整える。
夕焼けの光が、彼女の横顔をやわらかく照らしていた。
玲央は、そんな絢の“素直になりきれない不器用さ”が
無性に愛しく感じられてくる。
「……あのさ。明日も、もしわからないとこあったら一緒に――」
玲央が言いかけた、その時。
「お前が女子と並んで歩いてんの、なんか意外だな」
背後から落ち着いた声がした。
二人が振り返る。
夕日を背にして立つ、長い髪の女子。
明るい雰囲気なのに、どこか特別な気配をまとっている。
玲央の顔を見るなり、彼女はふわっと微笑んだ。
「久しぶり、レーオ」
「……なんで、お前がここに……?」
絢は横で固まっていた。
(ちょ、え……誰?
なにその“当然知り合いです”みたいな空気……?
は、名前呼びすて??)
女子はゆっくり歩み寄り――
「また会えて嬉しいよ」
と、目を細めた。
絢の心臓は、とっくにバクバクを通り越していた。
(……誰……この女……)




