「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その22
「何をわめいている小娘…」
夫婦池から現れたのは、
ずぶぬれのパーシングだった。
足や腕に絡みついている
機械兵団・五百羅漢のパーツが
戦闘のすさまじさを物語っている。
逸鬼の横に駆けつけた萌は、
「これ以上誰も傷つけさせませんっ!」
と言うが早いか、
対鬼化弾を装填したグロッグ19を、
スカートの下から取り出すと、
パーシングにその銃口を向けた。
「無駄なことを…」
パーシングがそう呟いて走りだすと、
萌もグロッグを捨て、
背中に隠し持っていたサブマシンガンMP5Kを
オートで撃ち始めた。
「20メートル後退します」
と逸鬼に告げた萌が、
弾倉を交換しながら後退していく。
逸鬼もパーシングに肉薄されないように
いなしながらじりじりと下がっていく。
下がった先にあたかじめ隠しておいた
三脚銃架に軽マシンガンMG42 を乗せ、
弾薬箱から弾薬ベルトを取り出してセットすると、
パーシングに弾幕をはる。
バリバリバリという発射音と
もうもうと上がる白煙でパーシングの姿が少しぼやけるが、
そこ目がけて弾は吸い込まれていく。
「さすが稲村のアンバランスサーカスのふたつ名は
伊達ではないな…」
そんな軽口を叩きながらも
パーシングの動きを逃すまいと
逸鬼の全神経は前方に集中している。
「…これだけの量となると、
すべてがヒヒイロカネの弾丸とはいかんようだな…。
だがところどころに混じってるだけにやっかいではある…。
だがそれも--」
もうヒヒイロカネの弾丸がないと踏んだパーシングが、
カラダにまとわりついていた
五百羅漢のパーツを盾にしながら
こちらに向かって疾駆してくる。
「まだもう少しあるんですけど、
それは使わずにすみそうなのです」
萌がそう言い終わる前に、
北の方から
ゴ---ッというエンジン音が近づいてきて、
汎用仏型決戦兵器<鉄観音>が
地響きとともに着地した。
つづく




