「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その16
結繪や音音たちが
幽冥世へのゲートをくぐり、
薫子と萌以外の
避難できる人員はすべて脱出させた江ノ島要塞司令室では、
逸鬼とパーシングの死闘が続いている。
「逸鬼っ!」
最後の脱出用チューブに乗り込んだ薫子と萌が、
身を乗り出して叫ぶ。
パーシングは片腕を切断されたものの
逸鬼と互角の戦いを繰り広げている。
少しでも隙を見せれば、
逸鬼といえどもタダではすまないだろう。
<この施設は、あと60セカンドで自爆により閉鎖されます。
まだ施設内にいる人員は至急施設外に退去してください。
54、53、52…>
「先に行って!
私は元の姿にもどれば大丈夫だから!」
「そんなわけないでしょ!」
萌が、
ヒヒイロカネの対鬼化ウィルス弾を装填したグロッグ19を構えて照準を合わせようとするが、
二人の動きが素早すぎて撃つことができない。
「一発も発射できないなんて…」
くるくると体を入れ替えるふたりに焦れる萌のエプロンのポケットから、
少女の形をしたフィギュアが落ちると、
まるで操り人形の様にむっくりと起きあがった。
そのフィギュアがトコトコと歩き出し、
二人が火花を散らしているその中へと入っていく。
「な、何あれ?」
それに気付いた薫子が声を上げると、
照準を合わせることに集中していた萌もフィギュアに気付いた。
「あっ! 華子さん!?
危ない!」
そのフィギュアは、
以前薫子が、
付喪神がついてるからと
萌に弾正府に預けに持っていかせたものの、
萌が付喪神に気に入られて、
いつでも大事に持ち歩いているものだった。
つづく




