「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その13
「何故逃がすのです!
あの者は白亜を殺めたのですよ!!」
エルジェベートが塔の方へ向かって飛びすさって行くのを見て
小太郎さんに駆け寄った瑞葉ちゃんが詰め寄った。
「まあまあ、
殺さなくていいなら
その方がいいじゃないですか?」
「貴様っ!」
更に詰め寄ろうとする瑞葉ちゃんを制して、
「あのまま逃がしてよかったのか?」
とタチアナ大佐も今度の処置には疑問を投げかける。
「--そんなことより、
塔はすでに占領され、
その妖の戦力も当てにならないようなので、
策戦の変更が必要だと思いますよ」
小太郎さんは、
追いついた私たちの方を見てそう言った。
傷ついたとはいえ、
エルジェベートが本気を出した場合、
こちらにも人的被害が出るおそれがあるのは私でも分かる。
より理性的な瑞葉ちゃんがわからないわけがなく、
彼女はくやしそうな表情のまま、
うつむいてしまった。
「――そうすると、
あの塔を守るために、
相当な戦力を配置してあるか、
ジェネレータがめちゃくちゃに壊されているか…」
と問いかける小太郎さんに、
「私なら、戦力の分散を避けるためにも、
二度と結界が張られないようにするためにも、
ジェネレータを徹底的に破壊するところですが…。
契約者たちは日の本への直接侵入を可能にするために
相当の戦力で防衛しているはずですわ」
と音音さんが答える。
「そうすると
結絵ちゃんたちの合流を待って塔に向かわないと
どうしようもないわけか…」
音音さんの予測を聞いてそうつぶやいたネバダに、
静葉さまが、
「いいえ。
音音の提案は、
すぐに引き返して結絵ちゃんたちと合流した後、
敵の中枢を叩きます」
と宣言した。
つづく




