「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その11
「――私は魔女なんかじゃない。
政争の道具にされただけ。
だけど、神は私に新たな生をお与えになり、
私に魔女のごとく振る舞うことをお望みになったの。
だってそうしないと
この体は腐ってしまうし、
抑えきれない破壊衝動が、いろんなものを壊そうとするんですから…。
今だって、私を怒らせるから、ほら――」
そう言ったエルジェーベトの腕の筋肉が
見るまに盛り上がっていく。
「教会はどれだけ死者を蘇らせたら気が済むんですの…」
うんざりといった感じ身構える私たちの横を
何かがすっと通り過ぎた気がして横を向いた途端、
「ま…待て………」
とエルジェベートが言うのが聞こえる。
慌ててそちらを向くと、
腕から流れる血を押さえて蹲るエルジェーベトがいた。
その横には、
剣の切っ先をエルジェベートの咽喉元に突きつけた
タチアナ大佐が立っている。
「貴様のように普段鍛えていないモノが鬼化しても、
基礎体力の勝る私に勝てる筈もないじゃない。
今のは挨拶代わり--腕を切り落としてもよかったんだけど…。
日の本の妖たちはどうしたの?
大人しく白状するがよい」
「………そ…それは…」
エルジェベートが何か言おうとした刹那、
ふたりの頭の上で爆音が響き、
一瞬気をとられた隙に
エルジェベートがタチアナに襲い掛かった。
「くぅっ…!?」
不意を突いたにもかかわらず、
うめき声を上げたのはエルジェベートの方だった。
つづく




