「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その9
「こちらも急ぎますわ。
まだ幽冥世でがんばっている、
日の本のあやかしと連絡できるといいんですが…」
「さっきから念を飛ばしてるのですが、
何かノイズのようなモノで妨害されているような感じで
いらえがないのです…」
弾正府でのブリーフィングのときに見た地図では、
前方に見える丘の向こうに
ジェネレータを収めた建物があるはず。
それだけでも確認したくて、
全員が小走りで丘を登りきる。
その先はカルデラのようになっていて、
その真ん中に不思議な形をした小さな塔がたっていた。
「お待ちしておりました」
塔に見とれていた私たちは、
不意に声をかけられて緊張が走った。
「静葉さまご一行とお見受けしました。
瑞葉さま、ナドワさま、私でございます」
そう言って姿を現したのは、
胸元に懐剣を挿した和装に身を包んだ、
少し目つきの鋭い長身の女性だった。
「白阿!
10年ぶりなのです。
みなはぶじですか?
こちらに来てからずっと連絡が取れなかったので
心配してたのですよ」
「契約者たちの妨害で念波もままなりませんが、
みなで塔を守っておりました」
「――みなさん、こちらは白阿。
前の戦の折に助けてもらったのです。
こちらは、弾正忠、
化野音音様、それから…」
一通り私たちを紹介した瑞葉ちゃんは、
「――萌がよろしく伝えてくれと言っていたのです」
と萌ちゃんの伝言を伝えた。
白阿と呼ばれたあやかしは、
「萌さまも息災で?」
と、さらに質問を重ねた。
「私たちがこちらにくる直前までは元気でした…。
残念ながら、特異点の向こうは、
第二契約者どもに占領されたようなので、
萌の安否は不明なのです…」
「そうですか…」
「そういうわけで
一刻も早く現世に戻りたいのです。
和尚様のお力もお借りして
ジェネレータの修理をさせてほしいのです」
それを聞いて顔を曇らせた白阿は、
「…先日大きな戦いがありまして、
和尚様はその折行方知れずに…」
と答えた。
「…そんな…10年前にお借りした
玄翁をお返しできなかったから…
――何と言ってお詫びすれば…」
そう言って瑞葉ちゃんはがっくりと肩を落した。




