「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その5
「私の腕がそんな小さな刀で切断されたのか…?
鉄よりも硬い筋肉繊維だぞ…
…な…なんなのだその刀は?」
スッ――と薫子の手を離れたその懐剣に
白いもやのようなものがかかると、
次の瞬間、そこには西御門学園中等部の制服を着た
少女が立っていた。
「私の名は刀鍛冶安綱が女、
大原逸鬼。
鬼裂ねえさま、
殺鬼ねえさまたちのようには参りませんが
鬼が私に触れた部分は確実に切りおとします」
そう言った逸鬼は、
胸の前で逆手に持ちかえた
懐剣の切っ先をパーシングに向けると
猛然と突進した。
ガキンッ!!
という金属と金属がぶつかる音が室の中に響渡る。
「--噂に聞く鬼切りの刀がまだあったかっ!」
「理解したなら覚悟しなさいっ!」
辛うじて軍刀を引き抜いて防いだパーシングだったが、
右左にステップを踏みながらきりつけてくる逸鬼の素早い切り込みに
徐々に押されていた。
「むざむざは負けぬわ!」
パーシングの全身の筋肉が盛り上がり
完全な鬼と化していく。
「大原の末女とはいえ、
あなたの何倍も生きておりますから、
よも遅れをとることはございません」
瞳に冷たい光を宿した逸鬼が、
パーシングに向かって切りつける。
一合目を軍刀で受けたパーシングだったが、
次の瞬間には逸鬼の姿を見失っていた。
殺気を感じて顔をかばった
切られたほうの腕の上腕部をさらに切り飛ばされる。
ひとならずざるものふたりの、
すさまじいまでの攻防が繰る広げられるなか、
無機質なアナウンスが、
確実にカウントダウンを進めていく。
<この施設は、あと145セカンドで自爆により閉鎖されます。
まだ施設内にいる人員は至急施設外に退去してください。
140、139、138…>
つづく




