「豪快! 両国夢想」第6話「神なるもの」その4
萌の周りには、
万が一のときのために瑞葉が置いていった数十匹の管狐が、
鬼の力を受け止めるように丸く並んで浮かんでいる。
「ほう、狐の眷属に加護されているのか…」
動きが止まったところで
素早く横に跳躍した萌に、
パーシングの腕が再び振り下ろされる。
「--だがパワー不足はどうしようもない」
パーシングの筋肉が隆々と盛り上がり、
一瞬バヨネットに抑えられていた腕を強引に振りぬいた。
萌は司令室正面のメインモニタにまで飛ばされ、
モニタのパネルにめり込んだ。
「桂木中尉!」
「畜生っ!!」
それを見てパーシングに発砲しそうになった司令部要員に、
「よせ、撃つなっ!
おまえたちに歯の立つ相手ではないっ!!」
と制した薫子は自らパーシングの方へ近づいていく。
「貴様のごとき人間をやめてしまったものに従う気はない。
私は捕虜になるよりも
潔い死を選ぶ――貴様も命のあるうちにとく失せよ!」
そう言った薫子が持っていた懐剣を抜き放ち斬りつけると、
紙でも切るかのようにスパッと腕を分断した。
「--!? 何? ばかな…」
血のドクドクと吹き出す切り口を見ながら
パーシングは呆然と立ちつくした。
つづく




