「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その20
西御門学園の武道棟の最上階。
曼珠沙華の咲き乱れる
純和風の空中庭園の中に佇む二楽亭は、
寝殿造りっぽい2階建ての建物。
その一角にある広間で
幽冥世での
結界再展開用ジェネレーター修復に向けて
ブリーフィングが行われている。
「今回の作戦は、
10年前に停止したジェネレーターの修復と
その再起動による
日本全土を覆う結界の再展開が
第一目標ですわ。
そのためには…」
プロジェクターから映し出される映像が
ニューヨークの地図に変わった。
「ここ弾正府の特異点は10年前に失われましたが、
同じ年にニューヨークで、
特異点がイレギュラー発生したデータを元に
我がasuka ltd.傘下の飛鳥重工が
江ノ島の岩屋洞窟に特異点を発生させて見せますわ」
完成した特異点発生機関のスペックを
プロジェクターの横で自慢げに話すのは
仕立てのいいスーツをバリッと着こなした、
飛鳥大納言薫子さま。
その隣にはメイド服に身を包んだ桂木萌さん。
あんな格好をしていても、
”アンバランスサーカス”の異名を持つ
検非違使のナンバー2
検非違使佐なんだとか。
「こちらの十三部集の戦力は
現世での旧自衛隊の反転攻勢を全力支援中なので、
静葉ねえさま、葛葉ねえさま、瑞葉ちゃんに
弾正伊と私と三狼に加え、
狢とナドワとその精霊が
在住さんの護衛として同行しますわ」
「ちょっと待ちなさい。
今度は私たちもいっしょにいく」
ヴォスネンスキー鬼兵連隊を率いる
タチアナ皇女大佐が立ち上がって発言する。
「それとも我らが信用できないとでも?」
強気な発言に、
これは紛糾しそうだなぁと思っているところに、
「ボクも一緒にいこう」
と部屋に入ってきて発言したのは、
まだ私が会ったことのない男の子だった。
「小太郎…キミ、まだ本調子じゃないでしょう?」
と結繪ちゃんが言うのとほぼ同時に、
「ピラト…!」
とタチアナ皇女大佐が呻くようにつぶやいた。
つづく




