「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その17
「な…凪ねえ…あの人は…っ…」
私の腕の中で在住が何か言おうとしてるけど、
彼女が走ってこっちに近づいてくるので、
さらにぎゅっと抱きしめる。
ムゴムゴと何か言いたそうだけど、
無事に生き残ったら聞いてあげるから、今は我慢してっ!
周りの人たちも何か言ってるようだけど、
ついに私の傍にきた彼女は、
「あのー、凪さん…お取り込み中申し訳ないのですが、
そのコンビニの袋、いただけるかしら?」
と言われたが、一瞬何を言われたか理解できない。
(えっ!? いったい何言ってるの?)
思考がパニックを起こしてる私は、
「これは渡しても在住は渡さないっ!」
と言って、掴んでた袋を勢い欲彼女の方へ差し出した。
妲己に似た彼女は、
「ありがとうございます~」
と言うが早いか、中からごそごそと包みを取り出した。
それを横目で見ていた私は、
その袋の中から、
経木で作られたお弁当箱が取り出され、
ふたを開けると細長いお稲荷さんが入っていた。
「凪さん大丈夫ですよ。
コンビニのお稲荷さんをほったらかしにして
光泉のお稲荷さんに飛びついたんだから、
今、意識を支配してるのは、
葛葉さまか静葉さまのどちらかでしょう…」
そう言ったのは護衛してくれてた隠神さんだった。
「じゃあもう…」
それで安心した私は、
無意識のウチに腕の力を抜いてたらしく、
私の腕の中からすり抜けた在住が、
「ぷはぁ--………凪ねえ…
だから大丈夫だって言おうとしたのに…」
と大きく息を吸いながら言った。
つづく




