「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その16
「みんなはどこに!?」
「4人とも素粒子レベルまで細胞を分解された上、
再構築されたのが彼女ですわ」
一瞬何を言われたのか分からず考え込むと、
音音さんが、
「簡単に言うと、さっき結繪ちゃんが言ってたように合体ですわね」
と教えてくれる。
なるほど、合体かー…なんてあっさり納得しそうになったけど、
人が合体するなんてことができるのっ!?
「驚くのも無理はないですが、
静葉ねえさまたちは、
もともとは妲己かあさまだった殺生石から生まれたので、
問題はないのです。
ただ、結繪ちゃんは異分子なので、
プロトプラストと同じような作用をして、自分でもしているんだろう?
突然変異を引き起こす可能性が心配だったのですが、
それは問題なさそうですわね」
プロトなんとかで突然変異はしなかったわけだ…。
「ただ、前回合体したときは、
結繪ちゃんの体がベースになっていたのですけど、
今回は妲己の体がベースになっているようですわ…。
…肉体は良いとしても人格融合の末、
妲己に意識が乗っ取られていないかどうかが大問題ですわ」
「その場合、
結繪さんだけじゃなく、
葛葉さまたち三姉妹もいないので大ピンチっていうこと?」
イチかバチかみたいな作戦に驚きながら聞くと、
「そうなりますわね…。
ちょっとこれ持っててくださる?」
音音さんは、そう言うながら私にコンビニ11pmの袋を持たせる。
その中から音音さんが取り出したのは、
お稲荷さんのお弁当?
「どちらにせよ、
妲己なのか、そうじゃないのか確かめる必要がありますわ」
「そんなことどうやって?」
「--意識は融合しても、
葛葉ねえさまと静葉ねえさまという尋常ならざるおりなりさん好きが、
これを前にして黙ってられるはずはないのです。
妲己に支配されてなければ、
おいなりさんに目が眩まないはずがないのです」
お稲荷さん弁当の包みを開きながら、
4人が合体したという人物の方へと近づいていく。
ところが彼女は音音さんに何か渡すと、
コンビニのお稲荷さんには目もくれず
こちらに近づいてくる。
あっ…じゃあ意識は…それより、彼女の目的は…
もしかして在住を狙ってるの!?
そう思った私はとっさに在住を抱きかかえるようにしてその場にしゃがみこんだ。
つづく




