「豪快! 両国夢想」第1話「相続人を探し出せ」その3
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私は公園のトイレに入ると、メモリチップをスマートフォンで読んでいく。
(日系6世藤谷…信尭…のぶたかって読むんだ。
お偉いさんの親戚って、名前から高級な感じで庶民とは違うなぁ)
ふむふむ、資料によると日本滞在中に仏教に傾倒して、
今は江戸川ゲットー内にある新興宗教「愛法院」にいる可能性が高いという。
遺産目当てに洗脳されたか、なんか変な電波を受信しちゃったか知らないけど、
これは連れ出すのに骨が折れそう。
藤谷老人の資料は未だ続いてるけど、
あとで読もうと思ってトイレの個室を出ると、
なんだか人相の悪い連中が3人ほど立ちはだかっていた。
「なあ姉ちゃん、一発やらせろよ」
「あらあら、ソレって他人にお願いする態度じゃないですね」
こういう悪い子にはキチンと行儀作法を教えてあげないと、
ゲットーの治安が悪くなる一方。
「今、ちゃんと謝るなら許してあげますけど…」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ!」
そう言ってつかみかかってくる男の腕を取ると、
そのまま一回転させるようにトイレの便器に顔を押し込む。
続いて襲ってきた二人も同様に便器に押し込んだ。
「わたし、護身術は相当つかうんですよ」
沈黙した三人にそう言いはなったとき、
♪ポロン~という私のケータイメール着信音が、
あらぬ方から響いてきた。
見ると男のひとりが顔をつっこんでる便器の脇に、
こんもりと盛り上がったウンチの中から、
私のケータイが半分だけ顔をだしていた…。
「サ、サイアク…orz…」
私はポケットの中からたたんで持ち歩いてるレジ袋を取り出すと、それでケータイを摘み出した。
うええっ。
きちゃない><
そのまま袋に入れて、ひっくりかえっている一番大きな男の足を持ち上げ、
踵の位置に置くと踵を落とす。
何回かくり返して、電話機の物理的な破壊に成功すると、
棒で袋の端を持ち上げて、ゴミ箱に放り込んだ。
(ツブラヤに、もういっかいあのデータもらわないと…)
でもその前にケータイを買い換えないとどうしようもないので、
錦糸町駅前のケータイショップに向かうことにした。
その4につづく