「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その14
角を曲がると、
そこには何百という鳥居が並んでいて、
その先に左右に灯篭を配した扉が見えてきた。
嫌な気はそこから出ているようで、
扉に近づくほどじんわりと嫌な汗が背中を伝う。
「おかあさま、静葉ですわ。
扉を開けますわよ」
そう声をかけると、小さく何かを唱えると
指の先に乗せるようにして扉に触れると、
左右に戸が開いていく。
部屋の奥には畳が敷いてあり、
そこに注連縄で戒められた葛葉さまが目を閉じて座っていた。
「かあさま、狐なのですから狸寝入りはおやめくださいな」
静葉さまはそう言うと部屋の中に上がっていく。
私たちも続いて入っていくものの、
葛葉さまの中にいる妲己から放たれる威圧感がすごい。
「このままではお互い埒が明かないのは明白ですわ。
どうでしょう? 私たちに強力していただくわけには
まいりませんでしょうか?」
静葉さまは、葛葉さまの前に座るとそう切り出した。
「人を贄として我によこすというのであれば
強力するのになんの依存もないが、
それは許されぬ仕儀であろう?」
そう言った妲己は、
いきなり立つと、戒めていた注連縄を引きちぎった。
「さがってっ!」
音音さんはそういうと、
私と在住の前にたちはだかり、
周りは隠神さんほかの司たちが固める。
その間に妲己は静葉さまを取り込もうとしているようで、
ふたりの体は金色に輝いていた。




