「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その11
「今、幽冥世…、
この世と寄り添うようにしてある、
もうひとつの世界のことですわ…。
そこにある
結界を長期維持するジェネレーターの
エネルギーが枯渇していて
結界の再展開が出来ない状態ですわ。
ですけど、飯綱の珠を制御できれば、
そこからジェネレーターにエネルギーを供給できるはずなのですわ」
「はず? そんな……そんな不確実な方法を試すために
在住を危険にさらすつもりなの? そんなこと…」
「いえ、99%は間違いないですわ」
「じゃあ危険はないの?」
「…それは実際にやってみないと…
としか申し上げられませんわ。
ですけどそこは弾正府の総力を上げて
安全確保をさせてもらい…」
「葛葉さまを飯綱の珠に支配されてしまったのに?
葛葉さまは弾正府の守り神なんでしょ?
ぜんぜん保障にならないじゃないっ!」
なにそれ…。
この世と別次元みたいな世界で、
なんの保障も無い状態で在住を行かせられない…。
音音さんと完全に対峙態勢に入った私の背中に、
ぽすん、と誰かが抱きついてくるのを感じた。
「やるよ…」
振り返るとじっと聴いていた在住いて、
意を決したように
私のほうを見上げて言った。
「凪ねえ――、
ボクにしかできないならボクがやらなきゃ…」
「だって何が起こるかわかんないだよ…」
一瞬反射的に言い返そうとしたけど、
在住、ああ見えて
こうと決めたことは何があっても曲がらないってことを思い出して止めた。
「――わかった…。
その代わり、私もいっしょに行くのが条件」
この華奢な在住をひとりで行かせるなんで、ぜったいに出来ない。
これだけは譲れない。
「わかりましたわ。
では、これから地下の結界迷宮へ降りて、
葛葉ねえさまに入り込んでる珠を回収しますので、
あなたにも同道していただきます」
つづく




