「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その10
「で…でも、在住は、
お父様の連れ子でママの子じゃない…」
「そう、生まれたというのは、
潮少佐が細川家に嫁した段階で、
彼女のオサキ狐が在住さんの能力を認め、
彼に強力した結果、ということですわ」
「………」
「魔王と呼ばれた細川政元と契約を交わした狐たちに加え、
母方のオサキ狐たちは、
体内にあった飯綱の珠の力と
在住さんの潜在能力のおかげで、
それ自体の力も強まっておりますわ。
できれば在住さんを戦いに巻き込みたくないということでしたが、
もはや状況がそれを許さないのですわ」
「…だから戦えと…」
「できれば」
「あの子の性格は戦いになんか
絶対に向かない」
「それは承知しております。
ですが、第一契約者たちと結んだ第二契約者たちの攻勢は苛烈を極め、
各地で蜂起した味方は苦戦を強いられております。
それに今次の日本奪回作戦が成功したとしても、
日の元全体を結界で覆えねば
数で勝る敵どもにふたたび蹂躙されるのは必定」
「………」
音音さんの言うことは正論だ。
このまま負けそうな戦を黙って見ているのは間違いだということは、
感情論としては正しく見える。
だけど、その感情に従った結果、
この戦争で死んでいく人たちがいる。
在住をそんな死者の列に加えたくないと思うことは間違いなの?
つづく




