「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その8
「今、葛葉ねえさまの体を乗っ取ってる妲己は
昔、朝廷軍に征伐されて、殺生石になったのですわ。
その石は、瘴気を放って付近を焦土としてしまったので、
朝廷から遣わされた僧玄翁がそれを砕いた。
でもそのとき砕かれた殺生石の破片は
大きなものは葛葉ねえさまたちになり、
小さなものは飯綱や管狐、
オサキなんて呼ばれる
狐のあやかしになりましたの」
「………」
そんな昔のことが、
私と何が関係あるんだろう…。
「それらに憑かれた家は、
代々<クダ屋>とか<オサキ屋>とか呼ばれてましたけど、
21世紀までに、大家族だった家の単位はかなり崩れて、
家系の記憶は風化していったのですわ」
音音さんは一息つくとさらに続ける。
「凪さんの母方の家もオサキ屋と呼ばれる
家系だったのです。
つまりあなたにはオサキ狐が憑いているのですわ」
「え!?」
今まで他人事のように聞いてた話が、
自分に何か得体のしれないものが憑いてると言われて
一気に現実味を帯びてきた。
「超重量級がのさばるSUMOU界で
バトルTOKYOとして大関を張る。
普通の女子では決して適わないことですわね」
バレてる…。
―――ってことは
パパもきっと知ってる…。
え~~!?
そしたら私きっとお見合いさせられて、
マッチョな元自衛官と無理やり結婚…………。
「結婚いや~~~っ!!」
人生の墓場につれて行かれるような
絶望感に駆られて取り乱す私に、
「落ち着くのです」
と太ももに手を乗せていってきたのは瑞葉さまだった。
小学生ぐらいにしか見えない瑞葉さまだけど、
その瞳をみてるとなんだか妙に落ち着いてくる…。
つづく
7月7日と7月14日はお休みします。




