「豪快! 両国夢想」第5話「黄昏の国」その7
「だったらその飯綱の珠の力で
戦えばよかったんじゃない?」
そう聞くと、融資おじいさまが、
「実際そうしたかったろうが、
飯綱の珠は女性との経験がまだない…
…つまり童貞にしか制御できない代物らしいのう」
と答えた。
ど…童貞にしか使えない珠って…。
そしたら<30歳過ぎて童貞だと魔法使いになれる>という都市伝説も
あながち根拠のないものじゃなかったってこと…?
「政元は、衆道…というか男色、
つまりホモで知られていた男だったのだが、
じつのところ両刀だったということは、
直系の庶子がいたことからもあきらかじゃ。
すでに童貞ではなく、飯綱の珠が使えないことを
敵対勢力に悟られないようにするために
政元がわざと流した情報だったらしいのう…」
(ホモだって宣伝してたの…?)
情報戦ってすごいなと感心してる私に、
「理屈はわからんが、
そういう理由で飯綱の珠は、
在住の体内にある状態が一番安定するようじゃ。
しばらくは在住の中に戻し、
この弾正府の中で生活してもらうことになる」
「ちょっと待って! それって軟禁ってこと?」
「言葉を選ばねばそうなるな」
「そんなっ! そしたら在住は、
一生閉じ込められることになちゃう」
「そうしたくはないでしょ?」
急に声をかけられて声のするほうを見ると、
同じ部屋の中で瑞葉ちゃんとボソボソと話してた音音ちゃんが
私の横に立っていた。
つづく




