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「豪快! 両国夢想」第1話「相続人を探し出せ」その2

趣味はナイショだけど、私の副業っていうのは、探偵業のこと。

カフェだけでも充分食べられるんだけど、

この江戸川ゲットー内での探偵業のギャランティは、

外の世界からの依頼だと相当な額になる。

アメリカ南部連合に併呑へいどんされ、

すっかり差別社会になってしまった日本。

国際通貨だったドルさえ暴落して信用を無くし、

使い勝手の悪い仮想通貨はあまり普及していない今、

値上がりしすぎた金に代わって

レアメタルのバラジウムが資産として貯める人が多い。

いつどんなことになるか分からないから、

私も探偵業で稼いだお金でバラジウムを買い貯めて、

いざというときに備えてるんだけど、

今、ちょっと服を作りたいんだよね♪

値段が500パラジウム(←円とか南$じゃ買えない輸入物)もする

オートクチュールの一点ものは贅沢かもしれないけど、

それだけの価値があるから仕方がない。

ここは労働あるのみだよね!


「――今回は、このご老人を捜し出すんだね?」

ゲットー内でも割と浮浪者の少ない錦糸町猿江恩賜おんし)公園の一角で、

仕事の仲介人ツブラヤと密談中の私。

無造作に停めたカブのシートに半分腰かけたツブラヤは、

いかにも配達途中にさぼってます的魚屋のオッサン然とした格好をしている。

実際本業は錦糸町駅前の魚屋“うる寅“の主人だけど、その人脈は相当なものらしく、

どこの国の依頼でも引き受けてくる。

「そうだ。藤谷氏は、先日死んだアメ連上院議員の縁続きだそうで、遺産相続権がある。

相続させたくない連中が日本総督府に圧力をかけて血なまこになって探させてる。

こちらの依頼主は、相続して欲しい側で、生きたままの奪還が条件だ。

期限は1週間後」

「! 早い~~! それで報酬は?」

推定人口450万人とも言われるゲットーで

たった一週間で探し出すなんて、

砂の中で1本の針を探すくらい難しい。

「カナダ帝室造幣局のパラジウム貨1000枚」

通常の依頼料の倍!?

この金額なら砂中のホッチキスの針だって見つけなきゃ、

江戸っ子の名がすたる。

でも、もう少し依頼料の吊り上げ交渉をしなくちゃと、

「経費は別。手付けに10枚」

挿絵(By みてみん)

と言うと、ツブラヤは返事の代わりに鞄から紙袋を取り出してそっと渡す。

中は見ずに確認する。

この重さ、まちがいなくパラジウム貨10枚♪

「じゃ、何かわかったら連絡するね」

ツブラヤは先端の尖った奇妙なヘルメットを付けると、

「他にも2組に同じ依頼をしてある。早いモノ勝ちだぜ」

と言って去っていった。

この仕事をこなせば、服が買える~!


その3につづく

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